第216話 フリーパーチ
フリーパーチ・メインシップ『乱星雲』。
第1ブリーフィングルームにて。
「これより会議を始めます」
ブリーフィングルームに居るのは5人。
ましゅまろスマイル・リーダー&フリーパーチ総指揮官『シーナ』。
ましゅまろスマイル・アタッカー『ニコ』。
紅蓮の神翼・アタッカー『クレナイ』。
レッドプラネット・ナンバー3花火師『ガーネット』。
レッドプラネット・ナンバー5仕事人『ペテル』。
フリーパーチの主要戦力である。
「なによコレ。全然人数いないじゃない」
ピンクの前髪をいじりながらニコは言う。
「全体会議はまた別でやります。今日はひとまず主力の皆さんの方針を……」
「どどど! どっかーん!!!」
シーナの話を遮ったのはオレンジ髪の少女。その髪は寝癖だらけで、あちこちに毛先が向いている。
「みんなに質問があるんだけど! まずこれ見て!」
オレンジ髪の少女――ガーネットはブリーフィングルームのモニターに動画を映し出す。
「えっと……これは敵チームの動画ですか?」
「ううん。違うよ~」
ガーネットがモニターに流したのはアニメーションだ。
昭和のロボットアニメと現代のロボットアニメの爆破シーンを交互に流している。
「……これは、一体なんですか」
分析力に長けたシーナですら、ガーネットの行動の意味が理解できず戸惑う。
ガーネットはその花模様の瞳孔を輝かせ、
「どっちがいいと思う!?」
「どっち、とは?」
「デジタル作画の爆発とセル作画の爆発! ガネちゃんはねっ、セルの方が好きなの! 爆風の流れがさ、後引く感じが堪らなくない? 塗りも味があって、記憶に焼き付くんだよね。ハッタリの利いた色使いと、動きの現実味。外連味の中に繊細なリアルがあるんだよぉ~」
1人、自分の世界に入るガーネット。
「あの、なんの話を……」
「そもそもセルってなによ? 前と後、どっち?」
ニコがガーネットの話に乗る。
「セルは先に流した方だよ!」
「あ~、あの古臭い方ね。それなら、私は断然デジタルだわ」
ガーネットは「ガーン!」と肩を落とす。
「なんでなんで!?」
「だってコレ戦争物でしょ? 戦争物だったらリアルなタッチの方がいいじゃん」
「でもデジタル作画の爆発ってなんかアッサリしてない?」
「実際爆発ってそんなもんでしょ? 一瞬じゃん。つーか、今ちょっと調べてみたけど……セル画っていうの? もう絶滅してるじゃん」
ニコはため息を挟み、
「結局は旧時代のもんでしょ? 全部デジタルに変わったんだから、価値は無いってことじゃないの」
「お~っと、言い過ぎだなニコ」
クレナイが話に混じる。
「クレナイさんまで……」
脱線した話が進み続ける。
「セルが無くなったのはコストの問題だろう。簡単に優劣は付けられまい。オレはセル好きだぞ。セルでしか表現できないこともある」
「わかってるぅ! セル画はロマン!」
「あ。自分はデジタルの方が好きです」
そう声を上げたのは黒いコートを着た黒髪の女性、ペテルだ。目には深い隈、口には黒い金属製のマスクを装備している。
女性にしては低い声で彼女は続ける。
「セル画の爆発は嘘くさい。なんか滲んで見えます」
「でもさ、実際に爆発した瞬間を肉眼で見たらさ、このぐらい後引くと思わない?」
「そうそう。デジタルはカメラ越しで見た映像で、セル画は生の目で見た感じがあるんだよな。人の脳を通してカスタマイズ化された印象を映し出すんだよ。だから見た時、なんかエモさがあるんだよなぁ~」
「意味わかんない。アニメは画面越しで見るんだから、カメラ越しで見た映像でいいじゃない」
シーナは両手をパン! と合わせる。
「爆発談義はその辺にしてください。話を戻します」
シーナは強い声色で言う。他4人は口を紡いだ。
「まずクレナイさんですが……」
「はいはーい! ガネちゃんはね! でっかいの爆発させたいです!」
ガーネットが意気揚々と手を挙げる。シーナはまた話の腰を折られ、頭を抱えた。
