第240話 コロニーキャノン
ペテルさんとニコさんを倒した後、僕はコロニーキャノンを探し回った。
予めロゼッタさんから操縦盤がある施設の形状は聞いていたから、すぐに見つかった。
巨大な円盤型の建物。その中心部にある丸い部屋に操縦盤はあった。
操縦盤はアーケードゲームの筐体のような感じで、多数のボタンやレバー、タッチパネルがある。
機械だらけの部屋の中、僕は操縦盤のセキュリティを外していく。
ちなみに操縦盤のセキュリティは簡単な計算問題や思考パズルばかりで、ただの時間稼ぎだった。ゲームバランス的に、見つけてすぐに使用されると困るからこういう処置を施したのだろう。
「操作方法は……」
赤いボタンを押すと、電磁モニターが4窓展開された。
1つ目のモニターにコロニーキャノンの全景が映る。コロニーキャノンはコロニーの天面の中心に生えており、レバー操作で場所をスライドできるようだ。
2つ目のモニターには3DMAPが映っている。MAP上では現在地が点滅していて、その場所から立体の矢印が伸びている。矢印はコロニーキャノンの射線を表しているみたいだ。
3つ目のモニターには様々な数値・メーターが映っている。多分、キャノンの出力とかを出しているんだろうけど解読できない。
4つ目のモニターが射撃画面……ターゲットモニターとでも呼ぼうかな。宇宙を映している。この画面の中心の円の中にターゲットを入れて射撃ボタンを押せばOKみたい。倍率も自由にいじれる。
タッチパネルで出力とカメラを調整。3つのレバーで砲身の位置・角度を調整。
各種ボタンでロックの解除、充填、照射。各種モニターの操作もできる。画面に出ている説明を見るに、脳波で多少の弾道操作もできるそうだ。レーザーの照射時間は4秒もあるみたい。
操作方法はわかった。
「ロゼッタさん」
僕はロゼッタさんに連絡する。
『掌握したかな?』
「はい、大丈夫です。何を落とせばいいですか?」
『メインシップに撃ってもフレアフィールドに弾かれる。だから狙うのはサブシップだ。現在、敵サブシップは3隻残っている。その内のどれかだね』
僕がさっき交戦したサブシップとラビちゃんが乗り込んだサブシップ。それと敵本隊にある1隻。
「1番近い所、先ほど僕が交戦したサブシップを狙えばいいですかね?」
『うーん、ちょっと待った……やっぱり状況的に、サブシップよりも……』
ロゼッタさんは数秒ブツブツと呟いた後、
『すまない。前言撤回だ。もし可能なら、コロニーDのコロニーキャノンを破壊してほしい。いまあそこはフリーパーチに占拠されていてね。アレを使われると面倒なんだ。こっちの本隊がかなりコロニーDに寄ってしまっているからね』
「えっと、コロニーCも確か……」
『あっちは敵さんが放棄したよ。あそこからこちらの本隊を狙うのは不可能だと判断したのだろう。自分達でキャノンを破壊した。いま生きているコロニーキャノンは君が握っているそれと、コロニーDのものだけさ』
ということはコロニーDのコロニーキャノンをこの砲撃で破壊した場合、全てのコロニーキャノンが使用不可になるわけだね。
「わかりました。コロニーDのコロニーキャノンを破壊します」
『頼むよ。撃ち終わり次第、君は本陣に合流してくれ。一応知らせておくが、アスター1とアスター2はすでに撃墜された』
僕とラビちゃんが乗っていたサブシップだ。
(すみませんパロさん……)
仇は取ります。
「いま生きているのは本隊だけということですね。了解です」
通信が切れる。
僕はコロニーキャノンの操作に集中する。
「ん?」
ロゼッタさんから敵戦艦の座標が送られてきた。
それを見るに……、
「……コロニーDと僕がさっき戦ったサブシップ、かなりラインが近い」
狙えるかな……?
レーザーの照射時間は4秒。照射中もレバー操作で砲身の移動・角度の変更は可能。しかも脳波で弾道修正もできる……ならば、いけるかもしれない。
この1撃はかなり大切だ。外すとまずい……初めて触る兵器。しかも扱いづらい部類。これで2枚抜きを狙うのはリスクが大きい。
でも、できたらきっと気持ちがいい。
「やってみるか……」
僕は瞬きをする。
(∞バースト……!)
1度∞バーストに入ることができれば、その後30分ぐらいは自分の意思でON/OFFできる。けれど、ON/OFFを繰り返す度、集中力をかなり消費する。
「ぐっ……!?」
眠気が脳を走る。
僕はなんとか耐え、敵サブシップに狙いを定め、照射ボタンを押し込む。
「発射!!!」
モニターで確認。
コロニーキャノンから放たれたメガレーザーが敵サブシップの背面を貫いた。僕はすぐさまレバー操作と脳波操作を開始。4秒の間にレーザーを大きく動かし、遥か先にあるコロニーDのコロニーキャノンをメガレーザーで断ち切った。
サブシップ撃墜。コロニーキャノン破壊。
僕は∞バーストを解く。
『脳疲労アラート。脳疲労アラート』
『ゲームを一時中断し、休息を取ってください』
システムメッセージが表示される。
イエローカードってところかな。また脳を酷使すると、今度こそ強制ログアウトをくらうだろう。
「……もう∞バーストは使えないな」
『こらシキ君』
ロゼッタさんから通信が飛んできた。
「ろ、ロゼッタさん? どど、どうしました?」
『サブシップとコロニーキャノンの2枚抜き……命令違反だね』
「ええぇ!?」
『ムカつくから後で頬っぺたプニプニの刑だ』
「そんな馬鹿な……」
通信先から歓声が聞こえる。なにか良いことでもあったのかな?
