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【第一巻発売中】スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
代理戦争編

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第249話 戦いを終えて

 代理戦争観戦スタジアム。


 第三回戦・第四回戦が終了し、今日のスケジュールは全て終わった。

 戦士達を乗せた戦艦はスタジアムのステージに着陸する。

 すでに観客は全員帰っており、時間帯設定は夜に変えられている。ステージの上のみライトアップされているが、辺りは暗い。


 明日には第五回戦があるため、明日も出場する選手のほとんどはコロニーには帰らず、このスタジアムで待機する。


 戦艦の中で過ごす者もいれば、スタジアム内の商業施設で休息を取る者もいる。基本的に他コロニーと交流したい人間は戦艦の外に出て、自コロニーの領域内でのんびりしたい人間は戦艦の中で待機する。ちなみにシキの体はスピカ・セーラスの一室に保管されている(中身は空)。


 戦いを終えたラビリンスとイヴはスピカ・セーラスを降り、スタジアム内にあるバーに足を運んでいた。


 バーに集うはイヴとラビリンス、加えてフリーパーチのシーナ・ペテル・ガーネットだ。

 バーカウンターに5人は並んで座る。席順は左端からイヴ、ラビリンス、シーナ、ガーネット、ペテルの順だ。他に客はおらず、バーの店員は全員人型ロボット(NPC)。この5人の他に店内にプレイヤーは居ない。


「それで、シキさんは大丈夫ですか? 変なタイミングで退場してましたけど……」


 シーナは左隣に座っているラビリンスに問う。


「記録を見るに脳疲労でログアウトしたみたい。ま、あの子なら糖分補給すればすぐに復活するよん」

「ブレインアウトでしたか。それなら心配はいりませんね。良かったです」


 シーナはホッと胸をなでおろす。


「シキちゃんをブレインアウトまで追い詰めるなんてやるじゃん」

「私の力ではありませんよ」


 シーナはグラスに入った液体を口にする。如何にもカクテルを飲んでいるような洒落た動作をするが、中身はジュースである。


「1番シキさんを削ったのは間違いなくペテルさんです」

「あはは。そっかそっか。ところでさ……」


「うっ……ぐすっ! うわああっ……!」


 実はこのバーの中で、ひたすら泣きじゃくっている人間が居る。

 それは黒い髪のボーイッシュな女子、ペテルだ。ペテルは子供のように泣き喚いている。


「そのペテルさんはどうしちゃったのアレ」

「さぁ。私も驚いてます……」


「よしよし~♪ 今回は残念だったねペテルちゃん!」


 ガーネットがペテルを抱き寄せ、その大きな胸でペテルを抱擁する。


「じ、自分が……きっちり15分足止めできていればぁ……!」


 端に座るイヴは、ペテルの様子を引き気味に見ていた。


「アイツ、あんな性格だったか……?」

「ペテルちゃんはね~、与えられた任務を果たせないとこうなっちゃうの! 戦闘中感情を抑えていた分、終わった後に溢れちゃうんだってさ! かわいいよねっ!」


 嗚咽するペテル。そのペテルを優しく慰めるガーネット。

 普段はペテルが大人、ガーネットが子供という感じだが、今は逆である。


「ああやって感情を吐き出してリセットしてるんだね」


 ふむふむ。とラビリンスは分析する。


「悔しさで泣ける人間は強いです。まったく、今回はしてやられましたよ。イレギュラーはありつつも、最終局面は確実に勝てる形にできた。なのに、まさかあなたに全て(くつがえ)されるとは思いませんでしたよ……イヴさん」


