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第12話 第二ボタン、C棟東側ロビー、そして最後のページの十年の隔たり

三月初旬の卒業式の日の早朝、府中高校の上空は季節の変わり目特有の深い青色に澄み渡っていた。 優しい春風が正門前の河津桜——毎年卒業の時期に咲くため、うちの生徒たちが冗談で「卒業花」と呼んでいる濃いピンク色の早咲きの桜——を吹き抜け、咲き始めたばかりの薄紅色の花びらを朝の光の中で微かに揺らしていた。

俺——鈴木翔太——は自分の寝室の大きな鏡の前に立ち、伝統的な黒い立ち襟の学ランの金ボタンを一つ一つ丁寧に留めていた。

高校三年間で、この冬服をここまで真面目に、そしてきっちりと着こなしたことは一度もなかった。 俺の右手の人差し指は、襟から数えて二番目の金ボタンで止まった。 最も心臓に近い場所にあるそのボタンは、日本の学生の伝統によれば、卒業式の日に男子が最も愛する女の子に贈るためのものだ。

俺は鏡に向かって軽く微笑み、胸ポケット——彼女が水彩で描いたメロンソーダと半分のハートのラミネート加工されたしおりをしまっている場所——をポンと軽く叩き、茶色いクラフト表紙のノートが入った革のカバンを持って一階へと降りた。

花に囲まれ、別れの歌を奏でるピアノの音が響き渡る体育館での厳かな卒業式。 校長先生が3年A組と3年B組の生徒の名前を一人ずつ呼び、丸い筒に入った卒業証書を受け取るために壇上に上がる時、俺の心臓はずっとバクバクと鳴り続けていた。

講堂の通路を挟んだ反対側、俺たち3年B組の列からわずか数メートルのところに、3年A組の四十人の生徒たちが、男子は黒の立ち襟の学ラン、女子は伝統的な濃紺のセーラー服を着て整然と座っていた。

3年A組の担任がマイクの前に立ち、クラスの四十人の名前を読み上げ始めた時、俺は「あおい」という名前が講堂に響くのを捕まえようと、一音一音に息を殺して耳を傾けていた。

しかし……3年A組の四十人の名前が最初から最後まで読み上げられたのに、「あおい」という名前の女子生徒は一人もいなかったのだ!

俺は椅子の上で一瞬固まり、眉をひそめた。

「あれ……? なんで今読み終わった3年A組のリストに、あおって名前がないんだ?! もしかして、さっき拍手の音がうるさくて聞き逃したのか? それとも、ノートの最後のページに彼女が書いた『あおい』ってのは、名字をもじったものとか、家でのニックネームなのか?!」

それ以上深く考える暇もなく、教壇から沢渡先生の「鈴木翔太!」という呼び出しの声が響いた。 俺は慌てて立ち上がり、大きく深呼吸をして、親友の山本健二と3年B組のクラス全員の盛大な拍手の中、卒業証書を受け取るために壇上へと上がった。

体育館での式典と、3年B組の教室での涙のお別れ会が午後十二時半に終わった後、三年生の生徒たちは家族や部活の後輩たちと記念写真を撮るために校庭へと降り始めた。

廊下では、二年生のマネージャーのあかりちゃんが美しい花束を抱えて健二を待っており、バスケ部の後輩たちが俺を取り囲んで賑やかに笑い声を上げていた。 さらには、隣のクラスの女子二人が恥ずかしそうに近づいてきて、俺の学ランの胸にある第二ボタンを記念に欲しいと頼んできたが、俺はすぐに両手で胸をきつく覆い隠し、満面の笑みで首を振った。

「ごめんね二人とも! この第二ボタンは、三年前にすでに予約済みの持ち主がいるんだ!」

「おっ! いよいよお前の歴史的瞬間の到来だな、翔太?!」

健二はあかりちゃんから花束を受け取りながら俺の肩を小突き、三年間で一番の親友としての最高の笑顔を見せた。「早く行けよ! 午後一時ちょうどにC棟の東側ロビーだろ? 今回はそこに柱みたいに微動だにせず立ってて、お前の軍師殿を俺たちのところに紹介しに連れてこいよ!」

「待ってろよ!」

俺は親友に手を振って別れを告げ、朝から用意していたキンキンに冷えたメロンソーダ十缶が入った保冷バッグと茶色いノートを手に持ち、C棟に向かって期待に胸を膨らませて階段を一気に駆け下りた!