『念のため聞くけど、2枚抜きは偶然かい?』
「いえ、狙いました」
『そうかいそうかい。やっぱりムカつくから頭ナデナデの刑も追加しよう』
通信が切れる。
声色的に、怒っているわけじゃ無さそう……かな?
僕は施設を出て、コロニーの外へ向かう。
移動中、メインシップのオペレーターさんから現状を知らせる長文メッセージが届いた。
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オケアノス戦力:メインシップ1隻、サブシップ2隻(内1隻損傷率50%オーバー)
フリーパーチ戦力:メインシップ1隻、サブシップ2隻 主要戦力:シーナさん、ガーネットさん
フリーパーチは離していたサブシップも本隊に戻し、オケアノス側と同じくメインシップ1隻&サブシップ2隻の陣形を取った。もはや戦場は1か所に絞られた。本隊同士がぶつかる場所、主戦場だ。
僕が宇宙を飛んでいると、
「シキ!」
バイク型TWに乗ったイヴさんが飛んできた
バイクだけどタイヤは無く、代わりにスラスターが付いている。
「イヴさん? どうしてここに?」
「お前を回収しに来たんだよ。後ろ乗れ」
僕はイヴさんの後ろに跨る。バイクは発進し、高速で進んでいく。
「イヴさんを寄越すなんて、相当本隊は危ないのですか?」
「ああ。メインシップは問題ないが、損傷率が半分を超えたアスター3がやばい。しかも敵さんはシーナとガーネットが敵本隊に合流して勢い増し増しだ」
「大ピンチですね……」
僕がペテルさんに長く足止めされたせいだ。
「オケアノス兵が根性出して敵勢を抑えているが、それも限界が近い。特にガーネットのやつが暴れ回っている」
「では、僕の役目は……」
「ガーネットだ。とにかくガーネットを止めてくれ。アイツ1人で戦艦もスペースガールも削ってきやがる」
正面、遠い所で、大量の光が瞬いている。――主戦場だ。
僕はスタークを狙撃モードにし、スコープで戦場を確認。
(ガーネットさん発見)
狙撃、いける。
「!?」
僕達に向けて、敵メインシップが大量のレーザーを放ってきた。
イヴさんはバイクを豪快に乗り回し、レーザーを躱す。
「メインシップがわざわざプレイヤーを狙撃!?」
「フリーパーチもお前さんを警戒しているみたいだな」
スコープを覗く。
2.5km先から、シーナさんとガーネットさんがこっちに迫ってきている。
「シーナさん……! 主戦場から離れて、僕単独を狙いますか……!」
「お前さんを落とせばもう勝てる……とでも思っているみたいだな。どうする? 距離を取るか?」
「いえ、イヴさんはいち早くメインシップに戻るべきです。本隊の衝突が激しい。本来の操舵手でない人にこれ以上舵を握らせるのは危険です」
「了解。落とすぞ!」
「はい!」
僕はイヴさんのバイクから降りる。イヴさんは大きく迂回してメインシップを目指す。
シーナさんとガーネットさんは脇目も振らず、僕に向かってくる。
「また1対2ですか」
シーナさん達との距離、1.2km。
「やるしかないか!」
スタークで弾をばら撒きつつ、全開でスラスターを回す。
コロニーを出る時にEN瓶は飲んできたからENに問題は無い。出し惜しみは無しだ。
「やっと君をどっかーんできるねぇ!」
「さすがのあなたでも、我々を1人で相手することはできないでしょう?」
2人の射程に入った。同時に、僕のアステリズムの射程にも2人が入る。
大量のミサイル、それにシーナさんの狙撃が飛んでくる。アステリズムでミサイルを撃墜しつつ、ウィングで宇宙を駆け回り、最後は宇宙に漂う壊れた衛星でミサイルを防御する。
「――残念だったねぇ。1人では無いさ」
シーナさんとガーネットさんの背後に迫る影が1つ。
当然、シーナさんとガーネットさんもレーダーで気づいていることだろう。来襲者による背中へのチェーンソー攻撃を2人は上に飛んで躱す。
チェーンソーの使い手――ロゼッタさんは僕の横まで飛んでくる。
「ロゼッタさん!? だ、大丈夫なんですか? ここに居て……」
「仕方がない。間違いなく、ここが戦場で1番の要所だからね」
本隊が心配だけど、正直助かった。
「そうきましたか」
「ははっ! 総指揮官同士が前線でぶつかるとは馬鹿げているねぇ!」
「うおおおおおっ! 盛り上がってきましたぁ!!! どっかーん!!!」
「ううぅ……色々な意味で難しいメンバーですね……」
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