第252話 古式レイ、束縛
視聴を終えた後、僕は色々な人に連絡をした。
月上さん、ニ叶さん、シーナさん、千尋ちゃん。みんなにメッセージを送った。
月上さんには代理戦争の現況や僕の現状+αを簡潔にまとめて送った。二叶さん、シーナさん、千尋ちゃんには僕は元気だということを伝えた。メッセージを送るのは苦手だけど、心配させちゃ悪いからね。まぁ、誰も心配なんてしてないと思うけど……。
二叶さんからは長文のメッセージが返ってきた。要約すると『次は負けないわよ!』だ。
千尋ちゃんからは『心配だからおうちに泊まり行っていい~?』とメッセージがきた。もちろん断った。
シーナさんはなんか……4つメッセージを送ってくれたけど、全部送信取り消しになっていた。最終的に『お大事に』というスタンプだけが残っていた。
月上さんは月に居るのかな。既読が付かない。
僕はベッドの上で布団にくるまる。頭に過るのはシノハさんの宣戦布告だ。
「顔面を……殴り潰す……」
こわっ! 怖すぎるよあの人!
なんだろう。やっぱり僕、人に嫌われる才能があるよね。ミフネさんにもすぐ嫌われたし……。
「あわわわわわわわ……! どうしよう。怖くて眠れない……!!!」
ピロン。と、枕元のスマホにメッセージが届いた。
僕はスマホを手に取る。
「月上さんだ。さっき送ったメッセージの返事かな」
月上さんから送られてきたメッセージを開く。
『了解(‘’◇’’)ゞ もっと詳しく聞きたいから、詳細を暇な時に送って(/・ω・)/』
僕は『わかりました』と返信する。すると、
『もしかして、シノハって人の挑発を受けて怖くなってる?ヾ(>ω< )ナデナデ』
さ、さすが。鋭い。ていうか月上さんもあの配信を見てたんだ。
僕は『はい。実は怖くて眠れないです』と返信する。
『これ見て元気出して(*ノωノ)照』
「なんだろう?」
画像が、メッセージ画面に――
「こ、これはぁ!!?」
紺色の布に身を包む月上さんの画像……月上さんの、スク水姿だ! 間違いなく、千尋ちゃんが前に撮った物だ。場所が校内だもん。いやしかし、校内でこんな写真撮って大丈夫なのかな……?
スク水の面積が通常より狭く、しかもピッチピチだ。確かこのスク水は千尋ちゃんが用意したものだったはず。さすがだよ千尋ちゃん、月上さんにこんな……こんなものを着させるなんて……!
「こ、これはこれで興奮して眠れなくなるような……!」
でもおかげさまでさっきまであったシノハさんへの恐怖心が溶けていく。
別の良くない感情が恐怖を上塗りしていく。
「わっ! またメッセージだ」
えへへ……今日はいっぱい話に付き合ってくれるのかな。嬉しい。
『レイのクラス、ゴスロリ喫茶だと聞いた( ..)φメモメモ』
文化祭の話だね。月上さんは生徒会長だから各クラスの出し物は把握してるか。
『ゴスロリ、レイも着るんでしょ?”(-“”-)”』
「え!?」
う~。着る、とは言えないな。
だって、僕は100%裏方だし。こういうのって陽の人が接客やるものだし。というか、僕に接客なんて絶対無理だし。
『着ません。僕は恐らく裏方かと思います』
送信、と。
「うわ。もう来た」
返信が早い。
『生徒会長の権限をもって、あなたにゴスロリ着用を命じる(‘ω’)ノ』
「えぇ!!?」
しょ、職権乱用だ!
もしかして月上さん、僕のゴスロリ姿……見たいってことなのかな。いやでもあり得ない。だって僕だよ? 僕だよ?? こんな暗い女子のゴスロリなんて誰が見たいと言うんだ。
『私の水着姿を見たのだから、あなたもゴスロリ姿を見せるべき(・∀・)ニヤニヤ』
し、しまった! アレは罠だったのか!
この会話の流れを作るために、恥ずかしい写真を送ってきたんだ……さすが月上さん、策士だ。実際、ここで断るのは罪悪感がある。
「……」
それなら、うん。仕方ない。
恥ずかしいけど……でも、僕なんかのゴスロリ姿で、少しでも月上さんが喜んでくれるのなら。
『隙を見てゴスロリ服を着ます。写真、撮って送ります』
はぁ。送ってしまった。もう後戻りはできない。
『わかった((o(´∀`)o))ワクワク』
これで、やり取りは終わったかな。
「ん?」
またメッセージが来た。
僕はそのメッセージを見て、つい頬を緩ませてしまった。
『文化祭、一緒に周りましょう(*^^*)』
「月上さん……!」
文化祭を誰かと周るなんて、考えたことも無かったな……。
当然、返事は――
「はい! 代理戦争優勝して、晴れやかな気持ちで文化祭周りましょー! えいえい、おーっ!!」
僕が感情のまま大声で宣言すると、部屋の扉がバタン! と開かれた。
「ひゃあっ!?」
扉を開け現れたのは梓羽ちゃんだ。クールな顔つきながらも、怒気を纏った梓羽ちゃんだ。
「お姉ちゃん……うるさいって言ったよね? 私、中間テストが近いからさ……悪いけど、無理やり静かにさせるよ」
梓羽ちゃんの手には赤い紐と、革紐にプラスチックの玉が付いた物が握られている。アレは、まさか……!
「あ、梓羽ちゃん? なんで手に猿轡なんて持ってるの!?」
猿轡。それは口を塞ぐための拘束道具。僕はスパイ映画とか見るから知っているけど、普通の女子高生および女子中学生は知らないものだ。
なぜ僕の妹はあんな物を持っているのか……!
「その赤い紐はなに!?」
梓羽ちゃんの瞳の中で、黒い稲妻が散った。
これは、ガーネットさんと同じ!?
「梓羽ちゃん!? なんで無言で近づいてくるの!? 梓羽ちゃん!!? お姉ちゃんに何する気~~~~!? ――――にゃあああああああああああああっっっ!!!!?」
その夜、僕(高2)は妹(中3)に完全拘束をくらった。しかも情けない姿で。解放されたのは1時間後だった。
シノハさんより怖い人物がこんな身近に居たとは……姉の尊厳、ライフ0。





