第5話 木の机救出作戦と必殺技『風呂キャン』
「なんだって?! 別の教室棟に移動する?!」
二月下旬の月曜日の朝、1年B組の教室で、俺の悲痛な叫び声が響き渡った直後、担任の沢渡先生が黒板をピシャリと叩く音にかき消された。
「はい、静かに! 鈴木、朝っぱらから火事でも起きたみたいに大騒ぎしてどうしたの? 黙って私の学年末の予定を聞きなさい!」
沢渡先生は鼻筋の細いフレームの眼鏡を軽く押し上げ、職員室から持ってきたばかりのプリントを1年B組の四十人の生徒たちの前に掲げた。
「さっき鈴木がわめき散らした通り、この学年末テストの後、四月に二年生に進級する際、一年生全員が文系と理系にクラス分けされるわ。特に、春休みの間にこの一階の教室棟の暖房配管の大規模な改修工事が行われるから、新学期からは二年生の全クラスが東側の建物の三階にある教室に机と椅子を移動することになるわよ!」
1年B組の教室はたちまち騒然となった。前の席の親友、山本健二が興奮気味に俺の椅子の背もたれを叩いた。
「おい翔太! 東棟の三階に上がったら、女子体操部の練習場が丸見えだぜ! それに俺もお前も文系志望だから、二年生になっても絶対また同じクラスになるに決まってる! 風水的に最高じゃねーか!」
しかし今の俺には、健二の風水の話など聞いている余裕は全くなかった。
机の下で、俺の両手は、先週1年A組の彼女が書いた『緊急追伸!!』の文字があるページを開いたまま、茶色いノートをきつく握りしめていた。
額に冷や汗がにじみ始めた。
ノートには西校舎を改修するから移動しなければならないと書かれていたが——おそらく向こうの先生が発表した時に、彼女が東と西を聞き間違えたのだろう——残酷で紛れもない事実が一つある。あと一ヶ月ほどで、俺も彼女もこの一年生の教室から追い出されてしまうのだ!
俺は目の前の木の机を見下ろし、親指で無意識のうちに、机の表面の右下にある五芒星の深い傷跡をなぞった。
この一年近く、俺たち二人を繋いでいたのは、この窓際から四番目にある机の中だけだった。もし四月に新入生がここに座り、俺と彼女が別の建物の三階に分けられ、この教室で合同の選択授業を受けることもなくなったら……二人の「作戦総司令部」は完全に崩壊してしまう!
毎週月曜日の朝に、俺をナルシストなとんがり顎だと罵ってくれる人もいなくなる。美波から義理チョコをもらった愚痴を聞いてくれる人もいなくなる。そして、花火の夜に裸足で走り回るようなあの生意気な彼女が、二年生になってどう過ごしているのか、俺が知る術も永遠に失われてしまう。
毎週月曜日の朝、見知らぬ空っぽの机の中に手を入れる光景を想像しただけで、胸に巨石を乗せられたように息苦しくなった。
ダメだ! 絶対にそんなことをさせてたまるか!
予備の傘を隠す計画を思いついた男の脳内が、フル回転し始めた。
待てよ……。沢渡先生はさっき、一言一句こう言ったはずだ。『新学期からは二年生の全クラスが三階にある教室に机と椅子を移動することになるわよ』!
「机と椅子を移動する」?! つまり、新学期の初日に、俺たち生徒自身の手で机と椅子を倉庫や古い教室から新しい教室へと運ぶということか!
まばゆい稲妻が俺の脳裏を駆け抜けた。
そうだ! どうしてこの木の机を下級生に譲ってやらなきゃならないんだ?! 毎週月曜日の朝、ノートが俺の1年B組の机と彼女の1年A組の机の間で、一体どういう魔法で自動的に持ち主を変えているのかはまだ解明できていないが、その魔法が俺たちの所有する二つの木の机に結びついていることは間違いない! だったら、二人とも自分の机ごと二年生の新しい教室へ持っていけばいいだけの話じゃないか!
