第219話 復活のレイドボス(再)
コロニーの中には僕を除いて12人。
3・3・3・1・1・1と分かれている。
3人で固まっているのは間違いなくチームだろう。3人チームが3つ、ソロが3つ。計6グループと考えていい。3つのチームはある地点に集まっている。
「……この3チームが派手に戦っていて、ソロの3人は戦いに巻き込まれないように立ち回っている感じかな」
僕はスラスターを使って中層ビルを駆け上がり、屋上からコロニーを俯瞰する。
このコロニーで1番背の高いビル。その屋上を1チームが占領している。
スナイパーチームだね。高所から3人で狙撃している。
そのスナイパーチームをなんとか崩そうと1つのチームが頑張っている。多分、射程の短いチームだ。ガードナーを前面に出して、何とかビルの中に入り込もうとしている。
その2チームから少し離れた位置に1チーム固まっている(視認はできていない。レーダーで確認)。漁夫の利狙いか、それともビル攻略チームが狙撃チームに隙を作るのを待っているのか。
基本、こういう銃撃戦メインのゲームでは高所を取るのが有利。視野が広く、それでいて射線が通りやすい。高所の人間は低所の人間に対し広い選択肢を持つけど、低所の人間が高所の人間に対して取れる選択肢は狭い。
今回の場合、攻略チームの選択肢はビルに侵入して屋上まで駆け上がるか、あるいは近くの中層ビルの屋上からスラスターで高層ビルの屋上まで飛ぶか、大体その2択。攻略チームはビルへの侵入を試みているっぽいけど、ビルの中は狭いし、バズーカとかグレネードで天井を崩されるときつい。どう展開しても狙撃チームが有利。
だけど、たった1人でも懐に潜り込めれば……相手はスナイパーしかいないチームだ。崩せるかもしれない。
このコロニー内のプレイヤーは如何にあのビルを奪取するかを考えている。
逆にいえば、あのビル以外に対する注目度は低い。
(まずはあの3チーム以外。あぶれている人間を刈り取っていこう)
やることは暗殺だ。
レーダーに映ったあぶれプレイヤーに対し、251m以上の距離(強化レーダーの索敵範囲かつ通常レーダーでは捉えられない距離)を保ちつつ、射線が通る位置に移動し、撃つ。
1機、また1機と、中心の3チームに気づかれないように狙撃し、撃ち抜いていく。
ただ3機目を撃ち抜いたところで、3チームの動きが止まってしまった。アイコンが急激に減ったら気になるよね……。
(僕の動きに気づいたか。ならば)
餌を上げよう。
僕は電柱の上に飛び乗り、例の高層ビルの屋上に狙撃銃を向ける。
屋上にある貯水タンクから、顔の半分をはみ出している子。その子の側頭部を撃つ。
狙撃は成功した。問題なく撃破。
スナイパーゆえに装甲値は低く、この距離(2.322km)でも1発で頭部を破壊できた。
これであのスナイパーチームに淀みが生まれる。このチャンスを他2チームが逃すはずが無い。
ビル外の2チームは同時にビル攻略へと乗り出した。
その隙にコロニーに新しく入ってきた2人組を狙撃で撃墜。僕は電柱の上から道路に降りる。
「!?」
背後で物音。体の向きを反転させる。
距離10m地点にある自販機の影に、誰かが飛び込んだのが見えた。
(スカウターかな。僕のレーダーをすり抜けてきた)
けどギリギリで足音を鳴らしてしまったり、隠れる所を見られてしまう辺りまだまだ甘い。
僕は自販機を撃ち抜く。けど、手応えなし。
「あ」
しまった。スタークが今のでEN切れになった。
EN残量もランクマッチ外とは違うんだ。忘れていた。外で使う時と同じ感覚で連発してしまった。
僕はスタークを充電モードにしデータ化。
消費アイテムのグレネードを実体化させ、ジャケットの懐に忍ばせる。
僕の右方向にある鉄骨造りのビルの外階段から、黒装束の女の子が飛び出してきた。右手にはサーベルを、左手にはハンドガンを持っている。
