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感謝と負い目

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

(初めて会った時は、手を握っただけで顔を真っ赤にしていたのになぁ……)


 単純に酔った勢いなのかもしれないが、あの頃と比べると、ロザリアもすっかり男(というか俺)に免疫ができてしまったらしい。


 まあ、無理もない話だ。神聖教会の自治領に行った時には、湯着を着用していたとはいえ、一緒に風呂まで入っているのだから。


 そう考えると、俺とロザリアの関係も、それなりに長い付き合いということになるのだろう。


 少なくとも、窮地のロザリアを救うための最も手っ取り早い方法が「結婚してしまうこと」だと気が付いた時、それを選択できてしまうくらいには。


「――――あのさ。ロザリアは、俺がライカやヒナとも結婚すること、嫌じゃないのか?」


 良い機会だったので、俺は前々から思っていた疑問をぶつけてみることにした。


「なぜですか?」


「いや。女目線で考えた時、俺の取った行動って、無茶苦茶なんじゃないかと思って」


 同時に三人の女性と婚約するなど、言い換えれば、公然と三股をかけているようなものだ。


 もし、俺が逆の立場だったら、寂しいのか、悲しいのか、腹立たしいのかさえ分からない、複雑な気持ちになるだろう。


 だから、俺はプロポーズを受け入れてくれた三人に対して、勿論、感謝はしているのだが、同時に負い目のようなものも感じていた。


「うーん。そうですね……」


 ロザリアは思案顔で数秒間、沈黙した後、


「正直に言ってしまうと、女性目線か男性目線かは関係無く、無茶苦茶だと思います」


 身も蓋も無いことを言ってのけた。


「それはそうなんだけど」


「ふふ。でも、私は気にしていませんよ」


 なぜなら「そういう環境」で育ったからだと、ロザリアは説明した。


 後継者が「いない」では済まされない王侯貴族にとって、当主が側室を迎え入れることは、珍しいことではないのだという。


「そういえば、ロザリアとリカルドも異母兄妹だったな」


「そうですね」


 自分の父親が複数の女性と結婚している(それが普通だった)のであれば、そういう環境で育ったロザリアは、本当に何も気にしていないのかもしれない。


 ただ、ロザリアが気にしていないことと、俺が気にかけないことは、イコールではない。


「ですから、私のことは気にかけていただかなくても、大丈夫です。覇王丸様の側室の末席に加えていただいて……私はそれだけで幸せですから」


「そういうことじゃないんだよ」


「いたっ」


 俺が空いている方の手でチョップをすると、ロザリアは驚いたように身をすくめた。


 俺が言いたいのは、我慢しろとか、そういう話ではない。


 こっちだって、その場の勢いで一生守ってやると約束したわけではないのだ。他人のことは異様に察しが良いくせに、自分のことはそうでもないらしい。


「この際だから言うけど、俺はこの先もずっとロザリアのことを大事にするからな」


「え?」


「ただ、同じくらいライカとヒナのことも大事にする。だから、もし、そのことでロザリアがモヤモヤした気持ちになるなら、それはゴメンってことだよ」


 要約すると、俺はお前を独占するけど、お前は俺を独占できないという宣言だ。


 どこのホストだよ、と。


 自分で自分にツッコミを入れたくなってしまう。


 もし、アホ兄弟がこんなことを言おうものなら、無言で腹パンをしているだろう。


「都合の良いことを言って、申し訳ないけど」


「い、いえ。それはいいのですけど……」


 俺がチョップで軽く叩いたところを擦りながら謝ると、ロザリアは珍しく動揺した様子で、俺を真っ直ぐに見つめてきた。

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