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(9)意味の分からない徴兵検査

徴集の報せを見て、出征を親父達に報告し、フィアと打ち合わせをした次の日にはもう出発した。

王都までは徒歩と乗合馬車で行く。到着まで日数がそれなりにかかるので、出発は早いに越したことはなかった。移動しながらも、作戦会議は続行する。


「遠いな~~~。だるっ」


ニキが文句を垂れながら歩く。俺より歩くのが遅い。もう少し速度を上げられないものかと思った。


「庶民は戦に向かうだけでへばって野垂れ死にそうだ」

「それはわりとありますね。徴兵の行き帰りを狙う賊もいるようです」


厳しい現実だ。ニキのぼやきにフィアがそう答えた。

フィアは文句一つ言わず付いてくる。体力的に不安に見えるが、魔法で土を動かし移動していた。魔力を使う方が消耗が少ないようだ。常に土と接触しているのも効いているのだろう。


「ゼン、てめー、早すぎんだよ! この体力バカが」

「そうか? このペースでいけば、乗合馬車は乗らなくてもいけそうだからもっと頑張ろうかと」

「シメるぞ」


いつも遠くの山まで駆けて帰ってくるという鍛錬をしているので、走っていない分、楽に感じていた。


「ニキの言うことには一理あります。これは常人のペースではありません」

「そうなのか」


フィアがそう指摘して、俺はようやく理解した。


「……フィア、もしかしておまえも疲れてないか?」

「いいえ」


俺がフィアの両肩をゆるく掴みそう問うと、こいつは両手で口を覆いながら首を振りそう答えた。


「わかった。少しペースを落とそう」

「へぇ……やっとわかったか」


ニキが俺達に「先に行け」と言わないのは、一人で移動すれば賊に襲われた際の危険性が高いからだと思った。そういうところは抜け目がない男であった。



こうして、俺達は王都へ向かい、無事に到着した。


「よし! 工作隊決定! これで死ににくくなった」


志願兵の検査を受け、結果が出るとニキが両拳を握り、安堵を示した。


検査は村の教会で見たような神具に神言器をかざし、属性や特性を読み込み行っていた。軽い質問と受け答えも加味されていた。多くの人数が検査を受けていたので、なるべく得意分野を始めから強調しておくのが良さそうだった。

ニキは魔具の扱いが得意であると主張していたので、それがかなったようだ。


「次の者」

「はい」


外套の上羽織を目深に被ったフィアが検査を受ける。王都に入ってからフィアは顔や肌を隠すようになった。上羽織で瞳も隠したそうに見えた。


「……徴兵年齢に達しないのでは?」

「いいえ」


検査員がフィアの見た目で年齢を判断し、そう言うも、神言器を神具にかざすと年齢は条件を満たしていると証明される。


「失礼した」


そして、属性や特性を把握すると、検査員は後方魔法部隊へ配属すると告げた。


「前線へ配置してください」

「え? 魔法兵は盾兵の後方にという鉄則が……」


検査員がそうごねると、フィアは上羽織を外し、その紅い瞳も白い髪も晒し、裾も捲り白い腕を晒して見せた。


「私、精契者ですので」

「あ……あぁ。わかった」


そう証明して、フィアは前線への配置となった。だが、その白い身を晒す意味は何なのだろう。それが精契者の証なのだろうか? なんとなく、こいつに直接聞いてはならない気がした。検査が終わるとすぐに上羽織を被り直していた。

心なしか、周りの視線に異変を感じる。何か、見てはならないものを見てしまったかのような雰囲気を感じた。俺は思わず、こいつを覆うように前に出た。


「次」

「はい」


俺の番だ。もちろん前線配置を希望している。


「……神言器は?」

「石だ」


神言器はない。神言石ならある。俺は押し通すかのように神具に神言石をかざした。おそらく、この年齢になっても神言器となっていないことに難色を示されているのだろう。


「年齢は条件を満たしているだろう」


一応、洗礼は受けて年齢は記録されているので証明はされた。だが、それ以外の情報は出ない。


「属性……どうした?」

「ない」

「そんなわけあるか」

「ある」

「無属性か?」

「そうだ」


俺がそう受け答えすると、検査員が場を離れ、複数人と何か話し合いを始めた。


「その剣が神言器ってホラ吹いとけ。理属性とか言っときゃ通るかもしれんぞ」


ニキが耳打ちしてきた。確かにそれはあるかもしれない。理属性は外からは分からない魔技を使う者がわりと多いと聞く。ラディクト将軍もこの属性だと聞いた。


「あー、すみません、これが、神言器です。そして、すみません、俺、理属性です」


何故か棒読みになってしまった。

検査員に、持参した魔具でも何でもないただの長剣を手渡した。


「グワッ!!」


長剣を手にした検査員はその重量に引っ張られ、身を傾けた。ズドン、と床に長剣が刺さる。


「なんだこれは」

「神言器です」


手をぶるぶると震わせながら、怪訝な表情で検査員が俺にそう尋ねた。俺は迫真の表情を作り、そう応える。


「……お前は前線行っとけ!! 意味が分からん!」


検査員が急に雑になった。俺に意味が分からないと言うなどと、解せない。でも無事にフィアと同じ配置になったのでよしとしよう。

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