第251話 勇者の剣
夜暗さんはレーザーの刃を持つ槍を振り回す。
前衛であるアネモネさんが対応するけど、夜暗さんの方が技量は上。アネモネさんは徐々に追い詰められていく。
パートナーのピンチを黙って見ているはずも無く、ネモフィラさんは肩キャノンでレーザー砲弾を発射し、夜暗さんを狙う。夜暗さんはネモフィラさんの方へ跳躍し、砲弾を避け、ネモフィラさんに接近する。
夜暗さんはネモフィラさんに対して槍を突き出す。アネネモ姉妹はポイントチェンジで位置を入れ替え、アネモネさんが夜暗さんの斬撃をサーベルで受ける。ネモフィラさんが夜暗さんの背中を狙うけど、夜暗さんは横目で背後を見た後、飛び上がって砲撃を回避する。レーザー砲弾はアネモネさんの体の横を通り、後方で炸裂する。
一進一退の攻防。
個としての能力はこの3人の中で夜暗さんが1番。アネネモ姉妹は連携力で食い下がっている。
夜暗さんは不敵に笑うと、槍をデータ化させた。
『おーっとここで! 夜暗選手が遂に……!』
槍の代わりに――黄金の大剣が夜暗さんの両手に握られる。
この前竹葉さんが(チートで)使っていた黄金の剣を思い出す。でもアレより長くて幅もある。なにより纏っているオーラが別格だ。
「まさかアレは……!」
僕との対戦の時に出そうとしていた武装――
『で、出たー! KnightNightが保有するΩアーツ! 『勇者剣ブレイヴハート』!! この『リアル系』を参考にしたゲームで、『スーパー系』の力を持つまさにスーパーウェポンだ!!!』
リアル系とかスーパー系ってどういう意味?
「画面越しでもわかる。あの剣、明らかに異質だ」
夜暗さんは剣を振りかぶり、何かを叫びながら思いっきり剣を横に薙ぐ。アネネモ姉妹は間合いの外に居るにもかかわらず飛び上がった。夜暗さんが振った大剣からは黄金のソードビームが発射された。アネネモ姉妹は避けるけど、姉妹の背後にある雪山は黄金のソードビームによって大きく抉られた。
「えぇ!?」
なんて破壊力。というか、無茶苦茶だ。どういう性能なんだアレ。
夜暗さんが剣を振る際に大きく口を開いて言葉を発していたことも気になる。なにか意味がありそうだ。
『これは勇者剣の必殺技の1つ! 『勇猛果敢斬り』! 勇気のエネルギーを剣から飛ばすことができる!』
勇気のエネルギーってなに!?
『勇者剣には5つの必殺技が宿っていて、必殺技名を叫ぶことで必殺技を発動できるぞ! 羞恥心を捨てて必殺技を叫べ!!!』
そ、そっか。ようやくコンセプトがわかった。
あくまで僕の持論だけど、ロボットアニメには大きく2種類がある。SFかファンタジーかだ。SFロボアニメはあくまで架空の科学を構築し、空想とはいえ理論を立てて武器などを発明する。多少、超常の力は関わってくるけど、『気合でパワーアップ』とか、『ロボットが魔法を発動する』とか、そういうことは起きない。
一方で、ファンタジーロボアニメはそういった気合パワーやマジックパワーが普通に発現する。インフィニティ・スペースはSFロボアニメ寄りのゲームではあるが、あの勇者剣に限ってはファンタジーロボアニメ寄り、ということだと思う。
SFロボアニメはクールなカッコよさがあるけど、ファンタジーロボアニメは直球の熱さがあっていい。あの武器も、しょ、正直使ってみたい。でも人が見ているところで技名を叫ぶのは嫌だなぁ。夜暗さんはよくあんな堂々と使えるものだ。
『夜暗選手が攻める!』
夜暗さんがアネモネさんに迫る。夜暗さんは大剣で突きを繰り出した。アネモネさんは突きを躱すけど、すぐさま次の突きが放たれた。一切間を置かずに2撃目がきた。光速だ。当然反応できず、アネモネさんは大剣に胸の中心を貫かれた。さらに次から次へと光速の突きが放たれ、アネモネさんは全身を穴だらけにした。
『今度は必殺『愛と平和の五月雨突き』!!! 光速の連続突きを繰り出す必殺技だ! アネモネ選手躱せず撃墜されてしまう!』
ほ、ホント無茶苦茶だ。
ああいう理論もなにも無い武装は相手にしたくないね。予測もなにもできっこない。
