第260話 地下2階の戦い
地下1階のポイントは全て潰した。
あとは地下2階だ。エレベーターに乗って下の階に行く。
「うわ」
また景色が変わった。今度は駐車場だ。車やトラックが大量に停まっている。
「まだこっちの方が見晴らしは良いかな……」
駐車場の奥には大量の大型倉庫がある。
「このフロア全体、倉庫街ってわけだね」
配電盤があるのは倉庫の中。僕は倉庫に入る。
高さ15m程度の天井。
無柱空間に鉄製の高層棚が整然と並ぶ。棚には食品・飲料・工具・灯油・農薬・寝具等々、様々の物が積まれている。
「なるほどね~……」
棚の品々を物色しながら進んでいく。
倉庫の奥に配電盤を発見。スタークで撃破する。
「この調子で残りも――」
僕が近くの出入り口に体を向けた瞬間、レーダーに敵アイコンが1つ映った。
背中側だ。僕は体の向きを反転させる。
同じ倉庫内だけど、無数の棚の先に居るので姿は見えない。
「火緋色金……! 予想より早い!」
ここに来た、ということはもう本隊の位置はバレているかも。
「ひとまずこの敵を……」
いや、なんだろう。この動き……あからさま過ぎるね。ジリジリと、200mの距離を保っている。
アタッカーなら詰め切れる距離で、ガンナーなら少し距離を詰めればベストな間合いに持っていける。スナイパーやボマーなら射程内。簡単に言うと、どのロールでも食いつきやすい距離。
つまり、誘いだ。
「後ろかな」
背後を見る。倉庫の出入り口の先、駐車場から僕を狙う光が見えた。
僕は横に飛ぶ。僕の残像を2発のレーザー砲弾が貫く。スタークのスコープを覗き、敵を確認。両肩にキャノンを担いだ女の子を見つける。あの人は……ネモフィラさんだ。
「まさか僕の方がぶつかるなんて……! そう都合良くはいかないか!」
アイコンの方はアネモネさんだろうね。
僕はネモフィラさんを狙撃する。ネモフィラさんはシールドピースで狙撃を防ぎながら距離を詰め、次々とレーザー砲弾を発射する。
(グイグイ近づいて来るなぁ……)
僕が回避し、手を止めるとすぐにダッシュしてくる。
ライトウィングを使っているから加速力もそれなり。
しかもこのタイミングで敵アイコンも動き出し、ドンドン迫ってくる。
資材を運ぶための運搬ルート。見晴らしの良い直線。姉妹に挟まれる。
念のため後ろをチラッと確認したけど、やっぱりアネモネさんだった。
(完璧にあっちの形だ……!)
姉妹ともに、距離20m。
正面のネモフィラさんが大砲にENを集める。僕がスタークをネモフィラさんに向けると、ネモフィラさんの姿が消えた。代わりにアネモネさんがネモフィラさんの居た場所に現れた。
「位置の入れ替え……ポイント・チェンジ!」
アネモネさんを放置し、背後を振り返る。
さっきネモフィラさんは肩キャノンにENを溜めていた。つまり、
「来る!!」
僕の背後にレーザー砲弾が迫る。僕はライトウィングを起動させ、上に飛んで回避する。
空中に居る僕にアネモネさんのアタックピース(レーザーの刃を出すピース)が差し向けられる。
「アステリズム!」
僕はアステリズムを展開し、即座にアネモネさんのアタックピース2基をレーザー弾で破壊。アネモネさんはアステリズムを突破できないと判断したのか、残りの10基を引っ込めた。
アネモネさんはサーベル2本を手にしライトウィングをフル回転。加速し、無鉄砲に迫ってくる。
(焦ったね。それだけ加速をつけたらもう引っ込めない)
僕はワンオフ式サーベルを手にする。
「高出力モード!」
ワンオフ式サーベルを高出力モードで展開。薙ぎ払う。加速の付いたアネモネさんは躱せない――はずだった。
アネモネさんがネモフィラさんと位置を交換した。ネモフィラさんは急速で下がり、僕のワンオフ式をギリギリのところで躱す。
「ついた加速も、入れ替われば0にできるの……!?」
ネモフィラさんはそのままレーザー砲弾を発射する。避けようとするも、攻撃後の隙をつかれたことで避けきれない。肩に、当たる。
「緋威――炎纏!!」
緋縅を展開、すぐに炎纏モードにし、レーザー砲弾を受け流す。やはり威力が高い。緋威は1撃受けるだけでENを使い果たしスリープ。肩の耐久値もかなり削られた。装甲が剥げて電線が露出する程に。
「アンタとやることになるとはな! 予想外だったよ!」
背後から声。
(神眼)
僕は俯瞰で周囲を確認。背中に迫るアネモネさんの斬撃を、下降して躱す。
「ちっ!」
僕はそのまま床に着地。アネモネさんとネモフィラさんは僕を挟む形で着地する。
「今の連携で仕留められませんでしたか。やはり一筋縄ではいきませんね」
「ふん! 所詮はスナイパーだろ。ここまで近づかれたら負けみたいなものだろ」
1対2。うぅ~! 緊張する……!
