第270話 ユニゾンの能力
Ωアーツ・ユニゾン。
その効果は2機のスペースガールの『合体』。条件は大きく3つ。
・スペースガール同士が同調していること。つまりは心を通わせていること。
・両者の仮想体能力値 (プレイヤースキル)が近いこと。
・互いに互いの身体的特徴を熟知していること。
これらの条件をクリアし、連結の楔ユニゾンを互いの腹の内に収めることで合体は完了する。
「さて」
ロゼッタは気持ちを切り替え、紫陽花を観察する。
合体したのはわかった。はたしてどれだけ能力値が上がったのか、そこが問題だ。
ロゼッタは紫陽花を凝視していた。なのに、見失った。
ロゼッタは背後に気配を感じ振り返る。紫陽花はいつの間にか、ロゼッタの後ろを取っていた。
(速いなんて次元じゃない。座標を移動した感じだ。テレポートか……!)
ロゼッタはButterfly-Modeをすぐさま起動させ、紫陽花から距離を取る。紫陽花は両手に持ったサーベルを縦に振るう。
ロゼッタは紫陽花から10mは離れていた。なのに、紫陽花のサーベルに右腕を落とされた。紫陽花のサーベルは約12m程の長さに拡張していた。
「高出力モード? いや……違うな」
紫陽花のサーベルは時間が経っても長さを維持している。つまり、あれが通常状態。
ロゼッタは金銀のエネルギーで両腕を作り、指揮棒を振るう。仙閥蛟竜のスナイパーが動き、紫陽花を四方八方から狙撃する。
紫陽花は紫の花を模したピースを50基射出。ピースがスナイパーライフルのレーザーを弾く。さらにピースは中心からレーザーサーベルを展開し、近づいてきていた仙閥蛟竜のアタッカーを串刺しにした。
(常に高出力のサーベルに、アタックとシールドの性能を併せ持つマルチピース。ウィングの性能はシンプルに上昇している感じ。そしてテレポート……)
ロゼッタはここで、アネモネとネモフィラが使っていた武装を思い返した。
アネモネの武装の中で判明しているのはライトウィング×2、アタックピース×2、サーベル×2、ポイントチェンジ、ユニゾン。
ネモフィラはライトウィング×2、シールドピース×2、キャノン×2、ポイントチェンジ、シールド。
ロゼッタは頭の中で両者の武装を組み合わせる。
「勘づいてはいたけど、やっぱり装備も合体しているんだ」
ロゼッタの指摘に対し、紫陽花は目を細める。
「サーベルとキャノンを合体させ、高出力のサーベルを作った。シールドピースとアタックピースを合体させ、2つの能力を持ったピースを生み出した。さっきのテレポートはポイント・チェンジを重ねた結果だろう? 座標交換が座標移動に化けたわけだ」
「その通りです。ですが……わかったところで何ができるんです? これらの武装はただ合体しただけじゃない。合体し、昇華している。それぞれがTW以上の性能を持っている」
紫陽花はサーベルとキャノンを合体させ生み出した『キャノンサーベル』で仙閥蛟竜を刈っていく。ロゼッタが指揮し、なんとか隙をついてもテレポートで逃げられる。
チート級の武装が多数。だがそれだけじゃない。紫陽花は武装だけでなく、スキルも異次元だ。
「我は完璧な存在なり。アネモネの感性と、ネモフィラの思考を兼ね備えている。誰にも負けません」
たった1人にあの精鋭部隊が、仙閥蛟竜が押されている。
体はアネモネやネモフィラと同様に小柄。なのに纏う覇気は悪魔のよう。この場一帯の空気を紫陽花は1人で支配している。
(意識の方もただ融合しただけじゃない。融合し、昇華している。アネモネ君より感度の良い反応と、ネモフィラ君よりも広く深い思考。ハッキリ言って、読み合いでも負けちゃってるよ)
ロゼッタは狙いを変え、まず邪魔な鉄巨人を処理することにした。
約1分程で鉄巨人を全滅させることに成功する。だが強引に鉄巨人を狙ったため、仙閥蛟竜は数を半分まで減らしてしまった。
