第259話 配電盤を破壊せよ
廃都市3か。
ロゼッタさんのおかげで予習はできている。
試合開始17時間前のこと、ロゼッタさんからこんな解説動画が届いた。
『この動画は最終戦に出る全員に送信している。吉報だ。最終戦のステージをかなり絞り込めた』
電磁モニターを使ってロゼッタさんは解説する。
『これまでのステージ選択から、運営側のステージを選ぶ基準・ルールを分析した。まず対戦する2つのチームの内、どちらかが経験したステージは選ばれない。経験したステージに似たステージが選ばれることも無い。つまり、オケアノスがこれまでプレイした樹海・砂漠・宇宙。火緋色金がプレイしたリゾート・火山・雪国は最終戦のステージに選ばれないと断言できる』
見栄えを意識しての仕様なんだろうね
毎回似たステージじゃ見ている側が飽きてしまう。
『経験したステージに似たギミックのあるステージも除外される。ステージの広さにも規格があり、その規格外の広さのステージは除外できる。それから、これは勘だけど娯楽性の低いステージ……つまりつまらないステージも無いと思う。消去法を駆使し、残ったステージの数は8だ。この8通りのステージの特徴はキッチリ頭に入れてくれ。ステージを理解しているか理解していないかの差は大きいからね。では、各ステージの詳細をそれぞれのメッセージボックスに送信する』
廃都市3はこの8通りのステージの中に入っていた。
このステージは2つのブロックに分かれる。
①シェルター街(地下の街)
②廃都市(地上にある廃れた都市)
シェルター街はスペースガールやTWしか入れず、戦艦は天井を破らない限り侵入不可。シェルターなので外壁は硬く、外から壊すにはメインシップでも時間がかかる。シェルターの壁は電波をも阻害し、地上と地下の間では通話ができない。地上から地下へ、地下から地上へ、レーダーによる探索もできない。
廃都市は壊れた近未来風の都市 (ややこしい)。当然戦艦も自由に動ける。普通だね。
壊れた街とはいえ、それぞれの建物はかなり頑丈。ビルなどは硬い障壁になる。
簡単に言うと『スペースガールは地下で戦って、艦隊戦は地上でやれ』というステージ。ステージ全域に広がる地下シェルター街をどう使うかがポイントになるステージだ。
僕はとりあえずいつも通り、格納庫から出て艦上に行く。
「うわ。しかもこれ」
夜だ。
満月が空を彩っている。夜とはいえ、月の光で結構明るい。空の色も黒と言うより濃い青だ。
眼下に広がるは世紀末なビル街だ。街の至る所に鋼鉄の箱がある。
『シキ君』
ロゼッタさんからの通信だ。
「ロゼッタさん、僕はどう動けばいいですか?」
『狙撃手なのだから地下に行くことはリスクが高い。狙撃の妨げになる遮蔽物が多いからね。でも……悪いがシェルター街に降りてくれ』
「り、理由を聞いてもいいですか?」
狙撃手を置くなら、複雑な地形の地下より見晴らしのいい地上の方がいいに決まっている。
ロゼッタさんの狙いは如何に。
『君にはエレベーターを止めてほしいんだよ』
あ、なるほど。
『我々は暫くここに閉じこもるつもりだ。この背の高いビルに囲まれた場所ならビルが壁にもなるし索敵避けにもなるからね。ただ厄介なのは近くに大量のエレベーターがあることでね』
地上と地下を繋ぐエレベーターがこのステージには多数存在する。
地上に点々とある鋼鉄の箱、アレがエレベーターだ。建物の中には無く、全て外にある。外付けのボタンを押すことで昇降カゴを呼ぶことができる。
「地下のルートから戦艦の真下に入られるとまずい、ということですね」
『そういうこと。スペースガール用の小型エレベーターは放置でいい。問題は大量のTWを乗せられる大型エレベーターだ』
いくら戦艦でも、不意打ちでTWに背後を狙われたらきついもんね……。
『君とラビ君には地下にある大型エレベーター用配電盤の破壊をお願いしたい。配電盤を破壊すればエレベーターは止まる。地下にある配電盤は全部で22。配電盤を1つ破壊すれば、1つの大型エレベーターが使えなくなる。地上にある配電盤はこっちで処理するよ』
えっと、まとめると、『地下に降りて配電盤を破壊する!』。これだけ!
