第218話 宇宙の戦い方
宇宙空間。もちろん、無重力の空間。
このスペースガールの体は宇宙にも対応しているけど、僕は今まで宇宙での戦闘経験が無い。仕様がまったくわからない。
「イヴさん! ヘルプです!」
『早速かよ』
オペレーターがいて良かった。今の僕は仕様について調べることができないから。
「僕、宇宙初めてで! 指南していただけると助かります!」
『マジか。宇宙戦ができるってのがこのゲームの醍醐味の1つなのに、宇宙を飛んだこと無いのかよ』
それは確かに。インフィニティ・スペースだもんね。
『まぁあたしも数回しか宇宙で遊んだこと無いけど。えーっとだな、とりあえずスラスターを吹かしてみ』
「は、はい!」
スラスターを使ってみる。すると、想像よりも速く動いた。しかもスラスターを切っても動きが止まらない。
『速いだろ? 宇宙空間では足場が無い分、スラスターに頼ることになる。だからスラスターの性能が高めに補正される。スラスターの加速力も、スラスターの持続時間も伸びる。けど注意点として、スラスターで体を停止させる時や進行方向を反転させる時はスラスターを多く消費するからな。気をつけろ』
制動に対するペナルティがあるのか。
「地上だと着地中にスラスターは回復しますが、宇宙空間だとどうすれば回復するのですか?」
『宇宙だと使っていない間に自動回復する』
僕はスラスターでブレーキを掛ける。イヴさんの言う通り、スラスターが多めに減った。
スラスターを停止させるとスラスターの回復が始まる。
これは……慣れるのに時間はかかりそうだけど、お、面白い……! 地上よりもスラスターをいっぱい使えるし、縦横無尽に動けるから楽しい!
(加速をつけていればスラスターを止めても体は止まらない。上手くスラスターを使えばずっと動き続けられる)
宇宙verスラスター機動の要領は掴めてきた。
『弾の軌道も変わるからな。地上よりも色んなモンが無いから真っすぐ飛ぶぞ。弾の速度も上昇する。この辺は試し撃ちで慣れるんだな』
「はい!」
僕はスタークを実体化させ、宇宙を漂うデブリや岩石を使って試し撃ちをする。
(スタークの速射機能は生きている。弾の速度は落ちているけど、これはレアリティ制限のせいだね。それにしてもホント、真っすぐ飛ぶなぁ……! 重力無いし、空気も無いから抵抗が少ない!)
射撃の速度も精度も地上より上げられる。無茶な狙撃もできそうだ。
全体の機動性が上がった分、射撃の難度を下げているのかな。
うんうん。リアリティとシステムが良い感じにマッチしているね。リアルの宇宙の仕様を取り入れつつ、ゲーム性を損なわないようきっちり調整をしている。
『あとは……ピース系の性能は大幅に上昇するらしい。速度も精密さも増す。弾やミサイルのホーミング性能もより効きやすくなるから注意な。ん~っと、これも伝えておくか。スラスターを使い過ぎると機体がオーバーヒートするらしい』
それめちゃくちゃ大事な情報!
『視界の端に機熱メーターってのが出せる。それが規定ラインを超えると『排熱状態』に移行して、全てのステータスが20%低下するんだとさ。その状態でさらに動き続けるともっと重いペナルティを受ける』
「……地上ではいくら動いても大丈夫なのに、なぜ宇宙空間だとダメなんですかね?」
『知らね。制限つけないと無限に動き続けられるからじゃないか?』
なるほど。バランスの問題か。
『拡張パーツの遊泳装甲ってのを付けるとデメリット面はある程度軽減できるみたいだな。以上、宇宙仕様の解説終わり』
「お疲れ様です」
レーダーに敵機が入った。こっちに向かってきている。
試し撃ちしたことで位置がバレたね。
(数が多い)
6機――
『シキ! 囲まれているぞ!』
「はい!」
右方向320m先、巨岩の影。頭上200m、壊れた宇宙船の影。下方向120m先、こちらに向かって直進中。左方向290m、固まって3人、こちらに接近中。
(1つずつ丁寧にいこう)
僕はまず巨岩の影に隠れた1機とデブリの影に隠れた1機をレーダー撃ちで狙う。それぞれ3発ずつレーザー弾を放つ。レーザー弾は障害物を貫き、ターゲットに全弾命中。2機とも撃墜。
次に下方向の人だ。速射モードで弾を連発する。相手はシールドピースで防御しようとするも、上手くシールドピースをレーザーに当てられず、直撃を喰らって落ちる。
(うっわぁ。まだシールドピースを上手く動かせないんだ。なんだか、初心者狩りしているみたいで胸が痛い)
左方向。3人組。距離30m。
「居た! シキだ! 代理戦争で活躍していた奴!」
「優勝候補をここで落とせれば……!」
そっか。僕に狙いが集中しているのは代理戦争の影響か。
「……変に有名になっちゃったなぁ」
「いくよ! 合わせて!」
ハンドガン・アサルトライフル・スナイパーライフルによる一斉射撃。
縛りのせいでアステリズムは使えないので、回避運動で全弾回避する。
「うっそーん! この距離の一斉射撃を!?」
(宇宙、良い! 回避しやすい!)