俺はすぐさまボールペンを引き抜き、沢渡先生が教壇で期末テストの予定を話しているのも構わず、机に突っ伏して次のページに緊急作戦計画を書き殴った。
『月曜日(緊急作戦計画):落ち着け、臆病な軍師殿! こっちの1年B組でも今朝、沢渡先生が、古い校舎の水道管工事のせいで三月いっぱいで三階に移動しなきゃならないって発表したところだ! でもパニックになる必要なんてない! 軍師長・鈴木翔太の天才的な計画をよく聞くんだ。この一年間、君はずっとノートが君の1年A組の机の中にあると言い張り、僕は僕の1年B組にある右下に星型の傷がある机の中にあると主張してきた。だから、絶対に連絡が途絶えないようにするために百パーセント確実な方法をとる。新学期の初日、学校が机と椅子を移動させる時に、【僕たち二人はそれぞれ自分が今使っている木の机ごと】こっそり新しい二年生の教室に運び込み、窓際から四番目の席に置くんだ! スケジュールの注意点:来週は君がノートを持つ番だけど、その次の週は学年末テストで、カンニング防止のために机の中を空っぽにしなきゃいけない。だから君はもう一週間ノートを家で保管してくれ! テストが終わったら、ノートを机の中に戻して僕に渡してほしい。僕が春休みの間ノートを預かり、始業式の日に新しい教室に運んだ机の中に入れておくから、君が新学期の最初の受け取り人になる! わかったか?! 絶対に自分の机を失くすなよ!』
最後の文字を書き終え、俺は安堵の長いため息をつき、隙のない完璧な計算をした自分自身に満足げに頷いた。
◇
四月初旬の新学期の始業式。
府中高校へと続く坂道の両側で、桜が再び真っ白に咲き誇り、薄紅色の花びらが暖かな春風に乗ってひらひらと舞い落ち、校門をくぐる高橋蒼の長い黒髪にふわりと舞い降りた。
今日から彼女は正式に二年生——文系の2年A組の生徒になった。
しかし、校庭での短い始業式が終わった直後、何百人もの二年生が自分が誰と同じクラスになったのかと掲示板に群がって騒いでいる中、古い校舎から新しい教室棟へと続く階段の隅で、二人の女子生徒が非常に怪しい行動に悪戦苦闘していた。
「ふぅ……ふぅ……ねえ蒼、マジで聞くけどさ……」
同じ文系を選び、今年も2年A組で蒼と同じクラスになった親友の由佳が、古い木の机の前脚の鉄パイプをきつく握りしめて息を切らしながら、机の後ろ側を抱えて階段を一段ずつ後ろ向きに上っていく蒼を振り返った。
「2年A組の新しい教室には、ペンキの匂いがする新品の机と椅子が四十セットも揃ってるのに、どうしてわざわざ1年A組の古い教室に忍び込んで、左隅に歪な星型の傷があるこのボロい木の机を、こんな上まで運ばなきゃいけないわけ?!」
「ご、ごめん由佳! あともう少しだけ頑張って、もうすぐ2年A組の廊下だから!」
蒼は力を込めて顔を真っ赤にし、小鼻に汗をにじませた。彼女は自分の机の左下にある、少し歪な四芒星の傷跡を見下ろした。三月に手紙で「右下にある星型の傷」と書かれているのを読んだ時、彼女は「あのおバカは一年間も座り続けて、机の右と左も間違えるのね!」と心の中で笑い飛ばしたものだった。
蒼は息を切らしながら、昨夜から用意していた言い訳を親友に返した。
「だって……2年A組の新しい机は高すぎて、字を書く時に肩が凝っちゃうんだもん! この古い机は一年生からずっと使ってて高さがぴったりだから、今年もこれと交換して使いたいの! これが終わったら、今日の午後は特大のチーズクリームタピオカミルクティーを奢るから!」
「特大のチーズクリームタピオカにシュークリームも追加してくれないと、真っ二つに折れそうな私の腰が許してくれないわよ!」
タピオカミルクティーの万能な力のおかげで、わずか五分後、各クラスが机を並べ替えたり委員を決めたりして騒然としている新学期初日の朝の混乱に紛れ、蒼と由佳は2年A組の窓際から四番目の席にあった新品の机を倉庫の机とすり替え、一年生の時の古い木の机をそこに一ミリの狂いもなく設置することに成功したのだ!
「ふぅ……大成功!」
蒼はドスッと椅子に座り込み、手をごく自然に机の下に滑り込ませて、見慣れた机の中のザラザラした木の表面をそっと撫でた。胸の中でバクバクと鳴っていた心臓が、ようやく落ち着きを取り戻した。
向こう側にいるあのバカな翔太が、自分の机とあの恐ろしい沢渡先生を相手にどうやって切り抜けたのかはわからないが、蒼自身は、期末テストの前に二人が合意した「緊急作戦計画」を見事に完遂した。あとは来週の月曜日の朝、茶色いノートが本当にこの教室移動の試練を乗り越え、彼女の机の中にたどり着くかどうかを待つだけだ!
