49 引き継ぐということ
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「…トレア先輩?…アルトレア先輩?」
ふと、私は誰かが自分の名前を呼んでいるのに気付いて、ハッと我に返る。
『やっと反応した』
そう聞こえたかと思うと、目の前にズイッと女の子の顔が近付いてくる。
その声の主は、『やっと反応した』と言って、私の正面にズイッと顔を寄せてくる。
「カミラ?どうして2年生の教室に?」
ここでようやく、私が声の主を認識すると、驚く事に相手はカミラだった。
「どうしてって…先輩が言ったんじゃないですか。『放課後教室に来て』って」
少し困った顔をして、そう指摘する彼女に、私は周りを見渡す。
「いつの間にか放課後だったのね。ごめんなさい、少し気が抜けてたみたい」
そして、私は今の状況を正しく認識すると、そう言って彼女に謝罪する。
「どうしたんですか?授業中も上の空だったみたいですし」
そんな私に、カミラは少し困った顔をしつつも、心配そうにそう問い掛けてくる。
「ちょっと考え事をね」
「1日中ですか?……相談なら…乗りますよ?」
「大丈夫よ。別に悪い事じゃ無いから。ただ、私の心の準備が出来てなかったと言うか、予想外過ぎたと言うか…」
彼女にそう返事をしつつ、私は昨日の先輩との会話を思い返す。
『私のになるって…もしかして、わ、私が先輩の研究を引き継ぐんですか!?』
『いや、別にそれはどっちでも構わないが、出来ればお前に室長になってもらいたいとは思っている』
『そ、そんな事…急に言われましても…』
私は、何となく流れでこの研究室に身を置くことになったせいで、実感として薄いけど、1年生の内から研究室に所属するのすら、本来なら相当難易度の高い事なはずだ。
ましてや、そこを少人数で運営するなんて、先輩だからこそ発明品の販売とか、学園内外の協力者の存在だったりとで、実現出来ているわけで、その両方に頼るつての無い私が、いきなり室長になったとして、とてもこれまで通りに存続させられるとは思えない。
『わっ…』
『まぁ、まだ時間はあるからな。ゆっくり人を集めれば良い』
反射的に『私には無理です』と断りそうになるけど、その前に先輩が有無を言わせない言い方で、これからの事を話すので、私は『引き継ぐのは確定なんですね…』と呟いて、覚悟を決めるしか無かったのだ。
そんな事を思い出していると、急に廊下の方から
「おい、いつまで話してんだよ。さっさと行くんじゃ無いのか?」
と、怒ったような、ここ最近ではすっかり聞き馴染みとなった声がする。
「アレン、あなたも居たの?」
私が直接誘ったのはカミラだけだったので、彼女の従兄妹であるアレンも姿を見せるのは驚きだ。
「オレは別に行きたくないんだけど、こいつが無理やり…」
「うるさい!あんたも一緒に来るの!!…アルトレア先輩、ダメですか?」
いまだに私に対して、反抗的な態度を取る彼が、良く今まで静かにしていたと思ったけど、あの様子を見るに、元々乗り気でないところを、カミラに無理やり連れてこられたようだった。
そんな彼を、研究室に一緒に連れていきたいと、カミラが私に事後承諾の形で求めてくる。
「まぁ、ダメとは言わないけど…アレンは良いの?」
「良いんです!お兄ちゃんだって、ホントは行きたいくせに、意地張ってるだけなんで!」
「そうなの?ちょっと意外ね」
どうせ今日は、ちょこっと研究室の様子を見せるだけのつもりだったので、1人も2人も大して変わらないだろう。
それよりも、カミラのこの言い方だと、アレンも先輩の研究室に興味があると言うことになるのだけど、何か理由があるのだろうか
「お兄ちゃんてば、先輩が『魔力針』以外にも、魔道具を見せてもらえないかなって、ずっとソワソワしてたんですよ」
「し、してねーよ!」
「ウソつき!今日だって、私が先輩に誘われてから、『ホントに行くのか?』って、ずっと何度もしつこく聞いてきたくせに!」
「まぁまぁ、とりあえず2人とも来るって事で良いのよね」
と、私が聞く前に、カミラが説明をしてくれるのだけど、お互いに相手の言葉へ反論を繰り返すので、だんだん言い争いが激しくなってくる。
ここで兄妹げんかを始められると、研究室へ行くのが遅れてしまうので、私は適当に2人を宥めながら、移動を促すのだった。
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