使われるも嫌だし、使うのも――微妙かもしれない。
いま技を見てわかった。アレは『動かされるタイプ』だ。技名を叫んだらオートで体が動いている。僕はこのタイプが大の苦手だ。システムに体を動かされるVRMMOは星の数ほどあるけど、アレだけは何が楽しいのかわからない。せっかく仮想の体があるのに、システムに操作されて何が楽しいのやら。
夜暗さんが勇者剣を出し渋っていたのもこの辺りのことが原因なのかな。あの人は多分、僕と同じで自分で体を動かしたいタイプだ。
「とにかくこれで、形勢は決まった」
相方が居なくなったネモフィラさんは逃げを選択する。雪原を逃げる。夜暗さんはネモフィラさんを追いかける。
Ωアーツの副次効果で夜暗さんのスラスター性能は強化されている。逃げ切れるはずが無い。ネモフィラさんはあっという間に距離を詰められる。だが――
『あっ!?』
ガバッ! と、雪原に積もった雪の中から女性が飛び出した。腹部が露出したウェアと、ショートパンツを着ていていて、両拳には機械を嵌め込んでいる。その姿はまるで、ボクサーのよう。
『ここで登場シノ――』
いるかさんが解説に入る前に、決戦は始まり、そして瞬く間に終わった。
ボクサータイプの女性は左拳をギュッと握り締めた後、背中のスラスターからとてつもない量のエネルギー波を飛ばし猛加速。夜暗さんの懐に一瞬で入って、左拳のジャブを夜暗さんの腹に当てた。
その時、バチ……と拳に嵌められた機械から電撃が放出された。その電撃を浴びた夜暗さんは一時的に体を硬直させた。よくゲームで見る『麻痺』のエフェクト。
夜暗さんの硬直中にボクサータイプの女性はまたジャブを当て、電撃で痺れさせ、ジャブをぶつけ、痺れさせ……を高速で繰り返し、夜暗さんの腹部を破壊。夜暗さんの上半身を下半身を分裂させ、最後に右拳のストレートで顔面を打ち、頭部を破壊した。
ジャブの連打とストレート1撃。あっという間に夜暗さんはデリートされた。
「なんだ、いまの……」
圧巻。
あれほど洗練された拳は見たことが無い。
『火緋色金のエース! PPPの右腕・シノハ! 奇襲からの必殺『ブレーカー・ラッシュ』で夜暗選手を沈めた~~~! これで勝負は決まったか!?』
最後のジャブからストレートへの連携の隙間、その隙間では夜暗さんは麻痺から復活していた。麻痺の時間は0.2秒ぐらいかな。その僅かな時間の内に、再び威力のある拳を当てられるのはきっとあの人ぐらいだ。稲妻のようなジャブだった。
「完璧なコンビネーションの姉妹と、必殺のラッシュを持つアタッカー……これが、最終戦の相手!!!」
この代理戦争は最後まで楽しませてくれるね……!
その後、夜暗さんを失ったKnightNightは押され続け……最後はメインシップを火緋色金のメインシップの主砲に焼かれ、敗北した。
火緋色金は僕らオケアノスと同じで、全勝で3日目を終えた。
『え~、それではこの私、いるかちゃんが試合の振り返りをしまーす!』
ここからは実況席による振り返りをして、それで終わりらしい。
振り返りはいいや。と思い、PCを閉じようとした時だった。
『貸して』
『うわっ!』
試合を終えたシノハさんがいるかさんからマイクを奪った。
僕はつい、PCを閉じる手を止めてしまう。
『オケアノスのシキ』
「え」
ぼ、僕……?
思わぬ指名に体を固める僕。シノハさんは無表情のまま、その唇を動かし、ハッキリと――とんでもないことを口にした。
『アンタの顔面を、殴り潰す』
「~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっっっっ!?!?!?!?????」
場は『宣戦布告だーっ!』と盛り上がる。
僕は突然の宣告を受け――頭が真っ白になった。
え? なんで? 僕、この人に会ったことない……見たのも初めてだ。なのに、なんでぇ!?
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