まず相手は空中でハンドガンを連射してきた。僕はレーザーを回避しながら前進し、彼女が着地すると同時に距離6mまで近づく。
女の子はハンドガンで4度弾を放つ。僕は1発躱すごとに1歩進み、4発のレーザーを躱す頃にはサーベルの間合いに入った。女の子は慌ててサーベルを振り回すけど、僕は彼女の横薙ぎを屈んで躱し、スラスターで飛んで至近距離に接近。彼女のサーベルとハンドガンの持ち手をそれぞれ手で押さえる。
「なっ!? ……放してください!!」
ハンドガンの持ち手を押さえていた手をわざと緩める。すると女の子は僕にハンドガンを向けてきたので、引き金を引く刹那に彼女のハンドガンの持ち手を捻り、銃口を彼女に向ける。
「!?」
女の子は自らに発砲。顔面に弾を受け、衝撃で顔が仰け反る。
僕は懐からグレネードを取り出しピンを抜き、彼女の胸元に突っ込み、背負い投げで投げ飛ばす。その後、スラスターを使って急速で後退。
「うあ……!? ああぁ……!!?」
「0」
轟音が響く。
黒装束の女の子の服の中でグレネードが爆発し、黒装束の女の子は弾け飛んだ。
「中央はどうなったかな」
高層ビルの近くまで移動する。
ビル攻防戦では狙撃チームが思いのほか粘っていた。かなり他2チームに接近されているものの、ギリギリのところで牽制できている。ビルの入り口を死守している。どうやらスナイパーチームはバレットピースも使っているようだ。手数が多い。
ハッキリ言って、あのスナイパーチームと他2チームではかなりの力量差があるね。スナイパーチームの練度は中々だ。
「スタークの充電完了まであと10秒……」
せっかく集まっていることだし、まとめて頂こう。
「3、2、1」
充電完了。スタークを実体化させ、起き抜け1発。ビルの攻略のため、ビルに入ろうとしていた人の側頭部を撃ち抜く。
「ヘイトが移ったかな……」
攻略チームのガードナーの人が僕に狙いを定め、突撃を仕掛けてきた。
「でも、このタイミングでこっちに来ると……」
「さっきからコソコソとぉ……!!!」
僕に向かってきていたガードナーはマンション屋上からの狙撃により右足を吹き飛ばされた。
「つぅ……!?」
「さようなら」
バランスを崩したガードナーに対し、僕は速射モードで射撃を集中、撃墜する。
今度は屋上のスナイパーが僕を狙ってきたので、その狙撃を躱しつつ、コナちゃん流のカウンター狙撃で撃ってきた狙撃手の額を撃ち抜いた。
「あれ? いつの間にか1チーム消えてるね」
何をする気かな?
「この音……」
エンジン音が近づいてくる。
「車か」
ビルの横の道路。僕が居る道路に、車が1台踏み入る。
僕は車と向かい合う。
「3人全員乗ってるね」
僕はまず車の前面部分を撃ち抜く。けれど、起爆はしない。
前面を貫通した弾は運転席にいた人に着弾した。けれどデリートはできない。装甲に弾かれたようだ。ガードナーかな?
「フロントエンジンじゃない? じゃあこっちかな」
上に飛び、角度をつけて後輪の更に後ろ、車体後部を撃ち抜く。
車は爆発し、中に居た3人の内1人は爆散した。
「リアエンジンって珍しい」
それにしても真正面から車で突っ込んでくるって、まさかそれで轢けるとでも思ったのかな。初心者だね……うぅ、心苦しい。やっぱり初心者狩りだよね。コレ。
「まだまだぁ!」
「よくもリーダーを!」
焼け焦げた車から2人が脱出し、僕に向かって飛んでくる。車の爆破を喰らったせいで体はボロボロだ。
「!?」
屋上から狙撃。僕は首を振って躱し、コンクリートの地面に着地する。
背後に気配。神眼で周辺を俯瞰する。
僕の背後にサーベルを持ったスペースガールが迫ってきていた。攻略チームの最後の1人だ。
「これは……」
1対4の構図になっているね。
前の2人は銃を構え、背中に迫っている1人はサーベルを構え、屋上の人は狙撃体勢。
(緊張する……! けど、このレベルなら……!)
