第226話 おんぶにだっこ作戦
9月20日、代理戦争第三回戦前日。
オケアノスチームはスピカ・セーラスのメインブリーフィングルームに集まっていた。
六仙さんとロゼッタさんを筆頭に、各戦艦の艦長、副艦長、操舵手、オペレーター。加えて僕やラビちゃんのような特殊な戦力。合計70名が揃っている。
薄暗い大部屋だ。部屋の前方にある超大型モニターの輝きと、それぞれの席にある小型モニターの輝きで視野は確保できている。
僕は1番後ろの席。一方で六仙さんとロゼッタさんは全員の前に座っている。超大型モニターの前で僕らと向かい合っている。
なんというか、好きな雰囲気だ。ロボットアニメの決戦前って感じで、少しワクワクする。
「まずいことになった」
六仙さんのそんな不穏な言葉から会議は始まる。
「とある筋の情報によると、次のフリーパーチ戦にシーナ君が出て来るらしい」
僕が教えた情報だ。
「これまでフリーパーチは戦術を立てずに他コロニーに対抗できていた。そのフリーパーチが間違いなく次に限り戦術をもって挑んでくる。これまでの戦いとは比にならない激戦が予想されるだろう。集中して話を聞いてほしい」
六仙さんはモニターに5人のプレイヤーを映し、立ち上がる。
「よく頭に叩き込んでくれ。これがフリーパーチの主力メンバーだ」
シーナさん、ニコさん、クレナイさん、ガーネットさん、ペテルさん。計5人がモニターには映っている。
六仙さんは親指で背後のモニターを指さす。
「このメンツを削るほど、フリーパーチの戦術の幅を大きく狭めることができる。時には、この5つの首にはそれぞれサブシップ1隻分の価値があると考えていい」
場がざわつく。
サブシップの価値はメインシップの次に高い。1プレイヤーとは本来比べることすらできないものだ。
だけど六仙さんはこの5人のプレイヤーに限ってはサブシップを捨てても倒す価値があると言った。思い切った発言だ。
「重要度で言うと、シーナ君がS、ガーネット君とクレナイ君がA、ニコ君がB、ペテル君がCってところか。シーナ君は総指揮官だから当然1番に落としたい相手。次にガーネット君とクレナイ君だが、彼女達は対艦能力が非常に高く、野放しにすると単騎でサブシップを落としかねない。要注意だ。ニコ君とペテル君は対プレイヤーに特化している分、対艦能力には難があるため優先度は下がる」
ツバサさんはペテルさんが1番厄介だって言っていたけど、六仙さんは逆の評価なんだ。
「この5人をどう潰すかだね」
ロゼッタさんが同調する。
「その通り。一方で敵戦艦の能力はそこまで恐れる必要は無い。戦艦のパワー・スピード・テクニックどれも全コロニー中最下位だろう。逆にこちらは戦艦に関しては最上位レベルだ。とにかくフリーパーチはプレイヤー。特に上位3人をいち早く排除したい。上位3人の内1人でも排除できればかなり楽になる」
「シーナ君、ガーネット君、クレナイ君の3人の中では、1番落としやすいのはクレナイ君か」
「ああ。こちらのエース級をぶつければ高い確率で落とせるだろう」
六仙さんは僕に視線を向ける。
「作戦はシンプル。エース級を乗せたこちらのサブシップ1隻を孤立させて、クレナイ君もしくはガーネット君をおびき寄せる。あとはサブシップに潜ませていたエース級プレイヤーをぶつけるだけ」
六仙さんは役目を終えたのか、席につく。すると、僕の席に付いている小型モニターにメッセージが届いた。
メッセージには『エース級=キミ』と書いてあった。六仙さんからのメッセージだろう。まったく、エースなんて大げさな。
「あとは頼んだよ。ロゼッタ君」
「命令するな。やる気がなくなるだろう」
ロゼッタさんが立ち上がる。
「さて皆さんお待ちかね。ここから楽しい楽しい奇策の時間だよ~」
全員の顔色が悪くなる。
「まずはフリーパーチの基本戦術についておさらいだ。フリーパーチは連携を取らず、個々で仕掛けて撃墜していくスタイル。シーナ君が頭になったところでこの基本は変わらない。フリーパーチの連中にこれ以外のことをやらせても上手くいかないからね。持ち味を潰してしまう。色々と小細工はするだろうが、戦闘になればタイマンスタイルでくるだろう」
ロゼッタさんが指を鳴らすと、大型モニターの画面が切り替わった。
「フリーパーチと火緋色金の戦闘シーンだ」
モニターに両軍の小隊が映る。
フリーパーチの10人部隊と火緋色金の10人部隊がぶつかる場面だ。フリーパーチの人達は全員同時に突っ込み、全員別々のターゲットに仕掛けていく。
「火緋色金は連携で対抗しようとしたものの、フリーパーチの苛烈な攻めに耐え切れず、ご覧の有様だ」
