第221話 シーナの提案
「負けたぁ~! 惨敗だぁ~!」
クレイジー・バレット、オペレーター室。
ラビちゃんはバンザイしてソファーに寝転んだ。
「いや、勝っただろ。優勝じゃないか」
イヴさんが冷静に突っ込む。
「そっちじゃないよ! 個人成績! シキちゃんにダブルスコアで負けてんじゃん!」
「こればかりは運だから仕方ないよ」
僕は笑って誤魔化す。
「射程の問題もある。むしろダガーのみでよく15キルもできたものだ」
ロゼッタさんの仰る通りだ。
数キロメートル先の相手を狙える僕とは違って、ラビちゃんはほぼゼロ距離まで近づかないといけない。キル数を競うのなら、この差は大きい。
「優勝祝いにほれ、1杯やろうぜ」
イヴさんはワイングラス4個を右手の指に挟んで持っている。左手には赤い液体の入った瓶だ。
「イヴさん、お酒はダメですよ」
「わかってるよ。ジュースだ。ぶどうジュース」
イヴさんはテーブルにグラスを置き、グラスに瓶の液体を注ぐ。僕らはそれぞれグラスを持つ。
「リーダー。掛け声よろしく」
「え!? は、はい……しょ、初戦、快勝、お疲れ様です……か、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
僕らはグラスを合わせ、ドリンクを飲む。豊潤で甘いぶどうの味が口の中に広がる。
「これで私達のチームランクはDになったんでしょ?」
「ああ。チームデータを確認したがきっちり上がっていたぞ」
滑り出しは順調だ。
「しかし、かなり目立ってしまったね。これは外野が黙っていないぞ」
ロゼッタさんが忠告すると同時に、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「お客様ですね……」
出たくないけど、僕が1番扉から近い……。
「ぼ、僕が出ます!」
僕は立ち上がり、部屋の扉を開ける。扉の先から現れたのは5人のスペースガール。その内の3人は知っている人だ。
「こんにちは。シキさん」
「初心者狩りお疲れ様」
「よっ! シキ!」
「シーナさんにニコさんにクレナイさん!? ど、どうしてこちらに?」
「敵情視察というやつです」
5人を部屋に招き入れる。
「……」
1人、フードを深く被った隈の凄い人が僕をジッと見つめてきた。
「あ、あの……?」
「ペテルです。はじめまして」
ペテル……って、もしかして、
「仕事人のペテルさん?」
「はい。よくご存じで」
黒い髪で、低い声で、ボーイッシュで、落ち着いていて……なんだろう、この人。『怖さ』を感じない。
「ねぇねぇ!」
「うわぁ!」
僕とペテルさんの間に、なにやら元気溌剌な女の子が割り込んできた。癖だらけのオレンジヘアーで、花模様の瞳孔をした人。ペテルさんとは真逆の雰囲気。
「どっちが好き?」
「どっち、とは?」
女の子は2枚の写真を見せてくる。
片方は、最近のアニメの爆発。
もう片方は、昔のアニメの爆発だ。
「こ、これ!」
僕は昔のアニメの方を見て、つい大声を出してしまった。
「金多さんのやつですよね!? 80年代90年代を代表するアニメーターの! このデフォルメ加減がほんっとに凄い……」
僕が言うと、女の子は目を輝かせ、
「わかるじゃんきみぃ!! じゃあこっちは誰のかわかる?」
「佐崎さんですよね? 爆風の描き方に特徴があるからわかりやすい!」
「じゃあこっちは!?」
「橋元さん! 僕、この人のエフェクトめちゃくちゃ好きなんですよ!」
「なんでコイツら50年以上も前のアニメがわかるわけ?」
「知りませんよ……」
ニコさんとシーナさんが呆れている。
ふふ……わかっていませんね。素晴らしい作品に賞味期限は無いのですよ。
「お……おぉ!」
女の子は興奮し、僕の胸に飛びついてきた。
「きみ! ロマンわかってるぅ!」
「え? えぇ??」
「爆発はロマンだよ♪」
見知らぬ人に抱き着かれ、動揺する僕。
「このクソガキぁ! 誰の許しを得てシキちゃんに抱き着いているかぁ!」
と、ラビちゃんが女の子に手を伸ばすけど、女の子は僕を盾にして手を躱した。ラビちゃんの手は僕の胸を掴む。
「ほう。これは事故……ゆえに仕方なし」
(今の身のこなし……)
早いし、無駄がない。
と、僕が冷静に分析しているのに、ラビちゃんは構わず右手をモミモミと動かすので、
「いてっ!」
「もうっ……!」
チョップを脳天に下した。
「き~めた!」
女の子は僕から離れ、右手で銃を作り僕に向けた。
「きみは、ガネちゃんがどっかーんとさせてあげるねっ!」
「え?」
「どどどどどどど、どっかーん!!」
女の子ははしゃぎ回り、部屋を出て行ってしまった。
「に、ニコさん……なんですか、あの人」
「前に話したでしょ。アレがガーネットよ。ああ見えて、実力は本物だから」
ガーネットさん。確か、花火師の異名を持つボマー……あの人が??
「シキさん、初戦優勝おめでとうございます」
シーナさんはそう言って、右手を差し出してくる。
「シーナさん……ありがとうございます!」
僕はシーナさんの手を取り、握手する。
「あなたがチームを抜けてからずっと、あなたの作るチームを楽しみにしていました。あなたらしい、フリーダムなチームですね」
「あはは……チームを作ったのはいいですが、まだ何も、チームらしい動きができていません。チームワークって難しいです。今回は最後まで個人プレイ頼りで……」
「手を取り合うだけがチームワークというわけでもありません。個々の能力を信用した結果、別れて行動したのならそれもまたチームワークです」
上手いこと言ってくれるなぁ、シーナさん。
「それで。敵チームが吾輩達になんの用かな?」
釘を刺すようにロゼッタさんは聞く。
「1つ、ご提案がありまして」
シーナさんの瞳が妖しく輝く。
「1人居なくなってしまいましたが、どうでしょう。ここに居る4人と、そちらの3人で、模擬戦をしませんか?」
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