◇

そして、河津桜が咲き誇る三月初旬の卒業式の日の昼。

3年A組の教室では、高橋蒼も感動的な卒業証書授与式を終え、親友の由佳と隼人を抱きしめて祝福し合っていた。

今日、学校のピンバッジが襟についたシワ一つない濃紺のブレザーと、白いブラウスの首元にきちんと結ばれたリボンタイという、最も正装の卒業式の制服に身を包んだ蒼は、春の光の中で咲き始めたばかりの花のように優しく、そして清らかに見えた。 綺麗に梳かされた長い黒髪には小さな星型のヘアピンが留められ、ブレザーの左胸のポケットには、去年の夏に翔太がプレゼントしてくれた、桜の刺繍が入った水色の錦織りのお守りが大切にしまわれていた。

「12時50分よ、蒼!」

由佳はスマホの時計を見ると、蒼の両肩を掴んで教室のドアの方へ軽く背中を押し、親友の目はワクワクした喜びに輝いていた。「早くC棟の東側の階段のロビーに行きなさいよ! 今日はあいつに東側のロビーから絶対に動かないようにって厳しく念を押したんだから、きっと今頃、あんたの背番号7の選手は茶色いノートを抱えて下で待ってるはずよ! 彼を校庭に連れて戻ってきて、一緒に記念写真を撮るのを忘れないでね!」

「うん! ありがとう由佳、行ってくるね!」

蒼は微笑んで頷き、胸の奥で心臓が春祭りの太鼓のように激しく高鳴っていた。

さっきの体育館で、3年B組の担任が壇上に上がる生徒の名前を読み上げた時、3年B組に「鈴木」と聞こえる同じ名字の男子生徒がいたのだが、遠くから壇上を見た蒼には、その男子が分厚い近視眼鏡をかけ、背が低くてずんぐりしており、彼女が思い描いていた高身長でとんがり顎のバスケ部員の背番号7の姿とは全く異なっていたため、蒼は後ろの列にいる別の人を見間違えたのだろうと少し戸惑っただけだった。

そのすべての疑問は、あと数分で、C棟の東側の階段のロビーで解き明かされるのだ!

蒼は三月の甘い空気を大きく深呼吸し、まばゆい昼下がりの陽光が降り注ぐ渡り廊下を足早に歩き、C棟の建物へと向かった。

12時55分。

C棟の一階の東側の階段のロビー——クスノキの並木と土のグラウンドを真っ直ぐに見渡せる大きな窓がある場所——で、俺は五分前から自販機のすぐ前に立っていた。

俺は足元にメロンソーダ十缶が入ったバッグを置き、右手には最も明確な目印として、四隅が擦り切れた茶色いクラフト表紙のノートと半分のハートのしおりを胸の前に高く掲げた。

13時ちょうど。

C棟の壁掛け時計の長針が12の数字に触れたまさにその時、高橋蒼も廊下の角を曲がり、C棟の一階東側の階段のロビーに入り、自販機の前で立ち止まった!

春の風が階段横の少し開いた窓から吹き込み、薄紅色の桜の花びらを数枚、タイル張りのロビーの中まで舞い込ませた。

俺は東側のロビーの自販機の前に背筋を伸ばして立ち、目の前の廊下の入り口をじっと見つめていた。

そして蒼もまた、東側のロビーの自販機のすぐ前に立ち、ブレザーの裾を両手できつく握りしめながら、陽光に満ちたロビーの空間をドキドキしながら見回していた。

一分が過ぎた。

五分が過ぎた。

そして十五分が過ぎた。

俺の目の前も——そして蒼の目の前も——C棟の東側の階段のロビーは依然として完全に空っぽで、人のいない絵画のように静まり返っていた!