「あれ、高橋さんも文系を選んで2年A組になったんだ? しかも俺の前の席だなんて、奇遇だね」
男らしく、低く、そして非常に礼儀正しい声が突然すぐ背後から響き、蒼はビクッとして振り向いた。
窓際から五番目の机——蒼の机のすぐ後ろ——の横に立っていたのは、銀縁眼鏡の奥に知的で爽やかな顔立ちをした背の高い男子だった。その腕には、配られたばかりの二年生の新しい教科書の束が抱えられている。
隼人だ。二月に蒼がチョコレートを贈った、あの美術部の彼だ!
「あ……おはよう、隼人くん!」
蒼は慌てて立ち上がってお辞儀をし、不意打ちに耳を少し熱くした。隣の席の由佳はすぐに口元を隠してクスクスと笑い、蒼に向かって何度もウインクをしてきた。まるで「ほらね、文系を選んだだけで、赤い糸が机の下まで引っ張られてきたじゃない!」とでも言っているかのようだった。
「二年生で同じクラスになれるとは思わなかったよ」隼人は優しく微笑み、蒼のすぐ後ろの席に椅子を引いて座った。「今年、美術部で週末に公園へ野外スケッチに行く計画があるんだ。もし高橋さんが興味あったら、今度一緒に描きに行かない?」
「えっと……うん、予定を確認してからまた返事するね!」
蒼は微笑んで頷き返し、黒板の方へと向き直った。
かつて気になっていた礼儀正しい彼がすぐ後ろの席に座るなんて、明らかに女子高生にとって夢のようなシチュエーションだ。しかし、その瞬間、蒼の頭に真っ先に浮かんだのはロマンチックなドキドキなどではなく、非常に奇妙な考えだった。
「どうしよう……もしあのバカな翔太に、美術部の男子が今年は同じクラスになった上に、私のすぐ後ろの席に座ってるなんて知られたら、来週絶対に三ページもびっしり説教じみた軍師の講釈を書いてくるに決まってるわ!」
そして案の定、その翌週の月曜日の朝——新しい階の窓の外の桜の花びらが若葉の緑に変わり始めた頃——蒼がドキドキしながら2年A組まで運び込んだ木の机の中に手を入れたその瞬間……。
コツン。
茶色いクラフト表紙のノートが、いつの間にかそこで待っていたのだ!
蒼はクラスの中で声を上げてしまいそうなくらい喜び、急いでノートを机から引き出して太ももの上に置き、最新のページを開いた。
そこには、とんがり顎の棒人間が学習机を担いで、定規を持った眼鏡のおばさんから逃げている絵の横に、見慣れすぎて嬉しさのあまり鼻の奥が少しツンとなるような文章が並んでいた。
『二年生最初の週の金曜日:やあ、軍師殿! もし月曜の朝に君が机を開けてこれを読んでいるなら、天才・鈴木翔太の「木の机救出作戦」が見事に成功したってことだ! 始業式の日、僕は親友の健二と一緒に、一階から東棟の三階までこっそり机を運んだんだ。途中で、今年もまた僕の2年B組の担任になった沢渡先生に見つかって、「学校の備品を勝手に移動させた」罪で一週間廊下掃除の罰当番を食らったけどね! でもまあ、二人の作戦総司令部を救うためなら、少しの自己犠牲くらい安いもんだ! 今年僕は2年B組だけど、君は何組になった? 新しいクラスの状況をすぐに軍師長に報告すること! 新学期おめでとう、同盟者!』
◇
「2年A組で同じクラス?! しかも彼女のすぐ後ろの席に座ってるだと?!」
さらにその翌週の月曜日の朝、東棟の三階にある2年B組の教室で、俺は茶色いノートに書かれた2年A組の彼女の新学期の状況報告を見つめながら、飲んでいるイチゴミルクが突然お酢のように酸っぱくなったように感じていた。
なんだこれ?!