「あれ? わざわざ配電盤を破壊せずとも、戦艦やTWで大型エレベーターそのものを壊するんじゃダメなんですか?」
『ははは! 可能ではあるが、メガレーザーでも2発は撃ち込まないと破壊できない。効率が悪い。エレベーター全部装甲値が異常に高いんだよね。基本は『破壊できないもの』と考えていい』
装甲値が異常に高い、か。
「わかりました。僕は地下に降ります」
『任せたよ。ラビ君には地下3階の10か所の破壊をお願いしている。君は地下1階~地下2階の12か所の破壊をお願いしたい』
マップに12個赤い〇マークが浮かぶ。
『撃破したら×に変えてね。地上地下間では連絡が取れないから、緊急の用がある時は地上に戻ってきてくれ』
「了解です。作戦に移ります!」
僕は艦上から飛び降りる。
「よっと」
上手くスラスターで落下速度を殺し、ひび割れた道路に着地。開会式の時にスカイダイビングをした経験が活きた。
近くに鋼鉄の箱――エレベーターを発見。
外付けのボタンから下降(↓)ボタンを押す。すると鋼鉄の扉が開いたので、中に入る。中は一般的なエレベーターと変わらない。ボタンを押して待つだけ。階層は『1F(現在地)』に『B1F~B3F』の全4階層。僕はB1Fのボタンを押す。するとエレベーターは下降を始めた。数秒と待たすにエレベーターはB1F、地下1階に着いた。
鋼鉄の扉が開く。
「これがシェルター街……」
災害、戦争から人を守るために作られた地下都市。
天井は鋼鉄。灯りは電光。地面は全てコンクリート。
天井までの高さは40mぐらいかな。
驚いたのは建物の形。どの建物も地上から天井まで伸びている。言ってしまうと屋上が無い。どれもこれもビルというわけではなくて、様々な形態の建物が積み重なって天井まで伸びているのが大半だ。1階はガソリンスタンド、2階はコンビニ、3階は喫茶店……みたいな感じで天井まで繋がっている。まるで積み木のようだ。
これはスナイパーにとっては嫌な地形だ。建物の高低差が無いから、『見晴らしの良い高所に陣取る』ということができない。最上階の窓際に待機しても、別の建物が壁になって射線を切られてしまう。こ、困ったステージだ……。
僕はいま、広い道路の上だ。左右にはズラーっと建物が並んでいる。どれも天井まで続いているため閉塞感がある。SF好きとしては唆られるけど、プレイヤーとしては難しい。
やりにくい。さっさと配電盤を全て壊して地上に戻ろう。
「まず、あそこだね」
〇印のある建物に入る。クリニックが積み重なった建物だ。その3階に行くと、円柱型の操作パネルの付いた機械があった。アレが配電盤だね。スタークで配電盤を撃つと穴が空き、穴から煙が漏れ、節々から発火した。配電盤の電源が落ちる。破壊成功だ。
マップ上の〇印を×印に変える。
「スタークで1撃で破壊可能……これなら」
配電盤の位置はわかる。レーダー撃ちで仕留めよう。
僕は外に飛び出し、1200m先にある配電盤に狙いを定める。
「……障壁は建物1つと壁1枚、いける」
スタークからレーザー弾を発射。建物を1つぶち抜き、その先にある建物の壁を1枚抜き、目標を撃つ。手ごたえは完璧。一応スコープで対象を確認する。破壊、できてるね。
「良し。この階は残り4つ。すぐに終わらせるよ」
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