第228話 オケアノスvsフリーパーチ開幕
9月21日、代理戦争第三回戦当日。試合開始10分前。
僕はスピカ・セーラスのサブモニター室からスタジアムの様子を見ていた。
スタジアムの中央ではイルカの被り物をしたお姉さんが例の如く盛り上げている。
『さぁさぁ遂に代理戦争も第三回戦! 後半戦に突入でぇす!! 現在全勝中の火緋色金とオケアノスは今日も勝てるのか! 注目のカードは――』
「シキ」
気怠げな声が僕を呼ぶ。
「調子はどうだ?」
声の方を向くと、いつものように眠たそうな瞳のイヴさんが居た。
「バッチリです! 今日はなんだか、漲っています……!」
次の戦いはやることがシンプルだからか、肩に余計な力が入っていない。
いつもより視野が広い、明るい。思考もクリアだ。
「そりゃよかった」
「珍しいですね。こっちに居るなんて」
いつもは格納庫か喫煙所に居るのに。
「いや、ソルニャーのやつを探していてな。見なかったか?」
「ソルニャーならさっき、そこの扉の先の廊下を歩いてましたよ。牛丼食べながら『ソルニャ~探~検~隊~~~♪ 今日も頑張るにゃ~~~♪ たまね~ぎは~~いらないにゃ~~~♪』って歌ってました。きっと戦艦の中を探検してるんですね」
「アイツ日に日に自由になっていくな……もういい、放っておこ」
イヴさんは僕の横に立つ。
2人で正面のモニターを見る。
「大きな戦いの時は毎回イヴさんと一緒ですね」
「まさかお前さんとここまでの関係になるとはな」
「あはは……最初は土下座してましたね、イヴさん」
「思い出させるな。あん時は切羽詰まってたんだよ」
「あの時、イヴさんのお願いを聞いてよかったです。あの一件以降は僕の方がお世話になりっぱなしで……なんか、すみません」
「いいよ別に。あたしも相応の報酬貰ってるし。戦艦動かすのも面白いしな」
イヴさんが味方に居ることがどれだけありがたいことか。少なくとも、メインシップの操舵においては他コロニーに確実に有利が取れている。これは大きな利点だ。
「ま、今回も暴れてくれよ。エース」
「エース!? ぼ、僕がそんな滅相も無い。第三回戦のエースはイヴさんですよ」
「は? なに寝言言ってんだ」
「六仙さんも言っていたではありませんか。フリーパーチの操艦レベルは低いと。艦隊戦においては圧倒的にこちらが有利なんです。イヴさん暴れ放題ですよ」
フリーパーチの一回戦、二回戦の動画を見たけど、戦艦のレベルはやはり低かった。ブリッジで連携がとれていないんだろうね。特に足回りは酷かった。
「最も局面を動かせる人物をエースと呼ぶなら、第三回戦のエースは僕でもラビちゃんでもロゼッタさんでも無く、最高の操舵手のイヴさんですよ」
イヴさんは照れくさそうに頬を掻く。
「ないよ。ないない。あたしがエースってガラかよ」
照れてるイヴさんはシンプルにかわいいなぁ。
「あーあ、急に部屋が静かになりやがった……スタートが近いな」
ホントだ。急に静かになった。
さっきまで和気あいあいとしていたのに、一斉にシュン……と口を閉ざしてしまった。試合開始が目前に近づいたからだと思う。みんな、緊張している。
「うぅ……この緊張感、苦手です……」
僕は手首に巻いてあるリストバンドを見る。
今回も僕はサブシップ・アスター2からのスタートだ。アスター2は戦闘開始早々本陣から離脱し、孤立する。そして敵の主力であるガーネットさんもしくはクレナイさんを誘い込み、僕が討ち取るという算段だ。
「エースなんて役目は御免被るけど、いつの間にかメインシップが落とされてました~……なんてことにはさせないから安心しな」
「十分過ぎるお言葉です。おかげで前を向いて行けます」
相手のエース級さえなんとかすれば、イヴさんが操縦するメインシップが落とされることは無い。
うん。やっぱり、今回はやることがシンプルだ。僕はただ相手のエース級を落としまくるだけ。
「きた」
青い雷が体に走る。
景色が変わる。僕はアスター2の格納庫に転送された――のだが、
「あれ!? まさか――」
感覚がおかしかった。
体が、浮いた。
「この感覚は……!?」
重力が、無い!?
『ステージ名・宇宙8。戦闘開始します』
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