俺の唇の輝くような笑顔が、徐々にこわばり始めた。

「どうして……どうしてだ?」

俺は小さく呟き、胸の前に掲げていた茶色いノートを持つ手が少し下がった。

午後1時30分。

遠くのメイングラウンドの方から、保護者や各クラスの生徒たちが卒業の祝いのために次々と校門を出て行くにつれ、別れを惜しむ写真撮影の喧騒が薄れ始めていた。

しかし、C棟の一階東側の階段のロビーで、俺は依然として石像のように自販機の前に釘付けになっていた。

今回は、一ミリたりともこの場所から一歩も離れなかった!

二年生の夏の午後のように二階に走ったり、西側の棟に回り込んだりもしなかった。なぜなら、先週の最後から二番目のページの手紙で、蒼自身が強調するように大文字で書いていたからだ。『二人とも【C棟の東側の階段のロビー】に固定で立って、絶対に誰も一歩も動かないこと!』

俺は正確にC棟の東側の階段のロビーに立っている——彼女が書いた一字一句の通り、グラウンドを見渡せるクスノキの並木がある場所だ!

それならなぜ……なぜ一時半になり、二時になり、三時になっても、俺の目の前には空っぽの階段と、次第に淡い黄色に変わっていく午後の日差ししかないんだ?!

そして反対側で、高橋蒼もC棟の東側ロビーの自販機の横の冷たい壁に背中を預けて立ち尽くし、制服の長い靴下を履いた足は、二時間以上も動かずにいたため感覚がなくなっていた。

蒼の呼吸は荒くなり、目に見えない手が彼女の心臓を締め付けているかのように胸が苦しくなった。

そんなはずはない!

二年生の夏、二人がC棟で会えなかった時、手紙で方角を明記していなかったために、一人は西側のロビーに立ち、もう一人はU字型の建物の東側のロビーに立ち、同心円上を追いかけっこしてすれ違ってしまったという仮説を自ら推理したのは彼女自身だ!

あの時、その説明はあまりにも論理的で完璧で、彼女も、由佳も、そして翔太も少しの疑いもなく完全に信じ込んでいた!

しかし今日——高校生活最後の卒業式の日——二人は明確にC棟の一階の東側の階段のロビーを指定し、彼女は12時55分から午後三時まで、一歩も動かずにこの東側のロビーに留まっていたのだ!

翔太は絶対に約束を破るような人ではない——彼女のブレザーのポケットの中で温かくなっている水色の錦織りのお守りが、彼の真剣な思いの紛れもない証拠なのだ! きっと今この瞬間、彼もまた自分の誓い通りに「C棟の東側の階段のロビー」に立っているはずだ!

でも、もし彼女と翔太が本当に卒業式の今日の午後に同じC棟の東側の階段のロビーでじっと立っているのだとしたら……なぜ彼女は彼の姿を見つけることができないの?!

背筋から首筋にかけて冷たい悪寒が走り、蒼の両手は夕日の中でブルブルと震えた。

「U字型の建物ですれ違ったっていう去年の仮説……完全に間違ってたんだわ! 去年の夏のC棟の午後からずっと、私たちが東西のロビーでずれていたとか、背中を追いかけて走っていたわけじゃなくて……最初から、私と翔太の間には、普通の法則から完全に外れた何かが存在していたのよ!!」

午後四時。

府中高校の校庭に落ちる最後の陽射しが薄れ始め、卒業生全員が帰宅して校内が深い静寂に包まれる中、俺はC棟の東側ロビーの自販機の前に一人立ち、足元にあるメロンソーダ十缶が入った袋を見下ろし、喉の奥に苦いものを感じていた。

待ち合わせ場所で身動き一つせず立ち尽くした三時間。

東側と西側のロビーを間違えたわけじゃない。「二つの同心円」という、去年の十月に俺たちが慰め合っていた仮説は、今この瞬間、俺の目の前で粉々に打ち砕かれたのだ。

今朝の体育館での卒業証書授与式で、3年A組のリストが読み上げられた時、「あおい」という名前は全く呼ばれなかったことを思い出した! 二年生の時、西側のロビーには実験室の手洗い場があるだけで自販機なんてないのに、彼女がノートにC棟の西側のロビーにも自販機があるって書いたことも思い出した!

