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ウォートシエイラ訪問 五

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

 ひととおり再会の挨拶を済ませると、晩飯までは自由行動になった。


 当初、日帰りの弾丸ツアーを計画していた里帰りではあるが、到着が午後になってしまったことと、来客用の宿泊施設が既に完成しているとフランツが猛アピールしてきたこともあり、一泊二日に予定を変更している。


 来賓であるロザリアとゲンジロウ爺さんは、フランツの案内で開発途中の街を見て回ることになり、同じく来賓(立場的にはむしろ国賓)であるヒナは、ライカに連れられて集落の子供たちと遊びに行ってしまった。


 ハウンドは空き家になっている自宅の様子を見てくるらしい。


 珍しく単独行動になった俺は、ボルゾイの案内で集落の革職人を訪ねることにした。


 着の身着のままでこっちの世界に飛ばされてしまった俺に、特注サイズの靴を作ってくれた職人のおばちゃんだ。あの靴は実に履き心地が良く、結局、履き潰してしまった。


「おばちゃん、元気にしてるか?」


「勿論だとも。彼女は新しく開発している街に工房を移して、精力的に活動しているよ」


 ボルゾイの話では、集落の若者から弟子を取り、後継者の育成にも努めているらしい。


「勇者御用達の革職人として宣伝すれば、街の外からも注文が殺到するんじゃないか?」


「うーん……。商売っ気の無い人だから、私からは何とも言えないな。弟子が育って、仕事が増えても手が回るようになったら、改めて考えればよいと思うよ」


 今は時期尚早ということらしい。


 街の入口は閑散としていたが、少し森の奥に進むと、前回の里帰りの時とは明らかに違う、発展途上の「街並み」が見えてきた。


 樹木を伐採して切り開かれた空き地を一本の道が縦断し、その道沿いに幾つもの建物が建ち並んでいる。


「職人の工房や、公共の施設を優先的に建てているらしい。そのあたりの判断はフランツ殿にお任せしているのだが、よく私のところに意見を聞きにくるんだ。おかげで、私も皆の意見を聞いて回らなければいけなくなってしまった」


 のんびり隠居生活を送ることもできないよ、と。


 ボルゾイは楽しそうに微笑んだ。大事な一人娘を連れ去ってしまった身としては、義理の父親が老け込むことなく、充実した日々を送れているようで何よりだ。


「しかし、君には驚かされてばかりだ。久しぶりに娘から手紙が届いたと思えば、その内容が結婚の報告なのだから」


「急で悪かったな」


「いや。責めているわけではないよ」


 俺が謝罪の言葉を口にすると、ボルゾイは笑って首を横に振った。


「何度も言っているが、私は君のことを認めているからね。むしろ、娘を選んでくれたことに感謝している」


「……それならいいけど」


 ただ、感謝されたらされたで、なんとなく居心地が悪い。


「ライカだけじゃなく、ヒナやロザリアとも結婚することについては怒っていないのか?」


「その点については、きちんと手紙の中で説明されていたよ。くれぐれも君のことを責めないようにと、念まで押されていた」


「マジか?」


「マジだとも」


 よくできた娘だろう? と。


 ボルゾイは自慢げにほくそ笑んだが、たしかに自慢したくなる気持ちも分かる。


(そして、その自慢の娘が、今や俺の嫁だという事実)


『許せませんね』


(なんで、お前はいつも対立する立場からコメントするんだよ?)


 他人の幸せを喜ぶことができないとは、実に悲しいことだ。山田は守護天使の何たるかを、一から学び直した方がいい。


「しかし、あれだね。一度に三人もの女性に求婚して、それで丸く収まってしまうのだから、君の甲斐性も相当なものだね。そんな人生を、私も送ってみたかったよ」


「それ、奥さんの墓の前でも同じことを言えるの?」


「言えないね」


 俺と山田の頭の中のやり取りなど(当然ではあるが)露ほども知らない様子で、ボルゾイは上機嫌に笑った。

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