28 道場にて
「あなたがちゃんと練習したいなんて、珍しいわね」
私達は、放課後にタイガと2人で道場へとやって来ていた。
と言うのも、私は2年生になってからも、毎週のように道場へと通っていたのだけど、学校の外の練習場というのに興味を持ったのか、教室から出ようとした時にタイガから声を掛けられて、一緒に向かうことになったのだ。
ここ最近彼は、新しく出来た友人と帰る事が多かったので、珍しいなと思いつつも、そこでは魔法が使用禁止だということを伝え、同行を承諾した。
「それにしても意外ね〜。タイガはこういうの面倒くさがると思ってたけど」
道場へ向かう間少し距離があるので、私達は適当に雑談をしながら歩くのだけど、なにやらタイガが付いてきたのには、その場所に対しての興味だけでなく、私と練習出来るなら、スイネグ先輩からの課題の達成も早くなるだろうと考えての事らしい。
正直タイガが、スイネグ先輩と会話らしい会話もろくにしてないのに、ちゃんと言われたことを真面目に取り組もうとしているなんて、びっくりだ。
私の表情から、そう考えているのを読み取ったのだろう。
「頑張りたい理由が出来たからね」
なんて、タイガは微笑みながら言う。
どう言う理由なのか気になったのだけど、詳しく聞こうとしたところで
「久し振り、レア」
聞き覚えのある声に呼びかけられる。
「サヤカ!」
どうやら歩いている間に、いつの間にか道場の近くまで来ていたようで、その入り口には、今年AクラスからSクラスへと進級した私の友人、サヤカが立っていた。
「久しぶりね!最近忙しそうだったけど、今日は時間大丈夫なの?」
「ん…問題無い」
彼女は、最初に私をこの道場に誘ってくれて、それからは毎週一緒に通っていたのだけど、2年生になってからはここまで来る余裕が無かったのか姿を見せていなかった。
クラスには、彼女以外にわざわざこんな所にまで来て、練習する人なんて居ないし、そもそも誘う人も居なかったので、私は1人で通い続けてたのだけど、これからは彼女がSクラスでやっていた事に一段落ついたのか、また顔を出すようになるらしい。
「レア…その人は?」
その辺りの話が終わったところで、私の隣に誰か居るのに気付いたようで、サヤカはそうタイガに視線を向ける。
「あっ、覚えてる?私の幼馴染の…」
私の知らない所で会ってるのでも無ければ、2人が顔を合わせるのは始業式の日以来なので、改めて自己紹介をする。
「君がユニウス大陸出身の?」
「あっ、なんか面倒見てってお願いされた…」
2人は、先輩を通じてお互いの事を聞かされていたようで、打ち解けるのにそう時間はかからなかった。
「じゃあ、わたしと打ち合う?」
準備運動が終わると、早速とばかりにサヤカがそう提案する。
「いきなりね。まぁ、私もそうしたいところだけど、今日はタイガに色々教えなきゃだから…」
いつもだったら、私も頷いてすぐに打ち合っていたのだけど、今日はタイガが初めて木刀に触れるので、まずはその使い方等を指南していかなければと思い、彼女の誘いを断る。
「ん。だったら、わたしとレアが打ち合っている所を見せて、そのまま今度はわたしと実践練習するのはどう?」
「私は、タイガがそれで良いなら構わないけど、今日は随分とやる気があるわね」
「動くの久しぶりで、なまっているかもしれないから。少し慣れてきたら2対1でやっても良いんだけど」
確かに、彼女とここで顔を合わせるのが2年生になって初めてなら、きっと誰かと打ち合うのも久しぶりなのだろうから、気分が高揚してしまうのも理解出来る。
しかし、
「言ってくれるじゃない」
私はサヤカのその言葉に、目を細める。
この道場では、彼女も身体強化を使えないので、訓練所の時のように超人的な動きは出来なく、体格や体力で私に劣る彼女は技術力だけでその差を補わなければならない。
だと言うのに、自分が勝つのは当たり前だとでも言うようなその態度。
おまけに、慣れてきたらという言葉も恐らくは、自分が久しぶりだからと言う意味では無く、タイガが木刀の扱いに慣れてきたらの意味で使っている。
私の闘争心に火をつけるのには十分だった。
「………」
「……」
もう何も話す必要は無いだろう。
私達は無言で木刀を向け合い構えを取る。
それを見たタイガは、仕方が無いなと言うように距離を取り、私達が打ち合う様子を見守るのだった。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます♪
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今週は【人生裁判】も更新しています




