サービスタイム
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
「あ、あの。もう一度だけ言っていただいてもいいですか? 私のことを大事にするって」
「ロザリアのことを一生大事にする」
「……っ!」
その瞬間、ロザリアの顔が茹でダコのように真っ赤になり――――
「ロザリア?」
「み、見ないでください……!」
俺の視線から逃れるように、ますます体を密着させてきた。
「脇の下に顔を突っ込まないでほしいんだけど」
「駄目です。今はちょっと、顔をお見せできないというか」
恥ずかしくて、俺と目を合わせられないらしい。
「それじゃあ、待っている間、体を触ってもいいか?」
「どうぞ」
「いいのかよ」
今のロザリアには、体を触られることよりも、顔を見られることの方が恥ずかしいようだ。
そういうことなら、遠慮する必要はない。
なにしろ、ロザリアは俺の婚約者で、しかも、本人の許可が出ているのだ。
今なら、何をしてもセクハラにはならない。
「うへへ」
「……その笑い方はちょっと」
俺はロザリアにドン引きされながら、髪や耳を触ったり、肩や背中や脇腹を撫でたりした。
胸と尻を触らなかったのは武士の情け――――ではなく、胸は触るまでもなく体に押し付けられているからであり、尻は腕枕のせいで体が固定されてしまい、単純に手が届かなかったからだ。
「……あの、覇王丸様。もう、よろしいですか?」
「いいぞ」
そうこうしているうちにロザリアが落ち着きを取り戻したため、サービスタイムは終わりを迎えてしまった。
「満足した」
「そ、そうですか」
なんだか子供みたいな感想ですね、と。
ロザリアは苦笑いを浮かべながら呟いたが、実際、そんなものだと思う。
「美味い飯を食べて、ふかふかのベッドがあって、ロザリアがすぐ横にいるんだぞ。こんなの三大欲求の完全制覇じゃないか」
「そうですか。三大欲求……というのは、よく分かりませんけど」
三大欲求とは、食欲(美味い飯)と、睡眠欲と、性欲のことだ。
俺に性欲の化身として扱われたことなど露ほども気づいていない様子で、ロザリアは心臓の音を確かめるように、俺の胸に手を乗せた。
(これ、ライカもたまに同じことをするんだよな……)
心臓の鼓動を確かめることに、何か特別な意味でもあるのだろうか?
そのことを尋ねると、
「特別な意味はありませんよ。……ただ、こうすると、安心するんです」
ロザリアは穏やかに微笑みながら答えた。
「……覇王丸様、先程の話の続きですけど」
「何だ?」
「覇王丸様に助けていただいて、私は本当に幸せなんです。だから、覇王丸様は私のことで、負い目を感じる必要はまったくありません。ライカちゃんとヒナちゃんも、きっと同じように考えているはずですよ」
間違いありません、と。
ロザリアは自信たっぷりに断言した。
「私はあの二人のように、覇王丸様の旅のお役に立つことはできませんから……。そのことは悔しいですけど、でも、覇王丸様がいつ帰ってきてもいいように、留守番をしています。夫の留守を預かるのは、妻の務めですから」
「それ、流行ってんの?」
「ふふ。ライカちゃんに教えてもらいました」
「あいつ……」
ヒナだけでは飽き足らず、いつの間にか俺の知らないところでロザリアにも正妻の心構えを説いていたらしい。
「先輩風を吹かせやがって……。まあ、別にいいんだけど」
俺が苦笑すると、つられるようにロザリアも笑った。
「抜け駆けをするつもりはありませんけど……。でも、こんなふうに二人きりになれた時は、甘えてもいいですよね?」
「いいぞ。ヒナがいなかったら、もっとエロいことをするつもりだったし」
「っ!」
また、ロザリアの顔が茹でダコのように赤くなった。
「それは、その……。その時がきたら……頑張るといいますか……」
「頑張る? 具体的には?」
「い、言えません……!」
どうしてそんな意地悪なことを言うんですか、と。
ロザリアは恨みがましい視線を向けてきたが、そんなの俺が意地悪だからに決まっている。
それっきり、ロザリアはへそを曲げてしまったらしく、俺に抱きつくように密着したまま、何を話し掛けても返事をしなくなってしまった。
俺もなんだかんだ疲れていたので、最後は腕枕をしている方の手でロザリアを抱きかかえるようにして、その日は眠りに付いた。
感心したのは、翌朝、俺が目を覚ました時、ロザリアはいつの間にか隣のベッドに戻っており、まるで仲の良い姉妹のようにヒナと寄り添って眠っていたことだ。
そんな感じで、久しぶりの里帰りは終わった。
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