「今更他を処理したところで変わらない。私1人でメインシップは落とせる。さっきはよくも調子に乗ってくれましたね。その五体全てを刻み尽くして差し上げましょう……!」
「ふぅむ。合体したことでやや中二病化したようだね」
「一人称が『吾輩』の人に言われたくは無いです!」
Butterfly-Modeもじきに終わってしまう。
ロゼッタは覚悟を決める。
「仙閥蛟竜。君達はメインシップの援護に行くんだ」
ロゼッタの指示を仙閥蛟竜は無言で聞き入れ、メインシップへ向けて移動を始めた。
紫陽花は仙閥蛟竜の背中に狙いを定める。
「逃がしません」
「おっとぉ!」
紫陽花の前にロゼッタは飛び出し、チェーンソーを振るう。
「無駄です」
紫陽花はテレポートし、ロゼッタから距離を取るも、ロゼッタはへットマシンガンで紫陽花を追撃。紫陽花の後頭部を攻撃する。
ダメージなんてほとんど無い。だが、紫陽花の逆鱗に触れることには成功した。
ロゼッタは舌を出して挑発する。
「合体したところで、器の小ささは変わらないようだねぇ。逃げる兵士を後ろから撃つとか、恥ずかしいとは思わないのかなぁ?」
「鬱陶しい人ですね。いいでしょう。まずはあなたから処理してあげます」
紫陽花が迫りくる。
振り回されるキャノンサーベル。展開される大量のマルチピース。限界に近いロゼッタに対抗できるはずも無し。
ロゼッタは右脚を焼き切られ、右目を刻まれ、脇腹を穿たれる。Butterfly-Modeも終わり、両腕も消えて無くなった。
「もはや私の相手では無い。夜闇に沈みなさい。仮面の賢者よ」
「――もうちょい粘らせてほしいな……!」
ロゼッタは視覚データをスピカ・セーラスに送っていた。その視覚データをもとに、スピカ・セーラスのクルーは紫陽花を分析し、その結果をあるプレイヤーに送信している。
「さようなら」
紫陽花はロゼッタの胸の中心をキャノンサーベルで貫く。
「味方が蹂躙される様を、外から見ていなさい」
「確かに君は強くなった。同時に、とても自分本位になった。驕っていては、あの狼に喉元を噛み千切られるよ」
ロゼッタが夜空に散る。
「!?」
ロゼッタが居なくなると同時に、紫陽花は強い寒気を感じた。
遥か遠くの夜空。紫陽花の視線の先に、3つの戦艦が現れる。オケアノスのサブシップ3隻だ。
「こちらのサブシップ艦隊を突破したようですね」
だからなんです? と、紫陽花はサーベルを構える。
「サブシップ3隻で私を落とすつもりですか? そんな粗大ゴミで……」
サブシップ3隻は紫陽花を無視して急カーブ。進路を変更し、スピカ・セーラスとクイーンズ・キャッスルが交戦する場へ向かった。
「私を放置……? いや」
紫陽花は見逃さなかった。サブシップの1隻が1体のスペースガールを落とす瞬間を。
そのスペースガールはライフルから黒い光を放つ。紫陽花は黒い光をサーベルで切り払う。
「そういえば、まだあなたが残っていましたね。黒き明星、オケアノス最後の戦士よ」
狙撃手シキはワイバーンに乗り、ライフルを構える。
スコープ越しに紫陽花を見て、シキは口元を笑わせた。
「相手にとって不足なしです。最高のデザートだ……!」
「来なさい。クイーンが認めたその力、私が真っ向から捻じ伏せてあげます」
黒き明星vs合体機兵。
代理戦争決勝戦が始まる。
~紫陽花の武装(式も添えて)~ ※式の左がアネモネの武装、右がネモフィラの武装
・ライトウィング×ライトウィング→オーロラウィング
・ライトウィング×ライトウィング×シールド→オーロラウィング Shield+
・アタックピース×シールドピース→マルチピースΩ
・アタックピース×シールドピース→マルチピースΩ
・サーベル×キャノン→キャノンサーベル
・サーベル×キャノン→キャノンサーベル
・ポイントチェンジ×ポイントチェンジ→テレポーター