一年生の終わりに、彼女自身の口で堂々と『私の彼氏探し作戦は、とりあえずここで中止にする!』って宣言したじゃないか?! それなのに、二年生になってわずか二週間、文系を選んだってだけで、神様はあの美術部の四ツ目野郎の隼人を2年A組にぶち込んだ上に、彼女のすぐ後ろの席に座らせて、週末に野外スケッチに行こうなんて誘わせるなんて!
おまけに、ページの最後で彼女は俺をからかうように、半分冗談めかした口調でこう書いていた。
『……二月には作戦中止って言ったけど、突然今年から彼がすぐ後ろの席になって、毎日消しゴムを借りてきたり美術部に誘ってきたりするから、由佳が狂ったように背中を押してくるの。軍師翔太はどう思う? 試しに一回くらい野外スケッチに行ってみようかな? そっちの2年B組はどう? 美波ちゃんとはまた同じクラスになれた?』
俺は口の中のプラスチックのストローがぺしゃんこになるまでギリギリと歯を食い縛った。
「おい翔太、昼飯の代わりにストロー食ってんのか?」
前の机にまたがって座り、指の上でバスケットボールを回していた山本健二が、教室の反対側の隅へ顎をしゃくった。「まさに運命の巡り合わせだな! 二年生のクラス替えで、俺もお前も、沢渡先生も、それに美波もみんな文系を選んで、また2年B組に集結するなんてな! それなのに、さっきから美波に一言も話しかけに行かないで、茶色いノートに顔を突っ込んで祈祷師みたいにブツブツ言ってどうしたんだよ?」
俺は健二が指差す方向へ目を向けた。
2年B組の教室の反対側の列——今年は沢渡先生がくじ引きで席を決めたため、美波は俺の隣ではなく、教室の中央の列に座っていた——彼女は華道部の女子たちと楽しそうにおしゃべりをしていた。春の陽射しを浴びた美波の笑顔は、一年前と変わらず優しくて可愛らしかった。
しかしどういうわけか、今この瞬間、俺の頭の中の最大の関心事は、どうやって美波に話しかけるかではなく、2年A組にいるおバカな軍師が、後ろの席の四ツ目野郎の「野外スケッチ」という誘惑に騙されないようにどうやって阻止するかということだったのだ!
そうだ! 俺は彼女の軍師長じゃないか! もし公園にスケッチに行って、彼女がまた靴を脱いで走り回って去年の花火大会みたいに迷子になったら、誰が探し出せるっていうんだ?!
自分を納得させるために非常に合理的で義侠心にあふれた理由をでっち上げ、俺は即座に手を振って健二をどっかへ追いやると、ペンを握ってノートに深刻な警告の手紙を書いた。
『月曜日:おい、2年A組の軍師殿! 男性心理に精通した専門家として警告させてもらうぞ。新学期早々、消しゴムを借りたり人気のない公園での野外スケッチに誘ったりするような男子は極めて危険だ! 二月に君自身が僕に愚痴ってたのを忘れたのか? あいつと少し立ち話しただけで、いい子を演じるのに疲れて息切れしたって! 今度日曜日の午後にまるまる一緒にスケッチなんて行ったら、君は公園の石膏像になっちまうぞ! 僕の言う通りにして、家の手伝いが忙しいって上手く断るんだ! 僕の方? 同じ文系を選んだおかげで、今年は美波とまた2年B組で同じクラスだ! 同じ机じゃなくなったけど、地理的な距離なんてこの鈴木翔太の魅力の前では無に等しいね。今度の中間テストの数学で、難しい公式を彼女に教えてもらうつもりだ。僕の勝利の報告を聞く心の準備をしておけよ!』
こうして、俺たちの府中高校での二度目の春は、熱意に満ちていると同時にどこかチグハグな「妨害アドバイス」の応酬の中で過ぎていった。
茶色いノートは今や、その厚さの半分以上を使い切っていた。学年初めの無謀な机移動作戦のおかげで、2年A組と2年B組の間で毎週月曜日の朝にノートを交換する習慣は、振り子時計のようきっちりとリズムを刻み続けていた。
机の向こう側の彼女は、俺の「脅し」を聞いた後、本当に家の用事を口実に隼人との野外スケッチを断ってくれた(おかげで俺はノートを読んだ後、午後のバスケの練習中ずっとこっそり上機嫌で口笛を吹いていた!)。一方の俺の「美波に数学を教えてもらう」計画も、健二とクラスの仲間たちが勝手に便乗してきたせいで、あっという間に五人のグループ学習にすり替わり、俺の単独抜け駆け作戦はまたしても足踏み状態に終わった。
