18 才能とプライド
「………はぁ…そうだな。お前にばっかり話させるのも違うか」
私が質問した後、メリッサはしばらくの間、どうするべきか悩んでるようだったけど、最後には観念したようにそう答える。
「まぁ、お察しの通りあたしもそんなに友達は居ないからな。お前ら以外と遊ぶ事はねーな」
「元の、クラスメイトと遊んだりとかは?」
「ふん、先輩方と仲直りしたとは言え、同級生となれば話は別だからな」
どこまで踏み込んで良いのかも分からないので、私は恐る恐ると言うように尋ねるのだけど、彼女の方も腹をくくったのか、思っていたよりも素直に質問に答えてくれる。
「やっぱり気まずいの?」
「そりゃあな。あそこに居るのは、プライドの塊みたいな奴らばかりだからな」
「あんたもそうだったの?」
「むしろ筆頭だったよ。じゃなきゃ、こんな拗らせたりしねぇだろ」
「そっか、それもそうね」
「納得すんなよな」
1度話し始めてしまえば、彼女も気が楽になったのか、私の言葉に不服な様子を見せるけど、以前のようにそれで話を打ち切るなんて事は無い。
「そうなると、元Sクラスの人同士で遊んだりとかも、少なかったりするの?」
「言っただろ?プライドの塊だって。あたし以外の元Sクラスの奴は、皆他の学校に転校してったよ」
「そう…なんだ。なんか、逆によくあんたはここに残ったわね」
「まぁ、タイミングだな」
「タイミング?」
どうやら彼女がAクラスに入ったのは、高等部に上がるのと同時だったようで、他のクラスとの関わりもほとんど無かった為、残る決断をしたのだと言う。
「何だか、聞けば聞くほど、サヤカ達が心配になってくるわね」
「まっ、あいつらなら上手くやるだろ。あたしと違ってこれからが伸びしろだろうからな」
「あんたは違うの?」
「あたしは…もう変わらねぇよ」
ここまで飄々とした態度で話していたメリッサだったけど、この質問には彼女も思うところがあるのか、今日初めて表情を落とす。
「メリッサは、どうして…Sクラスから落ちたの?」
「っ!?」
今日1番踏み込んだ質問だっただろう。
さすがの彼女も、この質問には表情を硬くし、深い瞬きをする。
「っはぁ〜」
それから、深い溜息を吐くと、彼女は私の方を向く。
「何の面白味もねぇよ。単純に実力がクラスの基準に追い付かなくなった。それだけだ」
「そうなのね…」
そして、彼女が質問に答えると、私もそれ以上何かを尋ねることも出来なくて、辺りに静寂が訪れる。
「ガキだったからな…」
そのまましばらく、お互いに黙ったままだったけど、ポツリとそうメリッサが呟く。
「ん?」
「あたしはまだガキだったから、天才って持て囃されて、調子にのってたんだ。」
それに私が聞き返すと、続けて懺悔するように、彼女は話し始める。
それによれば、彼女は中等部に入る前からSクラスだったそうで、杖を使った授業では、好成績を収め続けていたらしい。
だけど、前にスイネグ先輩からも聞いたように、杖と言うのはあくまでも魔法を使う時の補助道具に過ぎないので、ある程度魔法が使えるようになると、段々と杖離れをしていくのだとか。
勿論それは彼女達も例外でなく、学年を追うごとに、杖を使う人は減っていったらしい。
しかも、彼女が居たのはSクラス。
中等部に上がる頃には、既に半数近くが杖を使わなくなっていたそうだ。
そして、2年生になり、自分以外のほとんどが杖を手放したのを見て、彼女もまた杖を手放したそうだ。
しかし、どうしたことか、彼女の成績はそれからすっかり伸び悩んでしまったらしい。
幸いにしてその年は、サク先輩達の手助けもあり、なんとかSクラスで進級を果たしたそうだが、3年生では、自ら彼らとの関係を断ち切り、そのまま成績は下降し続け現在に至るのだとか。
「まっ、だからよ、あたしも成績が伸びない時の悔しさだとか、期待に応えられなかった時の怖さとかは分かるつもりだ」
「そう…ね…」
そこまで話し終えた彼女は、パシパシと背中を叩いて、今の私に共感の意を示してくれる。
「だからよ、その幼馴染とは早めに話したほうが良いと思うぜ」
「分かった…わ」
その上で繰り出されるアドバイスには、かつてそれを経験した者の重みがあった。
「あたしみたいに変に拗らせちまう前にな」
「ふふっ。ありがとう、メリッサ」
けれど、そこからニカッと笑う彼女に、私は勇気付けられるのを感じるのだった。




