48 予想外
「確か、この前俺に紹介したいと言ってた1年は、その班に居るんだったか?」
素直じゃないスイネグ先輩に、私はからかい半分で、先程の発言の真意を尋ねようとしたけど、その前にそう言ってさっさと話を流されてしまう。
けれど、これ以上変に突っついて、またお説教をくらうのも嫌だったので、私はそれ以上追及せずに、その質問に答えることにする。
「はい。さっき言ってたまとめ役の子なんですけど、彼女の事、先輩も気に入ると思うんです」
一応あの班のリーダーは、ベネウッド出身のトウコで、カミラはサブリーダーなのだが、班の中での力関係上、実質的な統率はカミラがとっている。
その彼女が、私が先輩に紹介したいと思った人物なのだけど、その理由は彼女の知識にあった。
スイネグ先輩は、元々魔素についてのアレやコレやの、研究を主にしてる人なのだけど、今年度初めにカインと名乗る人物が学園を訪れた事で、自分の研究内容が何処からか漏れている可能性が出て来ていた。
それを裏付けるかの如く、狙ったようなタイミングで、学園から情報を求められた訳なのだけど、先輩はその時に、相手の情報源を調べる為とか、他にも研究費用が浮くからとか、ちょっとした思惑もあって、これまでの研究成果のほとんどを、学園に渡してしまっていた。
そして、私とタイガを囮にしながら、また新たな研究を始めたのは良いのだけど、その内容が、言ってしまえば私達の成長記録みたいなものなので、費用がかからないとは言え、先輩にとっては退屈な時間になってるのではと、私は考えていた。
そんな時に出会ったのがカミラだ。
彼女は、私が付けているこの魔道具を、一目見るなり『腕時計』だと言い当てて見せた。
実際には、それを元に改造した『魔力針』なのだけど、それはまぁ置いといて、とにかく、彼女は私がこの魔道具を先輩に貰ってから、初めてこの大陸のものでは無いと気付いた人物なのだ。
しかも、どうやらこの魔道具の元になった、『腕時計』の動力についても詳しいようで、私はどことなく先輩に近いニオイを、彼女から感じ取っていた。
と言うのも、先輩が特別に入手したこの『腕時計』は、原産国が地図には載っていない、第四の大陸とも呼ばれる場所に位置するのだけど、地図に載っていない事からも分かるように、そこは私達の住むアリアス・ベネウッド・ユニウスと、表立っての交流が無い大陸であり、よほどの物好きでなければ、そんな大陸が存在してる事すら知らない。
私は先輩から聞いたので、かろうじてその大陸が、魔素とは違う力を用いて文明を築いてる、という事は知ってるのだけど、カミラは独自のルートでその情報を集めたと言うのだから、まず間違いなくその物好きな人種だと言えよう。
さて、そんな彼女が私の付けている『魔力針』を見て、それを作ったというスイネグ先輩に興味を持たない筈が無かった。
彼女は、合同授業が終わる度に私に話し掛け、その第四の大陸について聞きたいことがあると言うのだけど、残念な事に私のそれについての知識は、聞きかじりのものであり、彼女の話す内容に到底ついていけるものではなかった。
そういった背景もあり、先輩の暇つぶしもとい、新しい研究を始めるのに良さそうな人材だと思い、ダメ元で話してみたのがこの前の事だ。
「…ふむ、そうだな。一先ず急ぎで片付けたいものは終わった事だし、明日辺りにでも此処に連れて来て、害が無いと分かれば後はお前が決めろ」
「えっ?良いんですか?」
前回話した時は、『考えておく』なんてひと言で済まされてたので、先輩からそんな言葉を聞いて、私は拍子抜けする。
「来年以降もこの研究室を存続させたいなら、増員が必要だろう」
「あぁ、そうか。ここ、私しか居ないですもんね」
スイネグ先輩の研究室は、研究してる内容のせいなのか、先輩の性格のせいなのか、協力者自体は大勢居るのだけど、驚く事に、正式にこの研究室に在籍してるのは、スイネグ先輩と私だけなのだ。
てっきり、今年もこのまま去年と同じような体制でいくのかと思っていたけど、先輩の言う現実的な理由に、私は納得する。
「あれっ?でも、それなら何で3年生とか、他の人を入れないんですか?」
けれど、たった今その事に気付いた私と違って、先輩は既に増員しなければ存続の危機だと知っていたはずだ。
なのに、どうして在籍者が私だけのままにしていたのだろうか。
協力者自体は居るわけだし、その内の何人かを形だけでも在籍させれば、当面の危機は解決するのでは?
そう思って先輩に尋ねると
「来年この研究室はお前のになるからな。余計な奴は入れない方が良いだろう?」
「えっ?」
なんて、返ってきた予想外過ぎる答えに、私の頭は入ってきた情報を処理し切れず、完全に停止してしまうのだった。
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