ウォートシエイラ訪問 九
1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
「どうかな? できそうか?」
「そうだねぇ。できると思うよ。急いだ方がいいんだよね?」
「なるべく」
俺が頷くと、おばちゃんは「引き受けたよ」と笑顔で請け負ってくれた。
「集落には髪の長い者が大勢いるから、頼めば髪を提供してくれる者もいるだろう。私から事情を説明しておくよ」
ボルゾイもさりげなく協力を申し出てくれる。
「ありがとう。お金はライカが管理しているから、後で持ってこさせるよ」
「お代なんか要らないよ。……ライカ嬢ちゃんが、財布を管理しているのかい?」
「そうだけど?」
おばちゃんの質問に俺が首を縦に振ると、その場にいた全員が何とも言えない表情で口元に笑みを浮かべた。
どうやら、新婚早々、俺がライカの尻に敷かれて、財布の紐を握られているのだと、全員が勘違いをしているらしい。
(そうじゃなくて、王城で暮らしていると、金を払う機会が無いだけなんだけど)
『あっても踏み倒しているだけでは?』
(後でお城に請求が行くようにしているからセーフ)
実際のところは、俺が財布を管理すると十中八九ドンブリ勘定をしてしまうので、ライカに財布を預けているだけだ。
そういう意味では、財布の紐を握られているというのも勘違いではない。
その後、完成までにかかる日数などの細かい話をしてから、俺は工房を後にした。
*
その日の夕方、開発途中の街の広場にウォートシエイラの住人がほぼ全員集まって、宴会が催された。
宴会の名目は、勇者ご一行の歓迎ということになっているが、実際のところは俺とライカの結婚祝いを兼ねているのだろう。
実際、ライカ、ヒナ、ロザリアの花嫁(予定)の周囲には、宴会が始まってから終わるまで常に人だかりができていた。
ライカは昔からの顔馴染に囲まれて、終始笑顔のまま。
ヒナも聖女として鍛えられた持ち前の舞台度胸を発揮して、やはり最後まで笑顔のまま。
三人の中で最もあたふたしていたのは、意外にもロザリアだった。
貴族の社交場では百戦錬磨(予想)のロザリアも、飲めや歌えやの宴会場に放り込まれるのは初めての経験だったのだろう。
周りにいるのが獣人ばかりというのも、ロザリアを戸惑わせる要因になっていたはずだ。
一応、護衛のゲンジロウ爺さんが付かず離れずの距離で見張っていたが、当然ながら集落の住人の中に、ロザリアに危害を加えようとする者がいるはずもない。
しばらくしてから、再びゲンジロウ爺さんに目をやると、すっかり警戒を解いた様子でちびりちびりと酒を口に運んでいた。
*
そんなこんなで楽しかった宴会が終わった後、ライカだけはボルゾイと一緒に集落の自宅に帰り、俺たちはフランツ一押しの来客用の宿泊施設に泊まることになった。
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