ウォートシエイラ訪問 十
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次回の更新は明日です。
「覇王丸様はライカちゃんと一緒に帰らなくてもよかったのですか? せっかく、久しぶりの故郷なのに」
はしゃぎ疲れて、すぐにベッドの上で動かなくなってしまったヒナに毛布を掛けてやりながら、ほんのりと頬を上気させたロザリアが尋ねてきた。
この宿泊施設には風呂が設置されているので、俺たちは既に風呂上がりだ。俺も、ヒナも、ロザリアも、今は備え付けの寝間着に着替えている。
ちなみに、寝間着には子供用、女性用、男性用、俺用(特注)の四つのサイズがあり、最初、ロザリアは女性用の寝間着を選んだのだが、胸が窮屈だというライカが聞いたら卒倒しそうな理由で、男性用の寝間着を着ている。
「あの家、ベッドが二つしかないんだよ」
「そうなのですか」
「それに、親子水入らずで話をさせてやりたいし」
ボルゾイは俺のことを家族同然に扱ってくれるし、それこそライカと結婚すれば正真正銘の家族になるのだが、それを差し引いても、俺がいるとできない話はあるだろう。
例えば、ライカの母親の話だ。
二人と共通の思い出を持たない俺の存在は、昔話に花を咲かせるには、少しばかり邪魔だと言わざるを得ない。
唯一、俺がいないことによる弊害があるとすれば、それはベッドの数が足りてしまうため、二人が一緒に寝るための大義名分が失われてしまうことだが――――
(ライカが素直に甘えればいいだけの話だし)
正直、そこまでは面倒を見切れないので、俺は放っておくことにした。
「俺は明るいうちに話をしたから、もういいんだ」
「ふふっ。覇王丸様は優しいのですね」
ロザリアは納得したように頷いて、ベッドの上で居住いを正した。
「ヒナちゃん、すっかり眠っちゃいましたね」
「昼間、同年代の子供と遊び回っていたからな。宴会の時も大はしゃぎだったし」
疲労困憊になったところに、温かい風呂と快適なベッドを用意されたら、ヒナではなくてもそうなるというものだ。
ちなみに、俺たちがいるこの部屋は二人部屋で、二つあるベッドの片方を俺が、もう片方をロザリアとヒナが使用している。
最初は家族用の大部屋に全員で泊まる予定だったのだが、ゲンジロウ爺さんがまた変な気を利かせて別室を希望したため、二人部屋を使用することになったのだ。
また、これはどうでもいい話だが、集落に自宅があるはずのハウンドも、今夜はこの施設に泊まっている。
なんでも、しばらく留守にしていたら、自宅がすっかり物置にされてしまっていたらしい。
全員が家族ぐるみだと、遠慮が無さすぎて、こういう珍事も起こるようだ。
それはともかく。
(気の利かせ方が、中途半端なんだよなあ……)
そこまでするのなら、ヒナを適当に言いくるめて、連れて行ってほしかった。
いつ目を覚ますか分からない十歳児がすぐ横にいる状況では、なかなか色っぽいことをする雰囲気にはならない。
――――などと思っていたら、
「ヒナちゃん、すっかり眠っちゃいましたね」
ロザリアが先程とまったく同じセリフを口にしながら、俺が寝転んでいる方のベッドにいそいそと移動してきた。
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