第223話 記者ギンガと2つの星
私の名前はギンガ。現実では漫画家、ゲームの世界では記者をやっている。
このインフィニティ・スペースで記者をやっているのはひとえにネタ集めのためである。この世界では個性豊かな女の子が大量に存在する。怪盗だったり、侍だったり、クイーンだったり。この前は武田信玄の生まれ変わりを自称する女の子に会った。ネタに事欠けない。
これだけプレイヤーがフリーダムなのはきっと異性が居ないことが大きいのだろう。異性の前じゃ猫を被る女子達も、『女子だけなら』という理由ではっちゃけている。
異性の居ない仮想世界、オタク気質の日本人が多いからか個性が尊重される環境、ロボットであるという設定から改造し放題の体、自由度の高いシステム。これらの要素がガッチリとハマった結果……変人女子だらけの花園が出来上がった。
マジ神ゲー。仕事の息抜き&ネタ集めに使えるとか最高過ぎる。
さてさて、今の私の仕事はあるチームの記事を作ることだ。
先ほど記事の許可を頂いたチーム……名は『クレイジー・バレット』。
先のE級ランクマッチにおいて個人キル数のベストスコアとチームキル数のベストスコアを叩き出した怪物チーム。他にも幾つかの記録(ヘッドショット撃破数、チーム総与ダメージ量等)をたった一戦で更新した。
中でも気になるのはリーダーのシキ。いま話題のプレイヤーだ。
「ダメですね~。ラビとロゼッタの記録は全く無いです。確実に誰かに保護されてますよ。これ」
隣のデスクで部下のスバルが背中を伸ばす。
現在、私は事務所で作業している。ちなみに事務所は古びたオフィスビルの3階にある。
「そっか。イヴァンはどう?」
「イヴァンのデータは取れました。けど、平凡な運搬屋って感じですね」
「やっぱり、記事の大部分はシキでいくしかなさそうだね」
本人達に取材を申し込んだが却下された。流石に無理か。
私はシキの足跡の全てを洗い出す。休息を挟みつつ、ゲーム世界で3日の時間を費やした。この3日間は楽しかった。シキという人間が辿ってきた道が面白くて、あっという間に時間が過ぎてしまった。
彼女の最初の足跡は『金の惑星』で見つかった。金の惑星のカジノの監視カメラに、彼女の姿が映っていた。彼女はカジノにある射的にて最高難易度の景品を2連続で落としていた。興味深いことに、その時後にC級ランクマッチで熱戦を繰り広げるツバサと話していた。様子を見るに、2人は友人関係にあるようだ。
さらにその後、金の惑星では『金兵党』というチームが大量に正体不明のプレイヤーに掃討されていた。確証は無いけど、これにもシキが関わっている可能性がある。今の活躍を考えれば、シキならばアーミーをたった1人で倒せてもおかしくはない。現にシキが金の惑星に数日間(現実時間基準)滞在していた記録が残っている。
次にシキが表舞台に現れたのはC級ランクマッチ。恐らく、これでシキを認識した人間も多いだろう。元ユグドラシルのシーナのチームメンバーとして参加し、この戦いでも単独で19キルを記録している。さらに最強のガードナー・ツバサを単独で撃破した。この時点でかなり注目されてもおかしくないけど、C級のランクマッチだったからか、まだこの時の彼女の影は薄い。
C級ランクマッチの後、彼女はオケアノスに拠点を移す。そしてなんとシキはラビリンスとのキス写真を流出させたのだ。懐かしい。この写真を撮ったのは当時ラビリンスを取材していた私だった。ちなみに、ラビリンスは怪盗の癖に私のインタビューに答えたり、活躍を撮りやすいようにと逃走経路すら事前に教えてくれた。おかげであのキス写真を撮れたわけだが……。
「待てよ……もしかして、ラビって……」
……今は置いておこう。
ラビリンスはこの時、トライアドの奪取に失敗。後日、再度盗みに入るがこれも失敗しオケアノス軍に捕縛された。2度目の盗みの際にはまったく関与させてくれず、私は現場を見られなかった。表の情報ではオケアノス軍の兵士が彼女を捕えたとなっているが、もしかしたら……。
「恐ろしい経歴だ……」
次に彼女はロゼッタを単独でねじ伏せ、その次は代理戦争にて1人で形勢を逆転させる。それで、今度はE級ランクマッチで記録更新。
まさに新星……いや、超新星。スーパーノヴァだな。
彼女の経歴を洗ったところで、私は彼女に関係する人物に取材をした。
シキの友人Kは彼女についてこう答える。
