ウォートシエイラ訪問 四
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次回の更新は明後日です。
午前中、ウォートランド侯爵のお膝元であるウォーサラームの街を訪れた後、俺たちは竜の背に乗って一気に大森林まで移動した。
街の入口では、今回も見知った顔ぶれが集まって、俺たちを出迎えてくれた。
まだ、街への移住希望者は現れないのだろうか?
相変わらず広々(悪く言えば閑散)とした街の玄関口にワタシとオレサマを着地させると、俺はロザリア、ヒナ、ライカの順番で、女性陣が竜の背中から降りる手伝いをした。
先に降りたゲンジロウ爺さんとハウンドがまったく手伝ってくれないのは、多分、三人とも俺の嫁なので、野暮なことはやめようと、変に気を遣ったのだろう。
そして、なぜ、三人の中でライカの順番が最後になったのかと言うと――――
「ライカ。お前、俺が手伝わなくても一人で降りられるよな?」
「…………降りられません」
「嘘つけ。さっき、ワタシの首のところから飛び降りようとしていたじゃないか」
「そんなことないです」
つまりは、こういうことだ。
身長の低いヒナと、運動神経のあまり良くないロザリアに、俺が手を貸したり、体を支えたり、あるいは抱きかかえたりするのを見て、羨ましくなったらしい。
その証拠に、一人では降りられないと嘯くライカの頭上の獣耳が、しおしおと力無く折り畳まれている。
これは、何か都合の悪いことや、後ろめたいことがある時の特徴だ。ライカの感情を読み取ることにかけては博士号レベルの俺を甘く見てはいけない。
そのことを指摘すると、ライカはとうとう開き直った。
「いいじゃないですか、少しくらい。私だって抱っことか……その、されてみたいです」
「最初からそう言えばいいのに」
「だって、それだと、まるで私が甘えているみたいじゃないですか」
「そのとおりだろ」
むしろ、甘えている以外の何だと言うのだろうか?
俺はライカの手を取ると、お望みどおりにお姫様抱っこをして、ワタシの背から降りた。
「えへへ……。ありがとうございます」
「どういたしまして」
俺は満足げに微笑むライカに頷き返すと、そのまま出迎えに来てくれた皆の場所まで歩いて移動を開始した。
「え? あの、覇王丸さん? もう、降ろしてください」
「ついでだから、このままボルゾイのところまで連れて行ってやるよ」
「父上の!?」
その瞬間、ライカの獣耳がピンと起き上がった。言うまでもないが、警戒モードに移行したようだ。
(まあ、俺に抱きかかえられている時点で、脱出することは不可能なわけだが)
『公開処刑とは……。鬼畜の所業』
(そこまでではないだろ)
俺と山田がくだらない会話をしている間にも、ライカは手足をばたつかせて、なんとかして俺から逃れようとする。
「や、やめてください! 恥ずかしいです!」
「もっとエロい感じで「恥ずかしい」って言ってくれたら降ろしてやってもいいぞ」
「絶対に嫌です!」
口で言っても聞き入れてもらえないと察したのか、つい先程まで飼い犬のように甘えていたライカは、今度は打って変わって闘犬のごとく物理的な抵抗を始めた。
闘犬とは言っても、せいぜい掌で視界を遮ったり、頬をつねったりする程度のかわいらしい抵抗ではあるのだが。
「よう、お前ら。今回は仲間も連れてきたぞ」
ライカに顔面を鷲掴みにされながら、俺が何事もないかのように再会の挨拶をすると、
「うむ……。おかえり……」
ライカの父親であるボルゾイは、戸惑いながらも、いつもと同じ冷静な口調で返答をし、
「相変わらずだな、君たちは! 昨日から考えていた挨拶とお祝いの言葉が、全部、吹き飛んでしまったよ!」
本来、こういった場面では最もウザい反応を返してくるフランツ(執政官)は、憮然とした表情で、俺にクレームを付けた。
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