27 ハリボテ
「今日はいきなりでごめんね?」
スイネグ先輩に呼ばれた帰り道、私はタイガにそう言う。
「平気だよ。アルトの頼みなら断る理由が無いし、おれも今日は楽しかったからね」
「それなら良かったけど」
最近は、タイガにも友達が出来たのか、私以外と帰る日も増えていた中、急な呼びかけだったので、来てくれるか心配だったけど、たまたま約束が無い日だったのか、私の方を優先してくれたのか、特に迷う素振りもなく、今日の招集に応じてくれたのだ。
『もしかして、私の方が依存してたのかな…?』
タイガに友人が増えるのは嬉しい事なのに、彼が居ないと1人で過ごす日が増えていた私は、ふとそんなことを考えてしまう。
と言うのも、レイナとサヤカは、クラスが変わってしまったので、授業がある日はなかなか話せないし、休日もSクラス以上の人達はなんだか忙しそうにしていて、彼女達を見かけてもあまり声を掛けられずにいた。
メリッサも、例のクラスメイトと和解してからは、時々Sクラスの方に顔を出しているようだったので、彼女と教室以外で顔を合わせることも減ってしまった。
そうなると、去年レイナ達以外のクラスメイトと、あまり深く関わらなかった私に、友人と呼べるような人が他には居ないので、自然と孤立したようになっていた。
『あんな偉そうな事を言っておきながら情けない』
出身大陸が違うから。来年は違うクラスになるかもしれないから。
いつの間にか、友達を作らない言い訳ばかりが、ぐるぐると頭の中を巡っている事に気付いた私は
パチンッ
と、自分の頬を両手で挟み『違う、ここで逃げちゃダメなんだ!』と、心の中で叫ぶ。
去年の私は、クラスメイトに対しても引け目を感じていて、どうにも上手くコミュニケーションを取ることが出来なかった。
けれど、今年はタイガがいる。
『自信があるとかないとか関係無い!幼馴染にカッコ悪いところは見せられない!!』
「よしっ!」
そう考え、改めてクラスメイトと向き合う覚悟を決めたところで
「なんて言うか、アルトって、相変わらずマイペースなんだね」
と、横から声を掛けられる。
「ふぇっ?」
どうやら私は、考え事に夢中になり過ぎたせいで、いつの間にかタイガの事を意識の外に置いてしまっていたらしい。
「あっ…あうぅ…」
会話が無いとはいえ、同じ目的地に向かって歩いてたのだ。
当然、さっきまでの行動は、全て彼に見られていただろう。
それを意識すると、私は聞き返すことも出来ずに、さっき顔を挟み込んだ両手を、そのまま正面に持っていく。
「アルト?」
完全に足を止めてしまった私を、心配したのかタイガが名前を呼ぶ。
「な、なに…?」
恐らく真っ赤になってるであろう顔を、
両手で隠しながらようやくそれだけ答えて、私は指の隙間からタイガの顔を覗き見る。
「ふふっ」
「な、なんで嬉しそうなのよ?」
話を聞いてなかったことを、タイガが怒ってなかったのにはホッとするけども、彼がその表情をする理由が分からない。
「なんだか、この学園に来てから、アルトがしっかりしているところばかり見てたから、すっかり大人になっちゃったんだなって思ってたんだけど…」
「うん…」
ある程度、情けない部分を見せないために、それらしく振る舞っていたのは事実だけど、タイガの寂しそうな表情をみるに、その態度は私の思っていた以上に、彼との距離を感じさせていたのかもしれない。
「今日のアルトを見てたら、やっぱりアルトは変わってないんだって、安心したよ」
「それ、良いのかな?」
それは、ある意味では狙い通りの効果を生んでいたようだけど、どうやらさっきの行動で、それがハリボテであったことがバレてしまったようだった。
実を言うと、今みたいに人の話を聞かずに物思いにふけってしまうのは、故郷にいた頃はよくあったことなのだ。
一応この学園に来てからは、なるべくそうならないように抑えてたのだけど、幼馴染の隣と言うこともあって、つい油断してしまった。
しかし、そこはさすが慣れたもので、タイガは私の失敗を、いつもの事だと笑って済ませてしまう。
「まぁ、嫌われてないのが分かったからね」
「嫌いになんて、なるわけ無いでしょ」
確かに、彼の為を思ってのこととは言え、一方的に距離を置かれた側がそう考えるのも仕方がない。
「ちゃんと大切に思ってるわよ」
「そっか。嬉しいよ」
そのことに気付いた私は、タイガの不安をキッパリと否定したうえで、気持ちを言葉にする。
それを聞くと、タイガは満足したように微笑む。
その表情で、私も想いが伝わったのだと安心しきり
「一番大切では無くなったみたいだけどね」
直後に彼が呟いた言葉を、聞き逃してしまうのだった。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます♪
また次の更新もお楽しみに!!
来週は『人生裁判』も更新予定です




