26 何かの間違いじゃ?
「今使ったのは、初級魔法レベルだったと思うんですけど…」
火球を放って破裂させる。
言葉にすればたったそれだけの事なはずなのに、私は先輩の言った事が信じられ無かった。
「ふむ…お前も同意見か?」
「おれも…時間は掛かるけど、同じ事が出来ると思う…」
「まぁ、確かにお前ならそうだろうな。だが、流石に視界に入る範囲内どこでもとまではいかないだろう?」
「それは…難しいな…」
タイガも同じ気持ちだったのだろう。
先輩に聞かれて、不可能なものではないと主張するけど、続く指摘に、悔しそうにうなずく。
「タイガにも出来るのなら、先輩に出来ないとは思えないんですけど…」
幼馴染を貶すわけじゃないが、仮にもSクラスの先輩だ。
タイガよりも魔法の習熟度が低いとは思えなかった。
「確かに、最初からどのように発動させるのか、全て指示を出したうえでなら、似たような事が出来る奴は居るだろうな」
「なら…」
『なら、別に先輩だって出来るんじゃないですか?』そう言おうとしたのだけど、
「だが、魔法はその性質上、発生した後に追加で効果を加えることが出来ない」
技術的に無理なのだと、はっきり言われてしまう。
「魔法で同じ事をやるなら、魔力を伸ばしてから発動させる必要がある。だが、それで発動するにも限界はあるだろうし、そもそも魔法を、そんな風に使うのはお前以外居ないだろう」
「おれ?」
ただ、一応それにも例外はあるようで、その最たる例としてタイガを指さす。
「とは言え、環境が良かったのだろうな」
「うん?」
「お前のその力は、イメージがより具現化しやすい、アリアス大陸だったからこそ、成長し得たのだろう」
「そう言われても、あんまり実感ないなぁ」
例外だ何だと言いながらも、タイガの魔法を今日初めて見て、ここまで正確に彼の能力を推測出来るのは、これまでの先輩の研究の成果だろうか。
スイネグ先輩は、別にアリアス大陸の出身ではないし、ましてや魔素を感じ取る力が強い訳でも無いのに、ここまでの分析が出来るのは、もはやさすがとしか言いようがない。
「初めからこちらの大陸でそのやり方をしていたら、周りに参考になる奴も存在せず、自分の思い通りに魔法を発動させることも出来ずに、ただの無能が出来上がっていただろうな」
「うぅ…なかなかひどい言い方ですけど、可能性を否定出来ませんね」
こちらの大陸に来て、イメージ通りに魔術が発動出来なかった私は、最初からベネウッド大陸にいた場合のタイガの姿を想像して、彼が私の幼馴染だったことに感謝する。
「ちなみに、詠唱魔法なら一応、発動した後に追加効果を乗せることも可能だが、それも結局は、そうする事が前提の魔法だから、お前みたいに何でも好きなように、という訳にはいかない」
「別に、何でも追加出来るってわけじゃないですけど…」
なんだか先輩が魔術を使えないからこそ、先輩の言葉を全部素直に受け取っていると、そのうち勝手に期待値が上がって、無茶な要求をされるような気がしたので、私は一応釘を刺しておく。
「そんな事は、分かっている。だが、去年あの魔術を見るまで、そもそも追加する事自体が可能だとは思っていなかった」
「あの魔術って、炎雷のことですか?」
けれど先輩は、私の心配を杞憂だと言わんばかりに一蹴する。
そして、先輩の話で私は去年初めて魔術を見せた時のことを思い出す。
「あぁ。元の大陸では、他にも出来るやつは居たのかも知れんが、あの時俺の周りには、何とかして魔法もどきを使うのしか居なかったからな。なかなかに衝撃だったぞ」
「魔法もどき…」
『なら、タイガが使っているのは、魔術もどきですか?』とつい言いたくなったけど、それを聞いても誰も幸せにならないことが分かっているので、私は何とか言葉を飲み込む。
最後に、いくつか私達が質問をしたところで、十分だと思ったのか『もういいだろう』と言って今日は解散することになる。
その時、先輩が『そう言えば…』と、何かを言いかけたのだけど『まぁ、良いか。どうせすぐに知らされるだろう』と、気になる言葉を残して、訓練場を後にするのだった。
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今週は【人生裁判】も更新してます!