そして、五月の暖かな風が、六月初旬の息苦しいような蒸し暑さに徐々に取って代わられた頃——全校生徒が再び二年目の夏の半袖の白いシャツに着替える時期がやってきた。
◇
六月上旬の金曜日の午後、2年A組の教室にて。
季節の変わり目の初夏の長雨が始まり、教室の空気はサウナのように重く湿っていた。
高橋蒼は見慣れた木の机に突っ伏し、一週間まるまる体力を搾り取られ、指一本動かす気力も残っていなかった。
二年生になり、文系科目の宿題の量が倍増しただけでなく、彼女は担任の先生からクラスの文化委員と掲示板係を押し付けられていた。しかも……隼人と一緒に。昨日は、雨が降る前の蒸し暑い日差しの下で体育の持久走を二時間もやらされた後、放課後は学校に残って隼人と友人たちと一緒に六月の掲示板をすべて描き直し、夜に帰宅してからは夜中の一時近くまで世界史のプリントを終わらせなければならなかったのだ。
まぶたが重く垂れ下がるほど疲れ果てていた蒼は、金曜日の午後にカバンを片付けて帰る前、茶色いノートを開き、来週ノートを受け取る翔太に向けて短い愚痴の日記を最後に書き殴った。
『金曜日:今週は二年生になって本当に悪夢みたいだった。昨日は蒸し暑い日差しの中で体育の持久走をして、午後は残ってクラスの掲示板を描いてクタクタになって、夜は遅くまで世界史のプリント。ベッドに戻った時は指一本動かせないくらいバタンキューで、昨日の夜はついに一回「風呂キャン」しちゃった。今朝は五時にアラームをかけて朝シャンしたせいで、危うく電車の中で寝過ごすところだったわ。来週あんたがノートを持つ時は、ちゃんと読みやすい字で書きなさいよ。私の目はもう限界だから。おやすみ、また来週ね。』
蒼はノートを閉じ、机の中央へとそっと押し込んだ。
今年の若者のSNSで爆発的に流行している「風呂キャン」という言葉を見慣れていた女子高生の蒼にとっては、ただのごく普通の愚痴としてその二文字を書いただけだった。
彼女は全く予想だにしていなかった。翌週の月曜日の朝、無害に思えたその文字が、2年B組の教室で今年度最大の凄まじい妄想の爆発を引き起こすことになろうとは。
◇
「風呂……キャン?!」
六月上旬の月曜日の朝、2年B組の教室で、俺は茶色いノートを目の高さに持ち上げ、太陽の光に透かして斜めにしてみた——そうすれば二つの文字の意味が勝手に変わるかのように——そして、綺麗に書かれたその文字を一つ一つの音に分解してブツブツとつぶやいた。
『ベッドに戻った時は指一本動かせないくらいバタンキューで、昨日の夜はついに一回「風呂キャン」しちゃった』
一体「風呂キャン」って何なんだ?!
俺はバッと顔を上げ、深刻な表情で両眉をギュッとひそめた。一年生の時、あの「片想いハート」が実は親指を立てる写真のポーズだったという件で、俺はこの女に痛い目に遭わされている。今回はその血のにじむような教訓を生かし、そう簡単に罠にはまったりしないと固く心に誓った!
科学的に分析してみよう。最初の「風呂」は百パーセント「お風呂」の意味だ。じゃあ、後ろの「キャン」は何の略だ?
俺のような高校二年生の男子の語彙力において、「キャン」が含まれる言葉といえば、「キャンペーン」、「キャンプ」、あるいは「キャンディ」くらいしかない!
念のため、沢渡先生が朝のホームルームに来る前の隙を突いて、俺は後ろを振り返り、焼き肉パンをかじっている山本健二の机をバンと叩いた。
「おい健二! お前の知能テストをしてやる……『風呂キャン』って何だか知ってるか?」
健二はパンを噛むのをやめ、死んだ魚の目で俺を見上げて三秒考えた後、こう断言した。
「はあ? 『風呂キャン』? 楽勝だろ! 風呂に浸かりながらキャンディでも舐めて、甘い人生を満喫するってことだろ! それか……風呂場にテントを張ってキャンプするとか!」
「風呂場でキャンプが聞いて呆れるわ! どこの風呂場にテント張るスペースがあるってんだよ?!」
俺はあいつの二番目のアホなアイデアを即座に却下したが、健二がポロっと口走った最初のフレーズが、俺の脳内にまばゆい光を閃かせた。
待てよ……「風呂」+「キャンディ」?!