「一体どうなってるんだ?! もし今朝の3年A組の卒業生名簿に彼女の名前がなく、このC棟の東側ロビーにも現れないのなら……この三年間一緒にノートを書き、あの半分のハートのしおりを机の中に入れてくれた『あおい』という女の子は……本当はどこにいるんだ?!」

胸の中で心臓が爆発しそうなほど狂ったように鼓動していた。

茶色いノートは今、俺の手元にある! もし今日俺がこのノートを持ったまま府中高校を去れば、明日卒業した俺はもう二度と3年B組の教室に入ることはできなくなり、俺とあおいを木の机越しに繋いでいた唯一の絆は、永遠に解けない謎の中で途切れてしまう!

「ダメだ!! 今すぐノートを3年B組の机の中に戻さなきゃ!! 三月の終わりに大学の入学手続き書類を提出するために最後にもう一度学校に来る日がある——その時までに、このノートの最後のページにすべての思いを書き込んで、あおいに真相を問い詰めてやる!!」

そう考えると、俺は即座に茶色いノートとジュースの袋を抱きしめ、C棟のロビーから飛び出し、用務員のおじさんが全教室の鍵を閉める前に、三階の3年B組の教室に向かって階段を死に物狂いで駆け上がった!

3年B組のドアはまだ少し開いていた。黒板には、卒業を祝うカラフルなチョークの絵が、真っ赤な夕暮れの光の下でそのまま残されていた。

俺は窓際から四番目の木の机——三年間ずっと一緒だった、右隅に五芒星の傷があるあの机——へと駆け寄った。

震える手と途切れ途切れの荒い息で、俺は茶色いノートの最後のページ——彼女が先週あらかじめ書いておいた『私の名前は:あおい』という文字のすぐ下——を開いた。

一秒の躊躇もなく、俺は青いボールペンを取り出し、混乱と絶望、そして燃えるような愛のすべてを込めて、最後のページの下半分にペンを強く押し付けて書き殴った。

【高校三年の記念ページ — 3年B組側】 僕の名前は:しょうた(鈴木翔太) 携帯電話番号:090-38xx-7159 この最後の行を書いた日:卒業式 — 平成28年(2016年)3月

あおい!! お願いだから何が起きてるのか教えてくれ!!

今日の学校の卒業式で、僕は昼の12時55分から午後4時まで、君のために第二ボタンを残した学ランを着て、このノートとメロンソーダ十缶を持って、【C棟の東側の階段のロビー】の自販機の前から半歩も動かずにずっと立ってたんだぞ!

でも三時間ずっと、君の姿はどこにもなかった!! 朝、体育館で3年A組の担任が卒業証書を渡す名簿を読み上げた時、僕も一人一人耳を澄まして聞いてたけど、3年A組に「あおい」なんて名前の人は一人もいなかったんだ!!

二年生の時に僕たちが勘違いしたみたいに、U字型の建物の東西のロビーでずれてたわけじゃないんだよ、あおい! すぐ上に僕の携帯電話の番号を書いた! 机を開けてこの最後のページを読んだら、お願いだからすぐに僕に電話してくれ!! 君がどこにいても、絶対に君の声を聞いて、君を見つけ出すから!

裏表紙のすぐ上のギリギリのスペースまで最後の行を書き終えると、俺は茶色いノートを閉じ、高校生活で最後となる星型の傷がある木の机の真ん中に置き、自分の魂のすべてをそこに預けるかのように、冷たい木の表面に静かに額を押し当てた。

◇

卒業式の翌週の月曜日の朝。

三月の春の光に満ちた府中高校で、高橋蒼は魂が抜けたように三階の静かな廊下を歩き、かつての3年A組の教室へと戻ってきた——卒業生が学校に戻って原本の書類を受け取り、大学の入学許可証のコピーを提出する最後の朝だ。

卒業式の日の午後、C棟の東側ロビーで絶望的に待ち続けたあの日からというもの、この週末、蒼は自分の寝室で両目が腫れ上がるほど泣き続けていた。

水色の錦織りのお守りをくれ、心からの告白を書き、十缶のメロンソーダを持って東側ロビーに行くと言ってくれた彼が、どうして二人の最も大切な日に煙のように消えてしまったのか、彼女にはどうしても理解できなかったのだ。

