(12)速攻無双――借金一発返済への道
「我がエーレンエム王国の兵たちよ! 盾となり矛となり、祖国を守り抜け! 魔王軍などに屈する我らではない!」
俺達含め、エーレンエム兵が全て配置に付いた。そして総司令官が開戦前の檄を飛ばしていた。
「あれは魔具か?」
「おそらくそうです。神言器の可能性もありますが」
総司令官は馬を模したような騎乗器に跨がり、後方からかなりの速度で現れ、砂埃を立て止まり、前線中央に立った。そして檄を飛ばしたのである。
俺は、総司令官が乗り回してきた騎乗器が気になり、フィアへ訊ねた。
魔具というものは、一個人の神言器を参考に作られ普及しているものも多い。魔具であれば、非常に高価なものだろうと思った。神言器であれば、その発想があったか、となった。騎乗できる神言器は利便性が高そうだ。
「あれ、王子だぜ。リベリオ王子」
「あぁ、第二王子の」
「あの、乗ってきたやつ、馬みてえな魔具? かっこいいな」
「さすが王族、あんなもん持ってるのか」
周りからそんな話が聞こえてきた。心なしか、民兵たちが高揚している雰囲気を感じる。檄の効果があったようだ。
「拡声器も魔具だろうか」
「そうかもしれませんね。あの総司令官は王侯貴族だと思うので、高価なものを複数使用するのかもしれません」
「なるほどな。というか、今王子とか聞こえたが。しかし、あいつ声でかいから拡声器いるか?」
「しっ、あいつ呼ばわりはダメです。王子ならなおのことです」
「ん、すまん」
王子は拡声器を使って檄を飛ばしていた。それも魔具かもしくは神言器かと思った。騎乗器に加えて使用していたので、魔具を複数使用するものと思われる。フィアの言う通り、王族なので贅沢に魔具を導入するのだろうと思った。
しかし、声がでかい。最前線にいる俺達は地声をもろに聞いている。拡声器が必要なさそうなほどだ。声の通りは指揮官として大事な素養ではあると思った。指示が聞こえなければ従いようがないからである。
「行くぞ! 開戦だ!!」
王子により開戦の火蓋が切られた。
それとともに、最前線の兵は勢いよく駆けていく。そうしないと後続の兵に踏まれて敵と戦う前に倒れるという事態になりかねないからだ。
「フィア」
「はい」
俺はフィアへ目配せをする。打ち合わせしたものを実行開始だ。
フィアの土魔法がその場の土を櫓ほどの高さまで上げ、俺達は勢いよく空へ向かった。そして戦場の最奥まで目視した。
「撃破対象確認。あそこと、あそこ、そこから奥へ向かい道すがら、そして最奥」
「把握した」
フィアが神言器へ手を当て、指揮官級の敵を察知した。俺は肉眼でそれを把握する。指揮官級の魔物は卒兵の上位種であると確認できる。おおまかな配置を頭に入れた。
「いいですか?」
「ああ、行くぞ」
それを合図に、フィアが櫓化した土を坂道へ変え、俺は見定めた方向へ一気に走る。すでに駆けていた最前線の兵を追い抜く。その道は目標の魔物の前に到達すると人二人分の高さで途切れる。俺はそこから剣を掲げ飛び降り、その勢いでゴブリンの指揮官であったオーガを一刀両断にした。
「次!」
「はい!」
最前の雑兵であるゴブリン達には目もくれず、隣の隊の指揮官オーガの方へ向かう。フィアが速攻で岩を段状になるよう飛ばし、俺はそこを駆け上がり、飛び降りて雑兵を最低限散らしながら到達した。砂埃が舞う。物理法則を無視した重量の長剣が大地を割る。
この剣は、鍛錬のため走り込みで訪れた山で拾った「魔重鉄鋼」でできたものだ。魔力を帯び、物理法則を無視した重量を発生させる鉄鋼だ。手で持ち上げる鍛錬をするための重りとして収集していた。それをラーニャが紹介してくれた鍛冶師に剣としてもらったものである。
魔力がない俺でも強みを発揮できる剣となった。何しろ、ただ重いだけの剣だからだ。必要なのは魔力ではなく筋力である。
もしかして鍛冶代はラーニャが立て替えていたかもしれないので、俺もラーニャに借金していることになっているかもしれない。だからそれを思うと余計に力が入る。
「奥行くぞ!」
「はい!」
先鋒のゴブリン・オーガ隊の指揮官オーガは全て潰した。
これで敵前方は指揮系統を失い、混乱をきたすはずだ。俺達はその混乱を利用し、すり抜けながら奥へ向かう。前方の雑兵は後続の兵がほどよく叩きのめしてくれるだろうことを期待する。
統率が取れた魔物の軍、という話を耳にしていた。だからこの戦法を実行しようと思ったのだ。
統率は指揮官が指揮してこそだ。したがって、指揮官を潰せば統率は乱れる。そして部隊は混乱に陥り、すり抜けが容易になるというわけだ。
何よりも、指揮官級を独占して狩ることにより最大限の報酬を得られると思ったのだ。俺は借金の一発返済を狙う。
「ゼン、気をつけて……! 来ます!」
「ああ!」
さすがに敵陣の渦中に潜り込めば集中的に狙われる。後方部隊であるコボルト投石隊からの投石、インプ魔法隊からの火球が向かってきた。
「来い」
長剣を構え、俺はそれを向かい打つ。