スラスターが良く回ること。
「……次はこっちの番だ」
距離近い。緊張で僅かに体が痺れる。だけど、この相手なら問題ない。
僕は1番近い所にいた女の子の額を狙撃モードで撃ち抜く。
「なっ!? 黒いレーザー!?」
「全然見えない……!」
(あ、そういえばそうか。スタークは暗黒色光弾。この宇宙の闇に溶けやすいんだ)
残りの2人も順々に撃ち抜き、撃破する。
「6機撃墜」
周囲の一掃を済ませた僕は宇宙空間を飛び、プレイヤーが落とした緑のケース(プレイヤーがマップで拾った消費アイテム)を回収する。
「修理キット、EN瓶、グレネード、リモ爆、ワイヤー……うん。欲しい物は揃ったね」
特にランクマッチではEN瓶が大事。これが無いとEN管理にかなり気を使わないといけないからね。
『シキちゃんどうする? 合流する?』
ラビちゃんからの通信だ。
『必要無いだろう。このレベルなら、ばらけて手広く敵を駆除した方が早く済む』
『ぎゃあああああああああああああっっっ!!!?』
僕が何か言う前にロゼッタさんが否定する。ついでにチェーンソーの起動音と共に悲鳴が聞こえた。あの、ロゼッタさん、多分相手初心者ですから容赦してくださいね?
「ロゼッタさんの仰る通りです。合流は無しで。このまま個々で撃墜数を稼ぎましょう」
通信を切り、宇宙空間を進んでいく。
「うわっ! 凄い。なんだアレ!」
正面に巨大な半球形施設を発見。
ピコン! とレーダーに一気に7機の反応が映った。
反応が集まっているのはあの半球形施設の中だ。
「イヴさん、アレは?」
『待て待て。いま調べてるから。ペラペラぺラ……と、あった。そいつはスモールコロニーだな。宇宙ステージにおける『街』さ』
コロニー!? アレが? オケアノスとは全然違う。
やばい。SF脳がビンビンに反応しているぅ……!
『広さは街1つ分。『底』が地面側、『天面』が空側だ。そこら中についている筒から中に入れるぞ。重力があるから、中は地上と同じ仕様だ』
「あのコロニーを穴だらけにするとどうなります?」
『空気が外に流れる。穴の近くにいるやつは外に弾き出されるだろうな。ただ穴はすぐに修復される。一応言っておくが、スモールコロニーを落とすのは無理だぞ』
「そうですか」
コロニーを破壊して、丸ごと中の人達を撃破! っていうのはできないか。
「それなら、コロニーの外から狙撃して中の敵を落とすというのはどうでしょう?」
『せこくてエグいこと考えるなぁお前……』
イヴさんは数秒の間を置き、
『今のスタークにコロニーの外壁を貫通して、中の奴にダメージを与える程の威力は無いな』
「わかりました。中に入ります!」
『激戦区だぞ』
「はい。でも行きます!」
僕は目を輝かせて言う。
『ハイハイ。お好きにどうぞ』
僕はコロニーに生えている筒に向かう。
直径20mはある筒の穴に入る。僕に反応して、正面を遮っていたシャッターが次々とスライドし、開いていった。僕は筒の中を進んでいく。最後の壁、透明なシャッターの前に行くと、僕の背後のシャッターが全て閉じ、代わりに透明なシャッターが開いた。
開いたシャッターから中に入る。中はシティだ。ビルがあり、商店街があり、公園がある。
中に入ると敵機反応が増えた。レーダーに映るだけでも12機はいる。まさに激戦区。
「どこから手を付けようか……」
宇宙にある巨岩やちっちゃい岩ってなんて呼ぶんだろう?
隕石? 小惑星? デブリ? 隕石は地上に落ちたもので、小惑星は定義が良くわからない。デブリは人工物のゴミ……あの岩なんて呼ぶんだろう。わからん……。