ばらけ、10個の1対1が生まれる。
酷い。ぐちゃぐちゃの乱戦だ。
「こうなってしまえば相手のペースだよ。火緋色金の連携力は我々よりも上だ。その火緋色金がこうなってしまった。つまり、我々が如何に連携を頑張ったところで無駄というわけだ。確実にばらされ、各個撃破されてしまう」
個でも勝てない。集団でも勝てない。
「ならばどうするか。吾輩が出した答えがこれだ」
モニターに、3m程のロケット(?)が映る。
「名付けて、『おんぶにだっこロケット』~」
な、なんだそれ。
「このロケットにはスペースガールのスラスターを接続できる接続口が3か所ある。3人のスペースガールがスラスターをロケットに連結すると起動する。このロケットはスペースガールからEN供給を受けることで、高速で飛び回ることが可能。強力に連結しているため、外部からは解除できない。引き離される心配はなし! 背中合わせになっているから死角も無い。ロケットのスラスターで高速移動しながら弾をばら撒けるわけだ」
な、なんて馬鹿げたTWだ……。
1つのロケットにスペースガール3人をくっつけて、バラせないようにしただけ。絶対に個vs個にはならない。ならないけども……、
「アホらしいと思うだろう? けれど、理論上これはかなり効くよ。最高速に達したロケットは単独で捉えるのは無理だ。連携すれば捕まえられるだろうけどね。け、れ、ど、フリーパーチは連携ができない。想像したまえ」
モニターにCGで作られた3人小隊が2つ映る。
2つの小隊は向かい合っている。
「こうやって我々とフリーパーチ、3対3の図式になったとする。当然、フリーパーチは我々を引き離そうとこう近づいてくるわけだ。そこで、我々はおんぶにだっこロケットを起動。3人で固まって動き出す。さて! フリーパーチはどうすればいい? 下手な連携で囲むか、単独で追跡するしか無いだろう。3人で囲いに来たならロケットを装備したまま弾をばら撒けばいい。単独で来たなら、集団から引き離したところでロケットの連結を解除。3対1で囲み撃破すれば良し。簡単だろう?」
ううぅ……絵面はダサいけど、まぁまぁ効果的っぽいのが怖い……。
「基本戦術はこれで潰す。君達なら3時間程度でこのTWをものにできるはずだ。機兵戦で拮抗できれば、戦艦勝負に持ち込みやすくなるだろう。サボらずに練習してくれ。次に、ラビ君」
「んにゃ?」
ラビちゃんは床にマットを敷いて、なぜかヨガをしている。
それ、仮想世界でやって意味あるの?
「今回はサブシップを落としてもらうよ」
「お任せあれ♪」
「前回使った手は100%対策されているためメインシップへの侵入は不可能、けれどサブシップ程度の防衛レベルなら簡単な手順で崩せる。どこかのタイミングで敵サブシップにミサイルを撃つから、君はそのミサイルの1つに乗って敵艦に接近。ミサイルは戦艦用シールドピースに着弾すると同時に煙幕を発生させるから、君は煙幕に紛れシールドピースに張り付くんだ」
「OK。敵のサブシップがシールドピースを戻すのに合わせて戦艦に飛び移ればいいんだね」
「ああ。適当な所から侵入してね。格納庫だろうが非常口だろうが好きな所からどうぞ」
「レーダーはどうやって誤魔化すの?」
「サブシップのレーダーレベルなら攪乱粒子を撒けば誤魔化せるだろう。フリーパーチの技術レベルなら粒子除去もできないだろうしね」
ロゼッタさんが六仙さんに視線を送る。六仙さんは小さく笑い、立ち上がる。
「あと2戦だ! あと2戦勝てば我々は未知の惑星を冒険することができる! ……新しい銃、新しいサーベル、新しいシールド……まだ誰も見たことの無いシークレットアイテムを独占できるんだ。後半戦、気合入れていこう。そして証明しよう! 我らがコロニーが最強であると!!!」
わああああああああああああああっっっ!!!! と歓声が上がる。
さっきのロゼッタさんの視線は『士気を上げろ』って意味だったんだね。
その後、細かい打ち合わせをして会議は終わりとなった。部屋が明るくなる。
「シキ君」
六仙さんがわざわざ僕の席(最後列)まで来て話しかけてきた。
「は、はい。どうしました?」
「……少し内密な話なんだけど」
「?」
僕と六仙さんは小部屋に移る。
部屋に着いて早々、六仙さんはテーブルに腰掛け、開口一番。
「ミフネ君の消息が掴めない」
ミフネさん。
元々メインシップの艦長を務めていた、八刀流のアタッカー。
「何か知らないかい?」
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