「修羅だな」
Kは小さく笑う。
「それは一体どういう意味でしょうか」
「戦いを望み、戦いに興じる獣という意味だ。常に血肉を求め、暴れている。戦う様はまさに獅子奮迅」
「なるほど。野獣のような女性……ということですか」
「如何にも」
映像から見る印象とは大分違うな。
「しかしその実、内に秘めた殺意は機械の如き冷たさだ」
「機械のように冷徹、という意味ですか?」
「如何にも。1度スイッチが入ると容赦が無い。その慧眼で相手を丸裸にし、恐ろしい戦術で敵を嵌め、行動を封じ、無防備になった頭に弾を撃ち込む。受けもできるが、その攻めの苛烈さと言ったら他の業界でもあまり見ないレベルだ」
「かなり受け身なタイプに見えましたが、どっちかって言うと攻め……ドSなタイプということですか?」
「如何にも」
Kさんの次に取材したのはシキの愛人Rだ。
「シキちゃんと言えば……エロい!」
「それはつまり?」
「そのまんまの意味だよ。ターゲットを見つめるあの瞳、トリガーに掛かった指、流れる髪……全部がエロい!」
よく意味がわからない。
とりあえず『シキはエロい』と書いておくか。
「あと噂によると、頼りになる相棒が居るらしいね♪ その相棒がとびっきり可愛いらしいよ!」
「ほう。なるほど」
確かシキはオケアノスに移ってから高い頻度でイヴァンと関わっている。イヴァンがシキの相棒、ということだろうか。確かにイヴァンの容姿は可愛いロリキャラだ。
「好きな色は黒! チャームポイントはアホ毛! 好みのタイプは怪盗で~」
その後、愛人Rは嘘か真かわからない話を延々と続けたので、私は話の隙間を狙って質問をぶつける。
「……彼女の交友関係の中で、面白い方とか居ませんか?」
「面白い? いっぱい居るけど……」
「とびっきりのやつを聞きたいです」
私が詰めると、愛人Rは苦い顔をした。
「とびっきりねぇ……どでかいのが居るには居るけど、言いたくなぁい……」
「そこをなんとか!」
「ぬぐぐ……仕方ない。えっとね、シキちゃんは白い流星と仲いいよ……多分」
思わずメモを取る手が止まる。
「え!? 白い流星と!? ……ビッグニュースですね。期待の超新星と白い流星に関係があったとは」
「まぁ事実のほどは知らんけどね」
そろそろ取材の時間が終わってしまう。
せっかく面白い話題が飛び出してきたのに……残念。次で最後の質問だ。
「では最後に、あなたはシキさんのどこが凄いと思いますか?」
「『執着心』」
Rはそう言うと、瞳を暗くさせた。
「ターゲットを撃ち抜きたい。その欲が他のスナイパーとは一線を画している。1度狙われてしまえば、どこに逃げても追い詰められ、撃ち抜かれてしまう」
ゾク。と鳥肌が立った。
「でも普段はハリネズミのように臆病で、可愛らしいんだよ。そのギャップがあの子の魅力だね」
Rはそう締めくくった。
「さて」
私はデスクで記事をまとめに入る。
記事の作成は順調に進んだ。書きたいことが多すぎて、文章を絞る作業がちょっと大変だったくらいだ。
最後――見出しの部分で私は手を止めた。
「あれ? どうしたんですか編集長? 難しい顔をして」
「異名をどうするか迷ってね」
「ああ……編集長、プレイヤーに異名つけるの好きですもんね」
「好きというか、やはり見出しにした時にインパクトがあるからね」
これだけ特徴のあるプレイヤーだと選択肢が多くて悩む。どの要素を切り取ろうか。
「そういえば、白い流星と関係があると言っていたなぁ……」
白い流星に絡めて考えるか。
シキは黒い服を着ていて、ライフルのレーザーも黒色だ。白に対抗して黒を付けよう。
それに星の要素も絡めて――
「よし、決めた。シキの異名は……」
『黒き明星』。
黒く輝く強い光。
うん。これでOKっと。
「いつか邂逅すると面白いんだけどね。白と黒、流星と明星が……」
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毎日のように眺めています。この小動物感、まさしくシキ。顔を拡大するとさらに小動物感が増します。細部が凄く描き込まれているため、色んな所を拡大してみてください。このシキが書籍内では色んな表情を見せますよ~。早く手元に本が欲しい!
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