第220話 ベストスコア
チーム数34 出場者数102名
2047年 9月 第4期(CZグループ) E級ランクマッチ
現在、上記ランクマッチにて、前代未聞のことが起きていた。
試合開始15分で、とある1チームの合計キル数が40を超えたのだ。
観戦部屋にあるモニターの90%がそのチームを映していた。
「アイツら誰?」
「スナイパーの子見たことあるよ。ほら! 代理戦争の!」
「上に連絡しろ。オケアノスの主力だぞ多分」
「これさ、マジで半分以上1チームで倒すんじゃないの?」
「あり得ないでしょコレ……合流もしないでさ……」
「チーム名は――『クレイジー・バレット』。知らないわね」
シキ27キル。
ラビリンス(登録名ラビ)12キル
ロゼッタ7キル
合計46キル
残り人数は31名。
「間に合いましたね」
噂を聞いたシーナは仲間を連れフリーパーチからスペースステーションexルームに移動していた。A~C級のランクマッチはexルーム外にも中継されているが、E級のランクマッチは中継されていない。なので直接足を運ぶしか無かった。
シーナはモニターに大きく映るシキを見て、微笑んだ。
「遂にチームを作りましたか。しかも全員が精鋭……合計で46人も倒すとは、恐ろしいですね」
「相手E級でしょ? 別に運良くエンカウントしまくればこれぐらいいくでしょ」
「ニコさん、気付きませんか?」
「? 何によ?」
シーナの問いにペテルが答える。
「奴ら、武装を1個しか使っていませんね」
「はぁ!?」
「オレもいま気づいたぜ。壊れても無いのにウィングを使わない理由が無い。ピースも使っていない。間違いなく、武装を縛ってやがるな」
「な、なんでよ!? 舐めプ?」
「恐らくは武装の情報を漏らさないためでしょうね。事実、ここまで武装を縛られると、フル装備の時とは動きが別物になってしまう……参考にはなりません」
ガーネットはその花柄の瞳孔を光らせる。
「武装1個で最高キル数を狙うなんてぇ! ロマンだね!!」
「最高キル数っていくつだっけ?」
「個人では33、チーム単位では49です。このままいくと、どちらも更新する可能性がありますね」
シーナはシキの動きに注目する。
「ニコさん。スナイパーにとって、最も大切なモノとはなんだと思いますか?」
「なによいきなり。私はスナイパーの対極よ。わかるわけ無いじゃない」
「適当でいいですよ」
ニコは暫し考え、
「……そりゃやっぱり、射撃の腕でしょ」
「ふふっ。まぁそう考えますよね」
「なによムカつくわね。他に何があるのよ!」
ニコは肘でシーナを小突く。
「私は2人のスナイパーに同じ質問をぶつけたことがあります。1人は六仙さん、もう1人はシキさん。どちらも私が知る限り、3本の指に入るスナイパーですが、2人とも、スナイパーにとって最も大切なモノは射撃の腕とは答えなかったのです」
「なんて答えたの?」
「六仙さんは『位置取り』と答えていました。たとえ1発も当たらずとも、ベストな位置を取り続けられるスナイパーはチームに貢献できると」
ニコは首を傾げる。
「それはなんとなくわかるな」
クレナイが同意する。
「しつこく死角を狙ってくるスナイパーが居ると、それだけで目の前の敵に集中できなくなるからな。どうしても動きに制限がでてくる」
ペテルも頷く。
「相手にプレッシャーを与えられ、戦場を俯瞰でき、狙われても逃走できるポジションを取り続けられるのなら……置物でも価値はある」
ニコは首を横に振る。
「微妙に理解できないわね。弾当ててこそのスナイパーでしょ。それで、シキはなんて言ったの?」
「シキさんはこう言いました」
シーナはその時のことを思い出し、頬に冷や汗を浮かべる。
「――『想像力』」
「想像? イメージ?」
「スナイパーは指よりも脳を動かすロールだと、シキさんは言っていました」
シーナは自分の頭を指で叩き、
「シキさんはターゲット1人を撃ち抜くために、いつも20以上の展開を想像しているらしいですよ。ターゲットを撃ち抜くまでの道筋を、20パターン用意しているそうです」
「20!? 無理無理。そんなのでまかせよ!」
「誇張している可能性は否定できませんが……もし本当だとしたら怖いですよね。相手側は、彼女の想像する20の勝ち筋全てを躱さないと、勝負にすらならない」
ニコはつい、息を呑む。
「今の私の話を踏まえて、シキというプレイヤーを観察してください。彼女と『勝負』をしたいのでしょう?」
「……はいはい」
ニコは真剣な眼差しでモニターを見る。
「凄いプレイヤーですね。確かにそれだけの戦術を用意していてもおかしくない。動きの1つ1つに意図を感じる。ただこれまでの戦闘を見るに、戦術のパターンは大きく3つ程に分けられますね」
ペテルはシキの映像を見つめ、
「常人にはできない超人技を披露し、相手を動揺させ、その隙に撃墜。自分以外の他の要素に意識を誘導し、その隙に撃墜。まず弱い攻撃をヒットさせ相手を怯ませて、本命の攻撃で撃墜。高確率でこれらのパターンです。驚異的な射撃能力の影に隠れていますが、この人は……格段に『崩し』が上手い」
「その通りです」
ペテルは何かを思いつき、考え込む。
ペテルの様子を見てシーナは「来た甲斐がありましたね」と呟いた。
「終わったわよ」
部屋中に歓声が響き渡る。
E級ランクマッチ終結。優勝――クレイジー・バレット。
シキ35キル
ラビ15キル
ロゼッタ9キル
合計59キル
個人キル数及びチームキル数歴代最高記録更新。
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