今はもう生徒の姿が全くない空っぽの3年A組のドアを軽く引き、蒼は重い足取りで窓際から四番目の木の机——左隅に歪な四芒星の傷がある机——へと向かった。

胸の奥に残る最後のわずかな希望の光にすがり、蒼は身をかがめ、震える右手をゆっくりと木の机の中に滑り込ませた。

コツン。

彼女の指先が、茶色いクラフト表紙のノートのザラザラした厚紙に触れた!

蒼の心臓が激しくドクンと跳ねた!

彼女は慌てて茶色いノートを机の中から引き出し、木の机の上に勢いよく置くと、すぐに裏表紙にくっついている最後のページを開いた!

卒業式の前に彼女が黒インクで書いておいた『私の名前は:あおい』という文字のすぐ下、ページの残り半分全体が、今度は青いボールペンで殴り書きされた、翔太の極度の絶望と悲痛さに満ちた文字で埋め尽くされていたのだ!

「彼……私に返事を書いてくれた! 卒業式の日、彼も12時55分から午後4時まで、メロンソーダ十缶を持って東側ロビーに三時間も立っていたっていうの?!」

蒼は両手で口を覆った。あの日、翔太も東側ロビーで身動き一つせず立ち尽くしていたこと、そして携帯の電話番号を残してくれたことを読んだ時、目から涙が溢れそうになった。

しかし……涙に濡れた蒼の視線が、手紙のすぐ上に翔太が記入した個人の情報枠へと移ったその瞬間……。

高橋蒼の全身の血が、一千分の一秒の間に氷のように凍りついた。

彼女の呼吸はピタリと止まった。見開かれた瞳はまばたき一つせず、翔太が白い紙の上に一画一画はっきりと書いた三行目の文字をじっと見つめていた。

この最後の行を書いた日:卒業式 — 平成28年(2016年)3月

「平成……28年……?」

「2016年……?」

蒼の声は渇ききった喉から絞り出され、空っぽの教室の中で砕けるガラスのように震え、そして割れた。

無意識の反射で、蒼は震える左手で今朝職員室で受け取ったばかりの書類の封筒を開け、自分自身の卒業証明書を取り出して木の机の上に置いた。茶色いノートの最後のページのすぐ隣だ。

真新しいインクの香りがする高橋蒼の卒業証明書の上で、府中高校の真っ赤な印鑑の下に印字された日付が、太陽の光の下で鋭く残酷に浮かび上がっていた。

【卒業式 — 令和8年(2026年)3月】

片方は平成28年(2016年)の3月。

もう片方は令和8年(2026年)の3月。

蒼の手にあった書類の封筒が、力なく指から滑り落ち、ドサッと木の床に落ちた。

息が詰まるような静寂の瞬間、まるで巨大なダムが完全に決壊したかのように、この三年間、彼女も翔太も無邪気に見過ごしたり勝手な理由をつけて説明したりしてきた数十の奇妙な記憶の破片が突然押し寄せ、ドミノ倒しのように次々と蒼の脳内で激しくぶつかり合った。

どうして一年生の春(彼女の2023年)、誰もが知っている写真のポーズ「片想いハート」について話した時、彼はぽかんとして全く意味を理解できず、十年も前のマンガの絵柄の絵を描いたのか?!——なぜならあの時、彼は2013年を生きていて、その写真のトレンドは影も形もなかったからだ!

どうして一年生の秋、彼が美波ちゃんに失恋した時、彼は「失恋なう!」という2010年代初頭のネットスラングを書き、彼女に先史時代のおじさんみたいだと笑われたのか。そして彼女が「風呂キャン」「エッホエッホ」「メロい」「耳つぼジュエリー」といった2024年や2025年の最新のスラングを使った時、彼はまるで異世界から来た人間のように完全に意味がわからなかったのか?!

