22 練習あるのみ
「誰も…ですか?」
スイネグ先輩自身Sクラスなので、彼の研究に協力したい人は、それなりに居ると思ったのだけど『使えるだけなら確かに居るがな…』と、嘆く姿を見れば、何やら今回教える内容が、複雑になりそうなことが察せられる。
「正確に言えば、魔術を使う感覚を言語化出来る奴が居ないんだ」
「私にも難しいとは思うんですけど…」
スイネグ先輩が求める内容に、私は素直にそう答える。
「だが、セイラよりはましだろう?」
「あの人も魔術が使えたんですね」
「あいつの説明は、擬音が多すぎるからな」
けれど、それを聞けば、少し驚きはあったものの、先輩が嘆く理由に納得してしまう。
「さて、そんな事はどうでもいい。さっさと始めるぞ」
余計な話はここまでだと言うように、先輩が空気を切り替える。
「それと、先に言っておくが、今回の研究内容についてだが、これを公開する予定はしばらく無い」
ついでとばかりに、そう言う先輩に、私とタイガは顔を見合わせる。
「えっと、周りに結構人が居るけど、それは良いの?」
それを聞いて、当然の疑問をタイガが投げかける。
「それに関しては問題無いだろう。外から見るぶんには、普通に魔法の練習をしているのと変わらん」
「それは…確かに」
だがまぁ、先輩のその答えに、私達は納得する。
そして早速、私が2人にお手本を見せて、魔術の練習を始めるのだけど、これが予想以上に難しかった。
「ふむ…これは、こちらのやり方に慣れてしまった者が、感覚を取り戻すのに苦労するのも納得だな」
スイネグ先輩は、そう言って目を瞑りながら、手を前に突き出していた。
『先輩が魔法とか使っているの始めてみたかも…』心の中でそんな事を考えながら、私はタイガの様子も見る。
「んぐっ…似たような感じでいけると思ったんだけどなー」
そう愚痴る様子からして、彼も思うようには、魔術を使えて無さそうだった。
「最初から上手くいくとは思ってなかったけど、やっぱり難しい?」
とりあえず私は、タイガにもう少し何か教えられないかと、声をかけてみる。
「うーん。見た目はアルトの魔法とそんなに変わらないはずなんだけど、何か違うんだよね〜」
「お前の場合は、魔力を体の外に伸ばしてから発動と言う、少し変わった手順をしているが、本質的には魔法と変わらないからだろう」
私達が、あーでもないこーでもないと言いながら練習をしていると、一段落ついたのか、スイネグ先輩が肩の力を抜きながら、違和感の正体を指摘する。
「そうか〜。本当におれとアルトが使っている魔法って違うんだ…」
「そうだな。お前は、いきなり魔術の練習をするよりも、まずは魔力の遮断、それから魔素を感じ取れるようにした方が良いだろう」
ついでに、そうタイガにアドバイスをしてくれるけど、タイガは『よーし、魔力を遮断か!遮断…うーん…どうやるんだ…』と、唸っている。
彼は元々、意識して魔力を使っていた訳じゃないので、魔力を意識的に操作する事に、それはそれで苦戦しているようだ。
「そういえば…」
と、私は先輩の言葉で、前にサヤカが別の理由ではあるが、時々魔力を遮断して練習するようになった事を思い出す。
「なるほど。よし、そいつの面倒はそのままお前が見てろ」
「どちらかと言えば、私の方が面倒を見てもらっている感じですけど…」
それを伝えると、私の反論なんか聞こえてないように、先輩は好都合だと頷く。
「ただし、魔術に関して教えた内容は、セイラの前では話さないように、そいつにも徹底させろ」
「セイラ先輩の前でもですか?」
どうやら、スイネグ先輩は、本気でこの研究については秘匿するつもりのようだ。
「おれもその、セイラって人の前では、魔術?の話をしない方が良い?」
「お前はまず、魔力の扱いから覚えてもらうから、こいつが魔術の話をしない限りは黙っていれば良い」
タイガは、まだセイラ先輩と会ったことが無いので、そうスイネグ先輩に尋ねるけど、まだ自分のクラスメイトの顔も覚えきれていないのだから、先輩の言う通り、余計な事を喋らないように黙っているのが賢明だろう。
「さて、もう少し聞きたいことがあるが、良いか?」
そうして、他にも幾つか、魔術を練習するにあたっての注意事項をタイガに伝えると、そう言って今度はこちらへ向き直り、まるで復習をするみたいに、私に魔術の質問を繰り返すのだった。




