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オルタナ外伝ーアルトレア物語ー  作者: 絃芽こう
2学年 波乱の日常

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23 お勉強も大事

「ふむ…いくらか違うな」


質問を終えると、スイネグ先輩の中で結論が出たのか、そう呟く。


「違う?」


何に対しての呟きなのか分からないので、私は先輩にそう聞き返す。


「あぁ。他の奴らは、すっかりここの環境に適応してしまっていたからな。やはり、同じ魔術でも発動条件に差があるようだ。」

「そ、そうなんですね…」


どうやら先輩は、私と他の魔術を使う人とを、比較してそう言ったようだった。


『そうか…お前しか居ないっていうのは、まだ聞いてない人が、私しか居ないって意味だったんだ…』


そうだ。この先輩が、前から研究している内容なのだ。


既に自分の周りの人には、聞き終わっていて当然じゃないか。


そんな事実に、今更気付いた私は動揺して、自分から聞いたというのに、素っ気ない返事をしてしまう。


「後は、もう少し詳しく話す前に…ちょっと良いか」

「は〜い?」


だけど、先輩はそんな私の様子に気付くこと無く、そのまま細かい説明をしようと、タイガを近くに呼ぶ。


「さて、ここからは一段声を小さくしろよ?」


よほど人に聞かれたくないのか、先輩は慎重に周りを見ながら、私達を訓練所の端の方へ誘導する。


『…もう、この先輩は本当に…』


あんな思わせぶりな言葉で、人の気持ちを弄んどいて、結局ただの勘違いだったなんて。


『いっつも言葉が足りないんだから…。さすがに付き合いも半年ぐらいになって、先輩がそういう人だっていうのは分かってきたけども…』


天然なのか狙ってやっているのか、私はそんな先輩の態度に、頬を膨らませながら心の中で愚痴る。




「もう練習は終わりなの?」


先輩が足を止めると、タイガはそう言って私と先輩の顔を交互に見る。


「ここからはお勉強の時間よ、タイガ。やり方は教えたから、後は自分達で練習しろって事ですよね?先輩」


タイガの質問には、先輩のやり方にいくらか慣れてきた、私が代わりに返事をする。


「そうだな。どうせこの後はしばらくは、魔力操作とそれぞれの練習になるからな。セイラかサクフィウス、後はお前の友人が面倒を見てくれるだろう」

「サク先輩もですか?」


私は、先輩から出てきたその名前に、意外だと思って聞き返す。


「あぁ、あいつが面倒を見ていた奴も、Sクラスに行ったことだしな」

「でも、サク先輩って、スイネグ先輩を紹介した後、ほとんど様子を見に来なかったんですけど、今更時間を作ってくれるんですか?」


サク先輩は、本人がSクラスでもあるし、レイナをSクラスに導いたところからも、凄い人なんだろうと言うことは分かる。


けれど、周りから聞こえてくる噂とか、メリッサやレイナとの関係を見ていて、あまり良い印象はない。


勿論、スイネグ先輩達を紹介してもらえた事には感謝しているけれど、私の事をそのまま丸投げにされた感じがあって、どうにも好きになれないのだ。


別に、初対面の時に、レイナばかり褒めて、私の事を何も言ってくれなかったことを気にしている訳ではない。


メリッサから、昔のサク先輩の彼女に対する態度の話を聞いて、嫉妬している訳でも全然無い。


ともあれ、1年生の間、私の事を放っていた先輩が、わざわざ私達の基礎練習に付き合う理由は無いと思ったのだ。


「あぁ。俺が止めてたからな。」

「なっ…!止めてた…?」


それなのに、ここに来て衝撃の事実を伝えられ、私は困惑する。


「ど、どうしてですか!?」


突然そんな事を知らされて、思わず叫んでしまった私は悪くないと思う。


「あいつに任せたら、どうせ見本だとか言って、すぐに自分の魔法を見せびらかすと思ったからな」

「ぅぐっ…、確かに見せられましたね。他の先輩達はほとんど見せてくれないですけどね」


私は、サク先輩の行動が、スイネグ先輩の予想通りだったことに頷くけれど、抗議の意思も込めて、最後の言葉を付け足す。


「まったく…。お前は、人の魔法で影響を受ける実例を見たばかりだろう」

「むぅ…わかってますけど…。ちょっとぐらいは見せて欲しいですよ…」


私は去年、先輩達に騙されて、武術大会の見学が出来なかったりと、上級生達の魔法を観る機会をほとんど得られなかったのだ。


それは先輩が、私に魔法に対して余計な先入観を持たせない為、なのは理解している。


けれど、それと感情は別なので、こうしてむくれた顔をしてしまうのは、仕方がないことだろう。


「はぁ…どうせそろそろ魔力操作以外もやらせようとしてたんだ。あいつらにも好きに教えるように伝えるか」

「ほ、ほんとですか!?やったー!!」


だから、まさかそんな我儘が通ると思っていなかった私は、先輩からお許しが出た事に、つい飛び上がって喜んでしまう。


「余計な事を覚えなければ良いがな…」


そんな風に左手で頭を抱えるスイネグ先輩のため息も、嬉しさで舞い上がる私の耳には届かないのだった。

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