ウォートシエイラ訪問 三
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「この案の良いところは、覇王丸がトレンタ大陸に渡ってしまって、王都からいなくなるのと同時に、ロザリアが自粛期間に入れることだね」
「鉄壁だな」
俺が王都にいる間は、俺がロザリアの前に立ちはだかり、俺の留守中は謹慎を理由に外部からの接触をすべてシャットダウンするというわけだ。
これならば、俺も後顧の憂いなく、安心して王都を離れることができる。
「でも、そうなると、あちこちの街に行かないといけないんじゃないか?」
お披露目と言っておきながら、西部地域のウォーサラームや東部地域のオーロフエンテなどの主要都市をスルーして、真っ先に大森林に向かうのはさすがに違和感がある。
「そこは調整しないといけないだろうね。お披露目というからには、竜に乗って街の上空を素通りして終わりというわけにはいかないし。事前に告知をして、警備体制を整えて――――そもそも、ロザリアは廃嫡されているから、お披露目に掛かる費用を国が負担してくれるのかという問題もある」
「山積みだな」
「でもまあ、それはそれだよ。そのへんの問題を解決するのは、ロザリアの敬愛するお父上とお兄様の仕事だから」
「じゃ、別にいいか」
丸投げしようぜ、と。
俺とジョアンは目を合わせて頷き合い、得意満面のドヤ顔でほくそ笑んだ。
一方、最後まで口を挟むことなく、事の成り行きを見守っていた面々はというと、
「やれやれ……。これはまた大騒ぎになりそうだの……」
「そうですね……」
ゲンジロウ爺さんとライカは困ったような、でも、どこか楽しそうな笑みを口元に浮かべ、
「どうしましょう……」
ロザリアは、自分の何気ない一言で話が大きくなってしまったと、おろおろし、
「……」(ぱくぱく)
昼間、俺から「獣人国に潜入するように」と宣告されたハウンドは、その程度のことで驚いていられるかと言わんばかりのやさぐれた表情で、黙々と食事をしていた。
*
結論から言うと、ジョアンの提案したお披露目作戦の効果は絶大だった。
国王が手始めに、中央と西部地域の各都市を治める執政官にこの話を打診したところ、ほぼすべての都市から、ロザリアに訪問してほしいという回答があったのだ。
だが、当然ながら、すべての都市を回ることはできないので、日程を詰めてもらった上で、俺たちは数回に分けて、各都市に表敬訪問することになった。
やり方は至ってシンプルだ。
馬車に揺られてのんびりと移動している暇は無いので、目的地のすぐ近くまでは、ワタシとオレサマの背に乗って一気に移動する。
目的地には祭典用の豪華な馬車が用意されているので、それに乗り換えてパレードよろしく観衆で埋め尽くされた都市の大通りを、執政官の屋敷までゆっくりと移動する。
執政官の屋敷に着いてからは、午前なら昼食を摂り、午後なら一泊してから、次の目的地に向かうか、あるいは王都に帰還する。
そんなカモフラージュの表敬訪問を何回か繰り返した後、俺たちはようやく本命の目的地であるウォートシエイラの街に里帰りすることができた。
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