 イヴは照れながら酒を口にする。

 イヴの横顔を覗きながら、シーナは笑みを浮かべる。


「我々の完敗です」


 最後の衝突、先に損傷率75%を超えたのはフリーパーチのメインシップだった。結果、第三回戦オケアノスvsフリーパーチはオケアノスの勝利で終わった。


 最後に勝負を分けたのはメインシップの性能差。

 スピカ・セーラスは海底などの外からの物理圧力が強い場所でも十二分に動けるように作られているため、フリーパーチの戦艦より基礎部分が頑丈だった。

 チャチャ、イヴ、ロゼッタの三者三様の技師がそれぞれ戦艦にアレンジを加えていたのも大きい。構造の完成度、装甲の厚みがフリーパーチを圧倒していた。


 技師の積み重ねの差が勝負を決めたのだ。


「まさかメインシップの操舵手があなただとは思いませんでした。もしわかっていたなら、警戒したのですが……」


 シーナはメーティス本部襲撃の際にイヴの操舵能力を確認している。ゆえに、イヴの操舵能力の高さはわかっていた。


「いえ、言い訳ですね。あなたの存在がわかっていたところで、作戦は変えなかったでしょう。まさかエンジェル・セルを突破できる程とは思ってませんでしたから」

「よせよ。アレはたまたまだ」

「たまたまじゃないっしょ! 聞いたよ~、エンジェル・セル攻略はほぼほぼイヴちゃんのおかげだってさ」


 ラビリンスが指摘すると、イヴは照れくさそうに頬を掻いた。


「リィース副長が謙虚なだけさ。ほぼほぼアイツのおかげだよ」

「だったらなんでブリッジクルーに試合後胴上げされてたのさ」

「それは……」

「胴上げされてるイヴちゃん可愛かったな~。ずっと絶叫しててね~」

「……うるさいぞ、ガキがよ……」


 シーナは汗を一滴頬に這わせる。


(戦艦の操舵はアシスト有りでも難しい。なのに、戦艦で宙返りをして、その状態で主砲の角度をターゲットに合わせるなんて常軌を逸している。操舵能力に限って言えば、この人は恐らくこのゲームの中で1番。いや、あれだけのことができるのなら、操舵以外の素質もきっと……)


 シーナの慧眼はイヴの内に眠る素質も見抜きつつあった。


「結局シーナちゃんとは決着をつけられなかったからね。いつかリベンジマッチさせてもらうよ」

「望む所です」

「お前らもよくやるな……」


 シーナはグラスを小指で何度か叩き、頬を赤くする。

 シーナは意を決し、声を絞り出す。


「あの、ラビさん」

「どしたの、そんな可愛い顔して……まさか、夜のお誘い!?」

「違います。そのですね……ラビさんはシキさんとリアルでもお知り合いなんですよね?」

「うん。そだよ~」

「じゃあ、えっと……シキさんのお住まいがどの辺りか、知っていますか?」

「いやいやいや、ネットリテラシーって知ってるシーナちゃん? さすがに君が可愛い女の子でもそんな個人情報言えるわけないっしょ」


 まともなラビリンスの返しを受け、シーナは頭を下げる。


「す、すみません……確かにマナー違反でした。あのですね……」


 シーナは顔を上げ、


「実は、リアルでシキさんとカラオケに行きたくて……ですね。でも家の場所によっては難しいかなと思いまして……」


 シーナはシキと直接対決する際に『自分が勝ったらカラオケに行ってほしい』と言った。だけどシキに撃ち抜かれ敗北してしまった。カラオケの約束を強行する権利は無くなった。


 だからこれは『お願い』だ。

 シーナはシキを素直にカラオケに誘おうとしている。断られるリスクも承知で、勇気を出して誘おうとしている。


「カラオケ! いいじゃん! 私も行きたーい!」

「え……」


 カラオケが苦手なシーナにとって、カラオケのメンバーが増えることは避けたい。

 できればシキと2人きりで行きたいところだが……。


「私も入っていいなら、私がセッティングしてあげるよ」

「いえ、でも、私とシキさんは2人で行く約束をしているので……」

「それはダメだよ! スケベなシキちゃんとドスケベなシーナちゃんを密室に2人きりなんて絶対ダメ! JCとJKのいけない関係が始まっちゃうよ! そんなことになるなら私は百合に挟まる女になるよ!」

「妄想も大概にしてください! 私もシキさんもスケベではありません! それにユリってどういう意味ですか!」

「……そんなこと大声で否定するなよ。こっちまで恥ずかしくなる」


 イヴの指摘を受け、シーナは顔を赤くさせて下を向いた。


「別に、私もシキさんの連絡先は知っていますし、あなたが居なくとも……」

「私なしでちゃんと誘える? シーナちゃんはシキちゃんとは違う部類の口下手ちゃんでしょ?」

「うっ……」


 ラビリンスの洞察眼が光る。


「コミュ強の力を借りたいでしょ~? ほれ、ほれほれ」


 ラビリンスはシーナの頬をツンツンとつつく。

 シーナは観念した顔で、


「わかりました。あなたも居ていいです。なのでセッティングお願いします」

「それで良し。そうだ! スペシャルゲストを1人呼んであげる!」

「ゲスト? 誰ですか?」

「とっても歌が上手い子!」

「あのですね、あまり人が増えると……恥ずかしくて」

「大丈夫大丈夫! きっと、シーナちゃんも大好きな子だからさ!」


 にひひ。と笑うラビリンス。

 シーナは悪魔の手を借りてしまったことを後悔し、目の前のジュースを一気に飲み干した。

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スピンオフ『シスター・イズ・バーサーカー』もよろしくお願いします。 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
ペテルの意外な性格が判明! まあ悔しがるのはわかる。シキ完封の任務遂行しきれていれば勝負が決まってたからねえ。 そして艦の性能が明暗を分けた結果になりましたか。 Ωアーツの分の不利をひっくり返したの…
絶対的に歌い手が目立つ立場に立つことがほぼ確定になって草
確かに怪盗やってたし度胸=コミュ力に関しては作中随一だからありかも…
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