どうして一年生の体育祭で、彼は自分がリレーで二位になったと主張したのに、グラウンドにいた彼女は1年B組のアンカーが派手に転んだのを見たのか?! どうして一年生の文化祭で、彼女の1年A組はピンク色のクレープ屋だったのに、彼が1年A組の教室に忍び込んだ時は、焼きそばとたこ焼きの屋台しかなかったのか?!

どうして一年生の2月14日のバレンタインデーで、彼は金曜日に日記を書いたのに、彼女の年の2月14日は明らかに水曜日だったのか?!

どうして先月の1月、彼は試験のことを、「共通テスト」ではなく(2021年から共通テストに変わる前の、古い呼び名である)「センター試験」と呼んだのか?!

そしてどうしてこの最後の手紙で、彼は「第二ボタンのついた学ラン」を着ていると書いたのか、今の府中高校の制服はネクタイとリボンのブレザーなのに?!(その極度のショックの中で、蒼は、平成から令和にかけての十年の間に、府中高校の制服が伝統的な学ランから現代的なブレザーに変更されたのだと完全に理解した。十年という歳月を経て、木の机の表面の星の傷跡の形が変わってしまったのと同じように!)

「ちがう……私たちがC棟のU字型の建物ですれ違ったからじゃない……」

蒼は学習机の横に両膝をつき、ついにすべてがむき出しで残酷な真実として目の前に現れた時、両手で涙に濡れた顔をきつく覆った。

「二年生の夏のC棟も、この前の卒業式の午後も……彼は2016年の3月の東側ロビーで私を待っていて、私は2026年の3月の東側ロビーで彼を待っていたのよ!!」

妖精や魔法使い、あるいは同級生の誰かが、毎朝月曜日に3年A組と3年B組の間でこっそりノートを移動させていたわけではない。

窓際から四番目のこの木の机は……三年前の四月の最初の日から、同じ空間にある隣り合う二つの教室を繋いでいたのではなく、丸々十年という時間を隔てて、同じ席に座る二人を繋いでいたのだ!

十五歳の翔太が2013年に最初の「極秘ファイル:高校一年生非リア脱出作戦」の文字を書いた時、高橋蒼はまだ小学校一年生に入学したばかりの六歳の小さな女の子だった! そして今、十八歳の蒼が2026年の卒業式の日にこの机の前で泣きじゃくっている時……彼女の背番号7のバスケットボール選手、鈴木翔太は、十年前にこの学校を卒業しており、今の外の世界では、彼はもう二十八歳の大人の男性になっているのだ!!

「翔太……私たち……十年間も離れていたの……?!」

むせび泣く蒼の声が、春の陽光に満ちた3年A組の教室に響き渡った。

しかし、ページ上の文字を一文字ずつぼやけさせる涙の波の真っ只中で、蒼はふとある生と死の法則を思い出してハッと我に返った。

今日は卒業式の翌週の月曜日の朝だ。もし2016年側の翔太が、私に送るために卒業式の午後にこのノートを机の中に置いたのだとしたら、来週の月曜日の朝、2016年の彼も、私が返事を残していないか確認するために最後にもう一度学校に戻ってくるはずだ!

茶色いノートの最後のページの白いスペースには、彼女の名前と翔太の名前の間に挟まれたわずか五行ほどの小さな隙間しか残されていなかった。

そして、学校が卒業生を閉め出し、新入生のために机と椅子を引き渡す前の、彼女がこの3年A組の教室に入れる最後の日でもあった!

頬を伝って流れ落ちる二筋の涙を拭う暇もなく、蒼はすぐに筆箱から黒インクのペンを取り出し、震える手で、十八歳の最後の文字を、最後のページに残された狭いスペースに切羽詰まったように書き殴った。