そうだ! どうして今まで思いつかなかったんだ?!
それは間違いなく、女子高生向けに最近発売された、高級なキャンディの香りの入浴剤の略称だ! 俺たちのような固形石鹸でしか体を洗わない無骨な男子は聞いたこともないようなやつだ!
彼女の書いた文章の原文を読み返してみろ。『炎天下で持久走して、午後は掲示板描いてクタクタになって、夜は一回風呂キャンしちゃった。今朝は五時に起きて朝シャンして……』
なんてこった、すべてのピースが一つの傷もなく完璧に噛み合ったぞ!
つまり、その日は体が疲れ果てていたから、夜家に帰ってから誘惑に勝てず、自分へのご褒美として高価なキャンディの香りの発泡入浴剤(高価だから特別な日用で、使ってしまったことをもったいなく思って『一回風呂キャンしちゃった』と言ったのだ)でリラックスタイムを楽しんだのだ! そして翌朝五時に起きて髪を洗い直さなければならなかった理由は、その入浴剤の甘い香りが強烈すぎて、あまったるいイチゴキャンディの匂いをプンプンさせて電車に乗り学校に行ったら、生活指導の先生に怒られると心配したからだ!
なんて筋が通っているんだ! 名探偵・鈴木翔太による、満点の論理的推論だ!
考えれば考えるほど、自分の鋭さに感心した。俺をとんがり顎と罵る生意気な外見の裏で、2年A組の俺の軍師殿は、こんなにも女の子らしくて甘い生活を楽しむ趣味を持っていたとは。甘いキャンディの香りの泡に包まれたお湯に浸かる女の子の姿が、突然頭に浮かんだ……。
「ゴホン、ゴホン!!」
俺は慌てて二回咳払いをし、熱くなった両頬をパンパンと叩いて、今頭に浮かんだ不純なイメージを頭から追い出した。
自分が「片想いハート」の時のように時代遅れの一年生のガキではなく、洗練されていて女心を完全に理解している二年生の男になったことを証明するため、俺はすぐにボールペンを取り出し、次のページの冒頭に自信満々にコメントを書き殴った。
『月曜日:おやまあ、持久走と掲示板作りでそんなに疲れて、夜に必殺技の「風呂キャン」を使っちゃったのかい? 普段は生意気な軍師殿が、そんな優雅で甘い趣味を持っていたとは驚きだね! 「風呂キャン」って名前を聞いただけで、ページからいい匂いが漂ってきそうだよ! そんなにリフレッシュできるものなの? 力尽きるまで使うのを我慢してたみたいだけど。最近バスケ部の練習の帰りに僕も肩が凝って仕方ないから、今度君の真似をして「風呂キャン」を一発キメて、どれくらい気持ちいいか試してみようかな! もし家にいい匂いの「風呂キャン」が余ってたら、来週このノートに少し挟んでおいてよ、持って帰って試してみるからさ! クックック!』
書き終えると、俺は得意げに、キャンディが周りを飛んでいるお風呂に浸かっているとんがり顎の棒人間の絵を描き足した。来週これを読んだ彼女は、俺の気配りに感嘆するに違いないと確信しながら。
そしてさらに二週間が過ぎた。
六月上旬の雨が上がり、初夏の青空と三階の窓辺でさえずる雀の声に取って代わられた月曜日の朝。俺がノートを受け取る番になり、茶色いノートは星型の傷がある机の中に綺麗に収まっていた。
俺はワクワクしながらノートを引き出し、机の下で開いた。
しかし、目に飛び込んできたのは、俺が期待していたようなキャンディの香りの入浴剤が挟まっている光景ではなく……その後の三ページにまで跡が残るほど強い筆圧で書かれた、黒インクの文字がびっしりと埋め尽くされたページだった。火山が噴火したかのように殺気が立ち上っていた。
