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ウォートシエイラ訪問 六

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 革職人のおばちゃんの工房に到着すると、建物の前に見覚えのある馬車が停まっていることに気が付いた。


「あれ? これって……」


 見間違えでなければ、荷台に繋がれているのは、俺がかつて魔王軍の支配下にあったオターネストから脱出する際に、かっぱらってきた軍用馬のハックとヤマダのはずだ。


「お前ら、なんでここにいるんだ?」


 ワタシとオレサマを移動手段として使うようになって以来、めっきり出番の減ってしまった二頭だが、だからと言って、大森林にいるのはおかしい。


(こいつら、南部地域に置きっぱなしにしてきたような……)


『金髪の皇太子が連れ帰ってくれた可能性もありますよ』


 記憶は曖昧だが、少なくとも、トレンタ大陸には連れて行っていないので、南部地域に置き去りにしたことは間違いないだろう。今の今まで忘れているとは、我ながら酷い飼い主だ。


「お前ら、もしかして、帰巣本能ってやつで帰ってきちゃったのか?」


「違うわ。南部軍の兵士が届けてくれたんだよ」


 独り言のつもりで馬に話しかけた俺の問いかけに、横から答える者がいた。


 工房の入口からのそりと姿を現した二人組は、熊の顔をした獣人のオルツと、熊みたいな顔をした人間のおっさんだった。


 おっさんは、俺がこっちの世界に転移して最初に出会った人間であり、転移のせいで瀕死の状態だった俺を獣人の集落に運んでくれた命の恩人だ。


 一方、オルツは神聖教会の自治領でちょっとした問題行動を起こし、国外退去処分になった熊の獣人だ。今は禊として、ウォートシエイラの開発を手伝っている。


「二人とも久しぶりだな」


「勇者殿も健勝そうで何よりだ」


「……お前、凄い活躍じゃないか。獣王は倒すわ、反乱は鎮圧するわ、その上、お嬢だけでは飽き足らず、王女様とも結婚するなんて……ぐぬぅ」


 さらりと社交辞令を返してくるオルツとは対照的に、おっさんは何故か恨みがましい視線を俺に向けてきた。


「断っておくけど、おっさんが独身なのは俺のせいじゃないからな」


「分かってるよ、そんなことは」


「あと、二人だけじゃなくて神聖協会の聖女とも結婚するぞ」


「なんだとぉ!」


 まだ、ヒナと面識のないおっさんは聖女という言葉に過剰に反応したが、ヒナが十歳児だと知っているオルツは微妙な表情を浮かべて俺を見ている。


「俺は別に幼女趣味じゃないぞ」


「いや、分かっている。うん、まあ……あの性格では、そうなるだろうな」


 自分も結婚すると言い出して聞かないだろう、と。


 オターネスト奪還作戦の時にヒナの護衛を務めたことのあるオルツは、まるでプロポーズの現場を目撃していたかのように、その時の状況を正確に言い当てた。

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