21 内緒の研究
「結局、あの後研究室には来てないんだ」
入学式から数日後。
私とタイガは、スイネグ先輩に呼ばれて、訓練所へ向かっていた。
「うん。私が報告するまで、スイネグ先輩はカインの事を全く聞いてなかったみたいなの」
「てことは、先生達から何も知らされてないの?」
「そうみたいね」
入学式の日の放課後、私がカインついて尋ねた時、スイネグ先輩は初耳だと言って驚いていたのだ。
「やっぱり、先生の所まで案内した方が良かったのかな?」
「それなんだけどね…」
私はここで、タイガにもスイネグ先輩がカインを怪しんでいた事を話す。
「あの時、おれ達は研究の内容までは話してなかったよね?」
「えぇ、そうね」
「てことは、何処かでスイネグ先輩の話を聞いたのは本当なんだろうけど…」
私達が話している内容を、こっそり聞かれていたとして、それだけであの質問には辿り着けなかったわけだ。
「初めから私達に話しかけようとして、潜んでたって訳じゃないんだろうけど…」
「んー、でも、研究室に来てないなら、結局何しにこの学校に来たんだろう」
「それもわざわざ入学式の日にね」
入学式でカインの姿は、来賓席には無かったので、あの日来たのはたまたまだったのかもしれない。
けれど、彼の話していた、スイネグ先輩と会うと言う目的は達成出来ていないし、先生に声をかけた様子も無いのなら、一体何の為にここを訪れたのか、謎は深まるばかりだ。
「今日はいつもより人が多いわね」
そうして話してる内に、私達は第三訓練所へ到着する。
ベネウッド学園には、第一から第三訓練所まであって、第一は魔法を、第二は体術を鍛える人に良く利用されている。
スイネグ先輩いわく、第二訓練所は授業でも良く利用される為、放課後には魔素が枯渇していることが多いそうで、私がスイネグ先輩に呼び出される時は、大体第一か第三訓練所だ。
第三訓練所は他の2つと比べても、校舎から少し離れた場所にあるので、いつもなら練習している人がまばらに居る程度なのだけど、今は第一訓練所でうまく場所を取れなかった新入生が、こちらへ流れてきている影響で、普段よりも訓練所の中は騒がしい。
「来たか」
スイネグ先輩は、先に到着してたみたいで、私達の姿を見付けると、そう言ってこちらへ歩いてくる。
「今日は、よろしくお願いします」
タイガは、最初にスイネグ先輩に挨拶してから、まだほとんど話したことがないので、少し緊張してるようだ。
だけど、スイネグ先輩は当然そんなことをお構い無しに、さっそく今日の研究内容について説明を始める。
「これは、アルトレアがもう少し魔法を覚えてからやろうと思っていたことなんだが…」
それは簡単に言うと、後天的に魔術を使えるようになるか、と言う実験だった。
「本当は、あのユニウス大陸の奴も呼びたかったんだがな」
「サヤカもですか?」
「あぁ。身体強化以外使えないとは聞いたが、魔術でならどうか試す価値はありそうだからな」
サヤカは、魔素の少ないユニウス大陸出身で、去年は属性魔法を使えないながらにAクラス、今年はSクラスに在席している。
魔力操作の技術だけで、学校にそこまで認められているのだ。
先輩の実験で、何かしらのコツを掴むことが出来れば、実力を大きく伸ばす事になるのが予想出来る。
「でも、先輩に教えるのが私で良かったんですか?」
そう、説明を聞いてびっくりしたのだけど、どうやら今回の実験では、私が2人に魔術について指導する事になるらしい。
「私以外にも、魔術を使える人は居ると思うんですけど…」
先輩に教える事自体は、普段の恩返しと言う意味でも、拒否するつもりは無いのだけど、自分以外にも適任は居たのではないかと思い、私はそう尋ねる。
「確かに、魔術を使える奴自体は居るが、参考になる奴が居ない」
それに対してスイネグ先輩は、残念そうにため息を吐いて、そう溢すのだった。




