37 平常運転
「じゃあ話す前に、あなたがどこまで聞いてるか教えてくれる?」
お店に入ると、早速メリッサは話を聞きたがったので、何処から話すか迷った私は、とりあえず彼女が何を知っていて何を知らないのか、認識のすり合わせから始めることにした。
その結果、彼女はセイラ先輩から私達の研究が、今回の校外学習の期間変更に関係している事。
そして、サヤカから去年の出来事を聞いていたので、その研究内容が子熊に関係することだと予測していたらしい。
「ほーん。子熊に関しては表向き用の理由で、実際は別の理由があったと」
「そうね。だから正確に言うと、その理由が公表出来ないから、代わりに私達の研究内容が使われることになったのよね」
「そんで、その理由は何なんだよ」
それを聞いた私が、表向きに一般生徒に知らされる理由としては、それで正しいことを教えれば、当然のながらもう一つの方の理由を聞かれる。
私は最初、それを話すかどうか迷ったけど、当事者であるサヤカはもちろんの事、レイナもサク先輩から聞かされないはずも無いので、そうなると私達4人の中で、メリッサだけが本当の理由を知らない事になってしまう。
そんな仲間外れみたいな状態にしてしまうのは、私としては本意ではないし、この1年の付き合いから、彼女が秘密をそう簡単に話す人ではないのは分かっている。
なので結局私は、カインの事は伏せたまま、スイネグ先輩から聞いた内容を、そのまま話す事にする。
「ほら、去年の校外学習で全滅した班が居たのは覚えてる?」
「あぁ、Cクラスだったかで死んだって聞いたな」
「本当なら、その原因を公表して注意喚起、って言うのが一番分かりやすいとは思うんだけど…」
と、私はここでサヤカの方をチラッと見る。
「ん?」
「私達が…Aクラスの1年が2人で倒しちゃったから、そんなのが脅威って言われても説得力に欠けるって事で、かわりの情報を出す事になったのよ」
「でも、あれは本当に強かった」
もしあの日、親熊を倒せた要因のどれか一つでも欠けていたら、私達の班も同じ運命を辿っていたであろう。
「先輩達でも、『まともにやりあったら、どうなるか分からない』なんて言ってるんだから、レアちゃん達は無茶し過ぎだよ」
「あれは不可抗力だったのよ」
「もう2度とやりたくない」
当時の状況を思い出してるのか、レイナとサヤカが顔色を悪くする。
と、ここでメリッサが
「っかー、そんだけ強えってんなら、あたしも戦ってみたかったなー」
なんて脳天気な感想を口にするので、私はジトッとした目で彼女を見つめる。
「何だよ」
「別に?ただ、学校側が親熊の出来事を、公にしない理由をなんとなく理解したってだけよ」
「なんだそりゃ」
すぐにその視線を察知して、メリッサが問いかけてくるので、私はそう誤魔化す。
「とにかく、一応今回の校外学習が期間を早められたのは、新しく分類された『魔獣』の存在がきっかけなんだから、私達も付いてくだけとは言え、油断しちゃだめよ?」
最後に、そうやってまとめることで、私はメリッサからの追及を逃れることに成功する。
「はー、にしても魔獣ねぇ」
しばらくして、食事を終えてのんびり一息ついていると、ふとメリッサがそう言葉をこぼす。
「どうしたの?メリッサちゃん」
「いや、そもそも普通の魔物すら見たことなかったあたしからしたら、違いが大して分からなかったからな。そんな慎重になるほどなのか?って思ってな」
「えっと…どんな風に言えば良いんだろう…」
いかにもベネウッド出身らしい疑問に、レイナは上手い言葉が見つからず、戸惑ってるようだった。
「んー、そうね。私も校外学習では、結局あの親熊以外には手を出す暇もなくて、実際の強さがどうかは分からないから、先輩に聞いた話になっちゃうんだけど…」
そんな彼女に代わり、私は聞きかじりの情報だと前置きをしておいて、説明を始めるのだった。




