47 釘刺し
「それで話は変わるが、校外学習ではSSクラスの1年を担当すると聞いてたが、大丈夫そうなのか?」
スイネグ先輩は、もう後は出来ることはないと区切りを付けてしまうと、もう必要が無いからと、鎧の写真を片付けつつ私にそう聞いてくる。
「えっと…大丈夫とは?多分、実力的にある程度の事は対処出来ると思いますけど」
けれどそれは、本題が終わって作業ついでの雑談のようなものなのだろうか、なんともザックリとした質問だ。
一応、私が担当する予定の班員は、ユニウス出身の女の子が一人だけ居て、それ以外はベネウッドの子達と言うことで、森に行くどころか街の外に出た事がある子の方が少ない訳なのだが、去年の自分の班を思えば、今年の1年生の方が連携も取れてるし、不安点はあまり無さそうではある。
「逆に優秀過ぎて、私の話を聞いてくれるのかって、不安はあったんですけどね」
ただ、去年の班員で、ベネウッド出身であったリュウレン・フレア・ワタリも、校外学習で実際に森を歩くのや、魔物と対峙するのが初めてだったにも関わらず、彼らは回路に魔力を通して軽い身体強化状態にあったからか、私が想像していたよりも、すんなりと探索を進めていた。
その事を思えば、クラス的には去年の私達よりも実力は上であろう彼らなら、よっぽど変な魔獣にでも出くわさない限り、私が心配するような事は起きないだろう。
「ふん。Sクラス以上の連中にありがちな話だな」
「でも、一人女の子が彼らのまとめ役をしてくれてるんで、その問題もなんとかなるのかなって思ってます」
「そうか…」
幸運な事に、あの4人の中で一番生意気な少年、アレンを彼の従兄妹であるカミラが、物理的に抑えてくれるので、他の1年生の感じからしても、当日誰かが暴走する、なんてこともないだろう。
「一つ言っておくが、Sクラス以上の生徒だからと言って、全員が全員、実力がAクラス以上だとは思わない方が良いぞ」
「えっと…違うんですか?」
「あぁ。確かに、Aクラス連中から成績優秀者として、Sクラスに配属される事は多々ある訳だが、他にも珍しい魔法を使うものや体質のやつも、Sクラス・SSクラスに振り分けられる事がある」
『お前の友人みたいにな』
そう報告する私に、先輩は最後にそう付け加えながら、1年生の実力を高く見積もりすぎるなと、釘を差すように言う。
「そうは言いますけどね…」
先輩の言う通り、実力自体はBクラスやCクラス並みの子も居るのだろうけど、数回ほど授業での様子を見た感じ、彼らがSSクラスとしての実力を備えてるのは確かに思える。
だからこそ、一緒に1年生を監督する予定のワタリと話して、彼らの事を基本的には見守るだけで十分という結論に至った訳で、そうする変わりに彼らが不測の事態で、危険な状態に陥りそうだと判断した時は、絶対に指示を聞いてもらうと約束したのだ。
「それなら良いんだが、お前の事だからな。…もし指示に従わない奴が出た時、見捨てて離脱出来るのか?」
「だ、大丈夫ですよ。『撤退判断を下した時に、指示を聞けない人は置いていく』って伝えてありますし…」
「どーだかな。去年の例もあるしな」
それを説明しても、先輩はよほど私に信頼が無いのか、呆れたようにそう言う。
「アルト、こっちでは向こうほど無茶が出来無いって聞いてるし、判断は普段よりも早めにするんだよ?」
「わ、分かってるわよ…」
続けるように、タイガがそう注意してくる辺り、彼らから私への信頼度がよ〜く感じ取れて、思わず涙がにじみ出そうだ。
「まったく、二人してそんなに言わなくても良いじゃない。私だって何も考えてないわけじゃないんだから」
「まぁまぁ。おれもこの人もアルトが心配なだけだから、あんまり不貞腐れないでよ」
そんな私の心情を分かってるのか、タイガが機嫌を取るようにそう言う。
「別にふてくされてなんか無いわよ。ていうか、タイガはともかくスイネグ先輩も?」
と、私はタイガの言い分を否定しようとしたけど、言われてみれば確かに、先輩の小言が多くなったのは、私の参加が決まってからだったような気がする。
まさかと思って先輩の方に目を向ければ
「まぁ、そうだな。死なれたら投資した時間も無駄になるしな。」
とか言うものだから、思わず私の方も憎まれ口を叩きそうになったのだけど、その前に
「もっとも、1年の中にお前に変わる価値がある奴が居れば、また話は変わってくるがな」
なんて、本気なのか照れ隠しなのか、分からない言葉を吐き捨てられてしまうのだった。
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