(10)世界の叛逆者
「リベリオ王子、ご武運を」
「ああ。お前の教えの通り、やってやるぜ、ラディクト」
王城の高楼にて、二人の男が出撃準備が始まっている階下を見渡しながらそうやり取りした。
「お前が総指揮をするものだと思ったが、オレに回ってくるとはな」
「私が王城の守りを盤石に致しますゆえ、全力で迎え撃ってください」
「ああ。父上たちを頼むぞ」
此度の戦の総司令官となったのはこの国の第二王子リベリオだ。騎士団長ラディクトの元、師事し、軍略を学んできた。幾度か実戦の指揮を経験し、今回こうして総司令官となったのである。
彼は齢十九にして総司令官となったが、類い希なる才と良き師の教えにより、確かな実力を持つ。
戦闘も軍略とともに学び、その戦闘勘と相俟って随一の強さを誇る。
「久しぶりに暴れられるな」
拳と拳を合わせ、バチ、と電流が走る。
彼の神言器の形は籠手だ。普段は指抜き手袋の形状だが、戦闘時は腕全体を覆うほどの大きさになり、重量を載せ、殴打するのに適した形となる。属性は雷のため、魔技として拳に電流を載せたり、雷魔法で雷撃を発するなどする。
「デケえ奴を真っ先に狙ってやる」
「指揮官級を速攻で潰すのですね」
「ああ」
リベリオは攻略の目処を軽く口にし、ラディクトがそう補足した。
「魔王なんてものに、この国を明け渡してたまるものか」
その瞳に闘志をぎらぎらと燃やし、彼はそう宣誓した。
――王宮の問題児
王侯貴族達は彼のことをそう称する。
彼は、神言が聞こえないのだ。――否、拒否した。
「オレの頭ん中で勝手に喋るんじゃねぇ!! オレはオレの見たものしか信じねえ!」
神言も降り、神言石も神言器へと変貌は遂げている。だが、ある時、彼は頭に響く正体不明の声へ怒りを覚えた。周りの人間がそれに一切の疑問も持たず、世の理として受け入れ、力を享受しているのも気に入らなかった。
「クソが!! 黙れ!!」
その思いが極まり、怒りが頂点に達した時、彼は壁に頭を打ち付け、己の内に響く声を拒否した。その異様な気迫と行動に周りの者は本能的に恐怖を覚え、誰一人止めようとしなかった。
「……っ、ハハ、止まった」
壁に打ち付け、額と鼻から血を流し、鳴り響く声が止むと彼は晴れやかに笑んだ。
その日から彼は神言が聞こえなくなった。
親兄弟含め、彼のこの行動は思春期ゆえの暴走であると片付けた。理解不能なため、そう処理せざるを得なかったのだ。
――彼はこの世界に叛逆する




