36 クラスメイトと元クラスメイト
「ほら、もう良いでしょ?私のことばかりじゃなくて、あんた達の事も聞かせなさいよ」
これ以上タイガの話を続けても、メリッサが余計なことを言って、レイナが無駄に騒ぐ未来しか見えなかったので、私はこの話を無理やり打ち切り、話の矛先をSクラスの2人に向ける。
「わたし達のこと?」
「そうよ。メリッサはもう知ってるから良いとして、あんた達は誰と組むのよ。まぁ、聞いてもどうせ分からないだろうけど」
私がそう質問すると、サヤカとレイナは顔を見合わせる。
「ん?Sクラスの奴って確か、わざわざペアにならないでも良いんじゃなかったっけか?」
「えっとね、私はそもそも救護班でペアとか関係無いから…」
「そうなの?じゃあサヤカは1人で参加するの?」
と、横で聞いてたメリッサがそう言って、レイナも自分は別参加だと言う。
そうなると、去年の様子からして、サヤカが知らない人と、わざわざペアを組む姿が想像できないので、私はそう聞いてみる。
「ううん。サヤカちゃんはリュウレン君と参加するよ」
「レイナ、別に言わなくて良い」
レイナの答えは、ある意味では予想通りではあったけれども、サヤカが表情を変えずに淡々とそう言う様子から、本人が望んでそうなったわけじゃないのがうかがい知れる。
「そうだよね。どうせ、元Aクラスだからって無理やりペア組まされちゃったんでしょ?」
「………」
「サヤカも大変ね。あんなヤツとペアになるなんて」
「えっとね、レアちゃん…」
私は、半ば強制的に組まされたのであろうサヤカに、同情の言葉を掛けるのだけど、なぜだか思っていたような反応が返ってこないことに気が付く。
「リュウレン君は、優しい人だよ?」
「は?何言ってるの」
むしろ、かばうようなレイナの言葉に、私は困惑する。
「今回リュウレン君がサヤカちゃんと組むのも、魔法が上手に使えないのを心配してだし、多分、レアちゃんが思っているよりも、リュウレン君は悪い人じゃないよ」
「何よ…それ…」
私は理解出来なかった。
リュウレンとサヤカが組むことではなく、レイナがリュウレンをかばったことが。
あまつさえ、まるで私が酷いことを言ったみたいな目で見てくることが。
去年私と同じように、あいつから嫌がらせを受けていたはずのレイナが、だ。
確かにリュウレンは、去年の校外学習でサヤカと同じ班だったし、彼女が魔法を使えないために遠距離の連絡には、道具に頼るしか無いのを、知って入るだろうが。
だからと言って、何で私が友人からそんな目で見られなくちゃいけないのか。
『あぁ、本当にクラスが変わっちゃったんだな…』
誰からともなく、私達はまた歩き始めるけど、そこにさっきまでのような和気あいあいとした雰囲気は無い。
私は、2人が共通の話題で盛り上がるのを聞きながら、心の中で何度も、ここで足を止めて引き返そうかと考える。
そんな気持ちでいるせいか、私の歩幅もだんだんとズレていき、自然に2人との距離が離れていく。
今の私には、それが物理的な距離だけでなく、心の距離も離れていってるように感じた。
「で?さっさと教えろよ」
私がトボトボと、2人について行くように歩いてると、突然隣のメリッサからそう声を掛けられる。
「えっ?な、何を?」
「何って、さっきの続きだよ!」
「さっきって…?」
「だから、さっき着いたら話すって言ってただろーが。ずっとつまらねぇ話しされてイライラしてんだよ、こっちは!」
気が付くと、私達は目的をお店の近くまで来ていたようで、先に歩いてたレイナとサヤカが、入り口で振り返って私達を待っていた。
それを見て私は、さっきメリッサに校外学習が早まった経緯は、人に聞かれないところで話すと言った事を思い出す。
「ここはまだ外よ?せめて中に入ってからじゃないと」
「だったらさっさと中に行こうぜ」
「どうしたの?」
「何でもないわ。メリッサがお腹空いて待ちきれないって」
「おい!ふざけるな!」
きっと、このままだと私が気後れしたままになると、彼女なりの助け舟なのだろう。
『ありがとう、メリッサ』
そんな彼女なりの気遣いに、私は心の中でお礼を言いつつ、サヤカ達の元へ早足で向かうのだった。