ターゲットの撃破を優先して索敵を怠ったのはミスだった。おかげで先手を取られてしまった。
正面にネモフィラさん、背後にはアネモネさん。厄介なのはやはりポイント・チェンジ。ほとんどタメ無く位置を変えられるのは強い。それに2人共ライトウィングを搭載しているから『点』が高速で移動する。うん、厄介だらけだ。
「いくぞ!」
「油断しないでくださいね。お姉さま!」
ネモフィラさんは後ろに下がり、アネモネさんは迫ってくる。
僕はアステリズムを展開。それぞれ6基ずつ差し向ける。
アネモネさんはアステリズムの対処に手間取り、スラスターを止める。ネモフィラさんはシールドピースと手に持った大盾でアステリズムを捌き、肩キャノンで狙ってくる。僕はレーザー砲弾を躱し、スタークで応戦する。
「お姉さま! ピースだけに足を止められないでください!」
「わかってる! けど、コイツのピースの動きおかしいだろ! 1個ずつが完全に独立して動いている!」
ペテルさん&ニコさんとの戦闘で∞バーストに入った際、ピースを動かすコツを掴んだ。∞バースト時程の器用さは出せないけど、前よりも細かく動かせるようになった。
「そりゃ!」
アネモネさんは2本のサーベル端末を連結させ、両端からレーザーの刃を展開する。
「初めて見る形状……!」
「凄いだろ! あたしの必殺『双刃サーベル』! おりゃうりゃそりゃあ!!!」
アネモネさんは双刃サーベルをクルクルと回してアステリズムの弾を弾き、突進してくる。
(ネモフィラさんが棚に隠れた。死角から僕を狙うつもりかな。嬉しい……この配置、絶好だ!)
僕はネモフィラさんが隠れた棚の足組みをアステリズムのレーザー弾で破壊し、棚を倒す。棚はネモフィラさんに襲い掛かる。
「鬱陶しい手を……!」
ネモフィラさんが顏を後ろの棚に向けた瞬間に、ネモフィラさんの正面にΔシールドを設置。
ネモフィラさんは棚を避けようとして前に出るが、僕が設置していたΔシールドにぶつかり、全身を痺れさせた。
「ッ!? これが、狙いですか……!!!」
「ネモ!!!」
空中で停止するネモフィラさんに、スタークを向ける。だけど、これはフェイント。
ネモフィラさんの姿がブレると同時に、僕はスタークを背後のアネモネさんにノールックで向け、発砲する。
2人の位置が入れ替わる。
「「!?」」
ポイント・チェンジを必ず使う場面。それは、姉妹どちらかのピンチの時。
ネモフィラさんを崩したらポイント・チェンジを使うと思った。このタイミングでアネモネさんの居た位置を撃てば、位置入れ替え後の痺れ中のネモフィラさんに弾丸は突き刺さる。
全て読み通り。スタークの弾丸が無防備なネモフィラさんに命中する。
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