『鈴木翔太!! あんた文字読めるの?! 二年生になったのに、どうしてあんたの妄想癖は去年と全く同じくらい狂ってるわけ?! 何が「優雅で甘い趣味」よ?! 何が「名前を聞いただけでいい匂いが漂ってきそう」よ?! おまけに「ノートに少し挟んでおいて、持って帰って試してみる」ですって?! よく目を見開いて読みなさいよ、この原始人! 「風呂キャン」っていうのは「風呂キャンセル」の略——キャンは「キャンセル」のキャンよ!! 「風呂キャン」っていうのは、【お風呂をキャンセルする】(疲れすぎてお風呂に入るのが面倒くさくなって、そのまま寝落ちして翌朝に朝シャンする)ことなのよ、この神経衰弱野郎!! あんた、キャンのことを「キャンディ」か何か新しい香りの入浴剤の名前だとでも思って、少しノートに挟んでおいてなんて頼んだわけ?! 私のお風呂に入ってない汗臭さを、どうやってこのノートに包んで渡せっていうのよ?! ああもう、信じられない!! 去年は人の写真のポーズを失恋扱いしたかと思えば、今年は私が疲れすぎてお風呂をサボったって略語で一回愚痴っただけで、私を不潔な自慢しいたがりの女子に仕立て上げて、おまけに「一発キメてみる」なんて言うなんて! 恥ずかしすぎて、机の星型の傷に頭をぶつけて死にたい気分よ!! いいこと、とんがり顎! 今後二度と、絶対にこの「風呂キャン」の二文字を口にすることを固く禁じます、わかったわね?!!』
口を塞ぐ前に俺の喉から「ブッ」という音が漏れ、そのまま笑い声が弾け飛んだ。
2年B組の窓際から四番目の机から、大砲のような笑い声が響き渡った。それはちょうど、担任の沢渡先生が出席を取るために教室のドアに足を踏み入れた瞬間のことだった!
2年B組の教室にいる八十個以上の目——健二、美波、そして沢渡先生を含め——が一斉に俺の方を振り返り、じっと見つめた。
俺は慌てて両手で口を強く塞ぎ、木の机の表面すれすれまで顔を伏せたが、両肩は発作のように震え続け、どうしてもブレーキをかけることができなかった。笑いを堪えるあまり、涙と鼻水が溢れ出して頬を濡らした。
なんてこった……助けてくれ!! お腹が痛くて死にそうだ!!
「キャン」は健二が適当に言った「キャンディ」ではなく、テレビゲームのキャンセルボタンみたいな「キャンセル」のことだったのか?!
フランスの高級香水の名前みたいにオシャレで美しい響きの「風呂キャン」なんて略語を、ただの……風呂にも入らず寝落ちした不潔な状態を言うためだけに生み出す女子がこの世にいるなんて、誰が予想できる?! おまけに俺は、彼女のその風呂サボりを「いい匂いが漂ってきそう」と褒めちぎり、無邪気に「少しノートに挟んで」なんておねだりする長文を半ページも書いたのだ!
普段は友達の前で常に清楚で綺麗なイメージを保っている2年A組の軍師殿が、ノートを開いて俺の無邪気な「風呂キャンのおねだり」を読み、顔を真っ赤にして歯を食いしばり、机に頭をぶつけたくなるほど声なき絶叫を上げている姿を想像するだけで、腹筋が攣るほど笑いが止まらなかった!
「鈴木翔太」
机のすぐそばから、殺気に満ちた沢渡先生の冷ややかな声が響いた。先生は笑いをこらえて真っ赤になった俺の顔を見て、それから俺が肘で覆い隠している茶色いノートを見下ろした。
「週明けの月曜日の朝から、一体何がそんなにおかしくて大豊作みたいに笑ってるの? 立ちなさい。今すぐ黒板に出てもう一度古文の二十四ページの問題を解いてきなさい!」
「は、はい!!」
俺は目尻の涙を拭いながら慌てて立ち上がり、健二やクラスメイトたちのクスクス笑いの中、教壇へと歩いていった。
白いチョークを手に持って黒板の前に立ち、三階の窓から初夏のまばゆい陽光に満ちた校庭を眺めた時、俺の口角は思わず温かい笑顔の形にカーブしていた。
黒板の古文の問題がどれほど難解でも、美波との恋愛がまだどこにも辿り着いていなくても、そして2年A組の彼女のそばに同じクラスの眼鏡をかけた手強いヤツがいようとも……星型の傷跡があるあの木の机がそこにあり、茶色いノートが毎週月曜日の朝に奇跡の旅を続けてくれる限り、俺の十七歳にはもう恐れるものなど何もないような気がした。
お読みいただき、ありがとうございます!
次話は明日19時20分に更新します。




