24 違い
「一応聞いておくんだが、お前は魔素の濃淡を感じる事は出来るのか?」
スイネグ先輩は、舞い上がっている私の相手をするのは、時間の無駄だと考えているのか、私が落ち着くのを待つ前にタイガへそう質問をする。
「のうたん?」
「そうだ。後で詳しく説明はするが、こちらと向こうの大陸とで、空気の違いとでも良いのか?あいつはそれを感じれるようだが…」
タイガには質問の内容を理解するのが難しかったようで、頭に疑問符を浮かべているが、先輩は顎を私を指して、同じ質問を噛み砕いて説明する。
「こっちと向こうで、魔法の使い勝手に差を感じるか?ってことよ」
それだけでは、まだ魔法と魔術の違いも、ちゃんと理解出来てないタイガが答えるには難しいだろうと、私は助け舟を出す。
「うーん…そうだね。何となく、こっちの方が息苦しい感じはあるかも?」
「少しは感じ取れるか。まぁ、そうだろうな」
何ともパッとしない返事だったけども、スイネグ先輩は納得したようだった。
理由を聞いてみると、タイガは魔術を使う訳では無いが、魔素の影響を受けやすい環境に居たこと、それと、魔力を必要な時にしか使わないタイプだったことから、幾らか魔素を感じ取れるのだろう、とのことだった。
「俺達は、早い段階で魔力で体を覆うことを覚えるからな。自然と魔素と触れる機会も少なくなっていたのだろう」
「別に、魔力みたいに目に見えるって訳では無いんですけど…」
「だがまぁ、魔術の発動には恐らく関係しているだろう。これもゆっくり調べなければな」
ただ、それに何の意味があるのかは、私には分からなかったけど、先輩の仮説を裏付けるように、私、タイガ、スイネグ先輩の順で、魔素を感じ取る力が弱くなっているのは確かだった。
「それで、具体的にどんな違いがあるんですか?私と他の人の魔術に」
なんだかんだで話が脱線してしまい、別の研究の話になってしまいそうになったところで、私は自分が気になっていたこともあり、話の流れを元に戻す。
「そうだな。やはり1番の違いは、魔素の意識が完全に身体から切り離されている、と言うところだろう」
「はぁ…でもそれって、魔術を使うなら出来なきゃダメじゃないですか?」
ただ、先輩から出てきた言葉に、魔法を使う人には難しい事だとしても、魔術の発動には必須の技術で、それは特別な事では無いはずでは?と思い、私は聞いてみる。
「それがそうでも無い。いや、元々はそうなのかもしれないが、俺の周りでそれが出来るのは1人しか居ない」
「…!……じゃあ、どうやって魔術を使ってるんですか?」
私は先輩の言う1人が、一瞬自分の事かと思い、ピクンと肩を揺らすけど、すぐにさっきの勘違いを思い出し、冷静に質問をする。
先輩によれば、今この学園で使われている魔術の大半が、魔法を使う人の影響を受けて、詠唱を行い手の平など周辺の魔素を固めて発動させられているらしい。
「恐らくは、魔術を使う者の多くが、アリアス大陸出身なのが大きいのだろうな」
私もそうだったけど、アリアス大陸から来た人は、ベネウッド大陸でこれまでと同じ感覚で魔術を使うのは難しい。
そんな中、これが本来のやり方だと言われ、ベネウッド大陸の主流である魔法を教わり、実際にそれが有効だと感じたならば、誰でもこれまでのやり方を捨て、新しい技術を磨く方へと方針を変えるだろう事が予測できる。
私だって、先輩達に会わなければ魔法寄りの魔術を使うようになっていたかもしれない。
何だか、先輩から魔術と魔法の違いの話を聞かされる度に、先輩が私に頑なに魔法を見せない理由、それと、周りの人にも見せないようにする理由が分かってくるみたいだ。
そう思ったところで、私はふとある事に気が付く。
「あれ?でもレイナはどうなんだろう?」
そう、彼女も私と同じアリアス出身で、回復魔法の他に風の魔術も使える。
先輩からすれば、レイナにもあまり魔法は見せたくないのではと考えて、ついそれが口に出る。
「あぁ。あれは、見せたところで大した影響も無いだろうからな」
けれど、それを聞いた先輩の、投げ捨てたような言い方に、私は
「なんか…身も蓋も無いですね……」
と、呟いてしまうのだった。