僕はバックステップを踏みつつ身を屈め、後方のスペースガールの袈裟斬りをノールックで躱す。
「はぁ!? なによそれ!!?」
その後素早くサーベルを振ったスペースガールの背後へ移動する。
「ごめんなさい」
「いや、ちょっ……!? 待――!!?」
屋上と前方から一斉射撃が飛んでくる。
僕はサーベル使いの体を掴んで飛んできた弾幕の盾に使う。サーベル使いの腕と両足が破壊される。サーベル使いの手を離れたサーベルを拾い、サーベル使いの首を背後から切断。
「かっ……!?」
「あとは……」
間髪入れず左手に持ったスタークで正面の2人のハンドガンを狙い撃ち破壊。その後前進し、2人のスペースガールの首をサーベルで切断する。
「え、なに、やられた!?」
「――ん、だよ!? コイツ!!!」
デリート。
「……相手から奪った武装は使っても大丈夫だよね……」
サーベルはその場に投棄する。
足を止めた僕に対しビルの屋上から狙撃が飛んできた。右足を引き、体を軽く傾けて狙撃を躱す。
「お返しです」
カウンターの狙撃で敵狙撃手の頭を撃ち抜き抜く。
「寸分狂いなし」
――21キル。
『シキ! 裏だ!』
背後で轟音が鳴った。
(この音、RPG!?)
音からして、距離は50mぐらいかな。
振り返ると、僕に向かって飛んでくるミサイルと、48m先の道路上で仰け反っているスペースガールが見えた。
発射音はRPGっぽい感じだったけど、よく見ると違う。
(ボマーなのにレーダーに映らなかった? まさか、ロールはボマーじゃなくてスカウターなのかな。だとしたらなんて珍しい……)
僕は空を飛び、角度を整え、相手とミサイルを1本のラインに据える。引き金を引き、弾を発射。ミサイルを貫き、奥の射手の顔を撃ち抜く――予定だったのだが、
「!?」
最初の目標、ミサイルが僕の攻撃に当たる前に自ら分裂した。ミサイルの中から大量の黒い塊が飛び出す。
(クラスターミサイル!?)
レーザー弾は相手の顔を撃ち抜きデリートした。
けれど、ミサイルに内蔵されていた子爆弾は僕の真下のコンクリートに炸裂した。
戦闘の余波で脆くなっていたのか、地面は容易く破壊され、穴が空く。穴からは宇宙が見える。
「やばっ!?」
大気が穴に吸い込まれていく。コロニー内の空気が宇宙に引っ張られていく。
僕はスラスターを吹かすけど逃げ切れず、宇宙に流れていく大気の奔流に巻き込まれる。
「うわあああああああっっっ!!!?」
まるで身動きが取れない。穴に吸い込まれる!
僕はあっという間に宇宙に弾き出された。その後でコロニーの穴はガムのようなもので塞がれた。
「……脆いですね。コロニーの地面」
『小さな穴でもできちまうとそこから大気が噴出して、その大気圧で亀裂がどんどん広がってドカン。地面が脆いというより、構造が脆いんだよ。スモールコロニーはな』
「なるほど……これ、巻き込まれると何もできないなぁ」
この感覚は忘れないようにしよう。
「イヴさん。人が集まりそうな所を教えてください」
『ちょい待ち。いま調べる』
今日は調子がいい。
このまま一気に勝負を決めてしまおう。
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