「爆発はロマン! 爆発はロマンだよシーナちゃん! どっかーん!!!」
「……わかりました。ではあなたにはでっかいのを爆破させてあげます。基本は対艦戦、つまりサブシップとメインシップへの攻撃をお願いします」
「それおっきぃ?」
「おっきいです」
「やったぁ! おっきぃの大好き! おっぱいもおっきぃ方がすきぃ! 巨乳はロマン!」
「はいはい……頼みますから、これから先はお静かに」
「はーい!」
ワクワク、ワクワクと体を揺らすガーネット。
シーナはガーネットから視線を切り、クレナイに視線を向ける。
「クレナイさんも対艦戦がメインになります。対艦刀を使って相手の戦艦を削ってください」
「いいぞ。対艦戦は好みだ」
「ニコさんは敵アタッカーの処理をメインにお願いします」
ニコは机を叩く。
「はぁ!? なんでよ! シキと戦わせなさいよシキと!」
「上手くアタッカーを処理できたなら、必ず場は用意します」
シーナとニコは視線を交わす。
ニコはシーナが意見を変えないとわかると、椅子に深く座って「……わかったわよ」と溜飲を下げた。
「敵エース、シキさんの足止め役は……ペテルさん。あなたにお任せします」
「了解」
ペテルは淡々と返事する。
「相手はオケアノスのエースです。大丈夫そうですか?」
「自分は与えられた仕事をこなすだけです。やれと言われればやります」
再びガーネットがカットインする。
「ペテルはね! 仕事はちゃーんとやるよ! 地味~だけど、言われたことはちゃーんとやるの! ロマンないけど!」
「自分はリアルしか見ません」
ペテルの瞳に余計な感情はない。あるのは冷たい現実のみ。
「どれくらい足止めできますか?」
「参考動画は見ました。15分は足止めできます。ただそれ以上は読めません」
「15分……十分です。しかし、本当に可能ですか? 相手を甘く見ていませんか?」
「心配はいりません」
ペテルは言い切る。
「油断も慢心も無い。自分の力量も、才能の程度も把握している。その上で断言します。15分は止めます。でも100%勝てはしません。倒すのは無理です。100回戦って100回負けます」
「わかりました。失礼な質問をしてすみません」
「ペテルはウチの大将を18分間も足止めしたことがあるんだぞ。たとえシキが相手でもやってくれるさ」
「そういえばそんなこともありましたね。あの戦いの後、ツバサさんは荒れに荒れてましたよ」
シーナはツバサの荒れ様を思い出し、くすりと笑う。
「ペテルさんがシキさんの機能を止めている間に、敵艦を削れるだけ削る。シキさんが動けない間にどれだけ敵艦を撃墜できるかが勝負です」
「ちょっと待った。『シキシキ』って言ってるけど、シキ以外にもオケアノスにはヤバい奴いるでしょ」
ニコの指摘にシーナは頷く。
「第二戦でKnightNightのメインシップを単独で落としたプレイヤーですね」
「単独でメインシップ無力化とかヤバいでしょ。ワンチャン、シキと同じレベルかもよ。どうする気?」
シーナは小さく笑い、
「アンノウンは私が直接処理します。お任せください」
「ちょ、アンタが出張ったら指揮はどうするのよ?」
「大丈夫です。フリーパーチのプレイヤーは自分で考え行動できますから。指揮官が不在になっても大きく崩れることはありません」
シーナはまとめに入る。
「では皆さん、ご自身の『役割』を口にしてください」
「『雑魚処理』!」
「『戦艦どっかーん』♪」
「『戦艦ぶった切り』」
「『シキを止める』」
「結構です。それさえ守ってくださればあとは自由です。では解散としましょうか」
「――会議中失礼するよ!」
部屋に1人のスペースガールが入ってくる。彼女はフリーパーチ・サブシップの艦長だ。
慌てた様子で彼女はシーナに近づく。
「どうしました?」
「シーナ! 異常事態だ!! いま、E級のランクマッチで……!」
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