20 カイン
「ん…?あんたは誰だ?」
いきなり話し掛けられた事で、固まってしまっていた私に代わり、タイガが謎の青年へとそう問い掛ける。
「おっと、申し訳ない。自己紹介の方が先だったか。私はカインと言う。少し気になる名前が聞こえて、つい」
その青年は、カインと名乗ると、そう私達に声を掛けた用件を告げる。
「おれはタイガだ。気になる名前って?」
2人が話している間、まさか話を聞かれていると思ってなかった私は、頭の中がぐるぐるとしていた。
見た感じ、私達と年齢はそんなに変わらなさそうだけど、この学校の人じゃ無さそうだし、今日の入学式の関係者とかなのだろうか?
「あぁ。今、スイネグと言う人の事を話して無かったかい?」
そんな事を考えていると、カインが私の方を見てそう言う。
「あ…えっと、はじめまして。私はアルトレアです」
そこで私はハッと我に返り、タイガに続いて挨拶を返す。
「あの…スイネグ先輩とお知り合いの方ですか?」
取り敢えず、私は彼について何も分からないので、素性を尋ねることにする。
「いや、残念ながら彼との面識は無いね」
「それじゃあ、今日は何をされにここに来たんですか?」
「いや、何。彼の研究内容に気になるものがあってね、直接話を聞いてみたいと思ったのだけど」
やはり、彼はこの学校の生徒では無いようだ。
部外者を勝手に校内へ案内出来ないし、スイネグ先輩も、全く知らない人にいきなり会ってくれるかも分からないので、私はひとまず、彼を教員の所へ連れて行こうと考える。
「ちなみに、スイネグ先輩の、どの研究に興味があるのかって、教えてもらえるんですか?」
「おや、気になるのかい?」
「はい。あの…私、一応彼の助手なので、答えられることがあるかもですし」
けれど、その前に彼が何者なのかを、もう少し詳しく知る為に、私はスイネグ先輩との関係を開示する。
「そうだったのかい!?へぇ、私は運が良いみたいだねぇ」
どうやらそれは、予想以上に効果があったようで、カインは目を見開いたかと思えば、興奮したように今日の目的を話してくれる。
「いやぁ、私も魔法と魔力の塊について、幾らか調べてはいたんだがね、彼のレポートに興味深い記述があったものだから」
なるほど、天才同士引かれ合ったと言う奴なのだろうか。
スイネグ先輩と似たような研究をしている人は、校内には居なくても、他の所には居たらしい。
「まさか、スイネグ先輩以外にも、魔力の塊について、調べてる人が居たなんて驚きです」
「まぁ、私は直接確認出来るからね」
「えっ?何て言ったんですか?」
「いや、何でも無いよ」
研究の為、わざわざ他校まで訪れる行動力に、素直な驚きを私が口にすると、彼が何かを呟いたようだったけど、私が聞き返すと、そんな風に誤魔化されてしまう。
「なんか、凄い人だったね」
カインから目的を聞いた後、私は彼が求める内容については、私がまだ魔力に関しては未熟な事、さすがにこんな道端で話して良い内容では無さそうだと考えた。
なので、それはスイネグ先輩に直接聞いた方が良さそうだと、カインに伝えると、彼は少し残念そうに『そうか…』と呟く。
とりあえず、1度話を聞いたからには、彼をここに放置して行くのは気が引けるので、先生の所へ案内するつもりだったのだけど、『あぁ、それは大丈夫だ』とその提案はやんわりと断られた。
聞いてる限り、ここ以外の学校にも行ってるようだし、そういう事に慣れているのだろうと、私はそれ以上はしつこくせずに引き下がる。
そして最後、タイガに回復魔法が使えるかを聞いていたので、私の友人が使える事、Sクラス以上の生徒に使える人が多い事を伝えると、カインは私達に感謝を告げて、その場を去って行った。
それを見送ると、私達はどちらとも無く、そんな感想を呟く。
放課後になると、私はカインの事をスイネグ先輩に伝えるのだけど、先輩の『俺の研究内容を、他の学校の奴が知っているのはおかしい』という言葉に、カインについての謎が深まってしまうのだった。