【3年A組からの最後の返事 — 令和8年(2026年)3月に記入】 翔太さん!! 最後のページ、読みました!! 卒業式の日、私もC棟の東側の階段のロビーで、お昼から夕方遅くまでずっと待っていたんです! 私たちが場所を間違えたからじゃないんです、翔太さん……。さっき、翔太さんが下に書いた卒業年月日を見ました! 翔太さんが卒業したのは平成28年(2016年)の3月……そして今日、私がこれを書いて、卒業証書を手に持っているこの日は、令和8年——2026年の3月なんです!! この机は、翔太さんの2016年の3年B組と、私の2026年の3年A組を繋いでいたんです! 私たちは同じ学年だったことなんて一度もなくて、ちょうど【十年の時間】が離れていたんです!! 最後のページに書くスペースがもうないし、私がこの教室に入れるのも今日が最後です……。でも、今の私の2026年では、翔太さんはもう28歳で、私と同じ世界に生きています! 翔太さんの電話番号は保存しました。それか、私の卒業式の日(2026年の3月——翔太さんの側から数えて10年後)に、C棟の東側ロビーで待っていてください!! 絶対に電話して、2026年の世界で翔太さんを見つけ出しますから!! 大好きです、十年前の、そして今の鈴木翔太さん!!

最後の文字を書き終え、蒼はペンを置いた。手が震えすぎて、スマホのカメラを開くのに三回もかかった。彼女は最後のページの写真を撮った——画面に涙の雫が落ちたせいで、写真は少しぼやけていた。

そして彼女は、長い間じっとノートを見つめた。

自分がどうすべきか、彼女にはわかっていた。もしこれを家に持ち帰ってしまえば、今書いた言葉は永遠に2016年に届くことはなく、あの十八歳の少年は、なぜ彼女が来なかったのかを永遠に知ることはできないのだ。この最後のメッセージを送るためには、彼と自分を繋いでいる唯一のものを手放さなければならない。

蒼は最後に一度だけ茶色いノートを胸に抱きしめ、そして身をかがめて、木の机の中央にそれを置いた——この三年間、毎週金曜日の午後にそうしてきたのと同じように。

コツン。

あのおなじみの音が、これほど遠く聞こえたことはなかった。

◇

そして、十年を遡った2016年3月末の月曜日の朝——3年B組の教室にて。

俺——十八歳の鈴木翔太——が、職員室で最後の書類を受け取った後、一人で静まり返った教室に入り、星型の傷がある机の中から茶色いノートを震えながら引き出した時……。

ノートの最後の隙間に新たに書き加えられた五行の黒インクの文字を読んだ俺は、窓越しに舞い散る桜の花びらでいっぱいの教室の真ん中で、雷に打たれたように立ち尽くした。

令和8年3月——2026年。

「令和……って何の年号だ? 2026年……俺の2016年から十年後ってことか?!」

手の中の茶色いノートがかすかに震え、そして十八歳になって初めて、熱い涙が俺の目尻からこぼれ落ち、最後のページにある「あおい」という名前と、「大好きです、十年前の、そして今の鈴木翔太さん!!」という文字の上に滲んだ。

この三年間、胸を締め付けるようなあのすれ違いや、すべての奇跡的な出来事の理由は……ここにあったのだ。

俺は幽霊を愛していたわけではなかったし、彼女がC棟で俺を見捨てたわけでもなかったのだ。

背番号7のバスケットボール選手の絵を描いた女の子、半分のハートのしおりを送ってくれた女の子、一緒に木の机を上の階まで運んでくれた女の子は……俺より十年の未来の世界に、本当に存在しているのだ!

俺は、最後のミリメートルまで完全に書き尽くされた茶色いノートを、胸に強く抱きしめた。

今日がこの学校の生徒である最後の日であり、ノートにはもう未来に送り返すための空白のページが残っていないため、俺が彼女の元へと歩いていくための唯一の道は一つしかないと悟った。

それは、十八歳から二十八歳まで——この現実世界で桜が十回咲いて散る季節を自らの足で歩き抜き、俺のあおいがC棟で待っている2026年の三月に向かって進み続けることだ!

俺は学ランの袖で頬の涙を強く拭い、三年間の使命を終えた茶色いノートを大切にカバンの中にしまい、そして骨の髄まで刻み込むような誓いと共に、春の青空が広がる窓の外を見上げた。

「十年待っててくれ、あおい。俺にとって十年がどれだけ長かろうと……君の2026年3月の卒業式の日には、絶対にC棟で君を迎えに行くから!」


お読みいただき、ありがとうございます!

次話は明日19時20分に更新します。

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