46 意図
「まぁ聞いてる限りだと、それなりの頻度で、魔物狩りに行く必要がありそうだからな」
そう言って先輩は、写真の鎧がアリアスで大量生産されたものでは無いと、私が感じた根拠に頷く。
「こっちみたいに国境の警備が必要って事も無いですし」
「確かにそのようだな。この森なんかは、自国のものにしてしまえば、使える資源も増えると思うんだがな」
「こんな大きな森、どっちかのものにしたら、大変な事になっちゃうよ」
「そうなのか?」
「はい。あの…向こうでは、こっちとは比べものにならないぐらい魔物がでるので…」
それを聞いて呟かれた疑問に、タイガが即座にそう指摘するので、先輩は確認するように尋ねてくる。
実際、ベネウッドでは技術力の賜物か、地図上で見ても大陸中の国が、全て国境線によって領域を定められているけれど、アリアスでは基本的に国の中央から、大きな街の辺りまでしか国境線が引かれていない。
と言うのも、国と国の距離が離れているのももちろんそうだが、何よりも魔物が大量発生するような場所を、一国が所有しようとすれば、莫大な費用がかかってしまうのだ。
そんな場所を、わざわざ保有したいという国は、アリアスではそうそう無い。
しかし、だからと言ってそういった場所を、何も対処せずに放置すると、いずれ集団化した魔物達が、街を襲いに来てしまう。
なので、よっぽど余裕のある国でも無い限り、こういった森はどちらの物ともせず、共同管理とするのが通例となっている。
「なるほど。余計な事に割くリソースは無いと言うことか」
「そうなんです。だからこそ、わざわざ外回りの兵士がこんな鎧にしてる意味が分からなくて…」
「………考えられるとしたら、魔物ではなく人間相手の争いの準備か?」
私の説明が終わったところで、先輩がそう予測を立てるけど、それは本来ならアリアス大陸において、一番有り得ない仮定だろう。
「さすがにそれは無いと思うけど」
「うん…そんな事したら魔物に狙われるだけだって、向こうの人なら分かってるはずなんだけど…」
「裏で手引きしてる奴がいるなら、その限りではない…か」
タイガもそう考えているのだろうが、私とスイネグ先輩には、一つだけ懸念点があった。
「でも、さすがにこれは一人で出来る範囲を超えてますよね」
「別に相手が個人だとは限らんだろう。どうだ?そっちのお前は、カインと言う男について、何か違和感を感じた部分はあるか覚えてるか?」
ただの考えすぎだと、笑い飛ばしてくれれば私も気が楽になるのに、先輩はその懸念点を深掘りしていく。
「入学式の日に話しかけて来た人だよね。うん。いま思うと、色んな人の色が混ざり合ったみたいな、気持ち悪い魔力をしてた気がするな」
「混ざり合った?」
「うん。あの時は何も思わなかったけど、これって多分変な事なんだよね?」
どうやらタイガは、カインの事を覚えていたようだけど、こちらに来る前も来た後も、見たこと無いような魔力をしていた為に、印象に残っていたらしい。
不自然な国の動きに、不自然な人物。
嫌なことを想像するには十分なピースが揃いつつあると、感じずにはいられない。
「まぁ、一旦ここまでで十分か」
「えっ?」
「ある程度情報は出たが、結局のところ確証は無いからな。後はまた、向こうと連絡を取って調査するしかあるまい」
と、そんな事を思っていると、先輩があまりに唐突に話を打ち切るので、私は驚いたのだけど、今回はあくまでも意見を聞きたかっただけだと言われると、実際これ以上話し合っても、カインが怪しいという以外に、進展が無いのは理解出来るので、釈然としない気持ちを残しつつも、私達はその言葉に従う事にする。
「何か分かれば伝えるから、取り敢えずお前達は、これまで通り過ごしてれば良い」
そうして、最後に先輩がそう締めくくることで、完全にこの話題が終了となるのだった。
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