17 気にし過ぎ?
「やれやれ、まったく悲しいねぇ」
私の話を聞き終わると、メリッサがそう言った。
「あたしらの絆は、そんなポッと出の男に負けるぐらい、脆いものだったのか」
「なっ…ポッと出って。あいつの方が付き合いが長いって、今話したばかりでしょ?」
別に慰めを期待してた訳じゃないけど、続く彼女の言葉が予想外で私は驚く。
彼女には、私が魔法を知ったきっかけや、タイガとの関係を簡単に話したつもりだったのだけど。
「でも、この1年を一緒に居たのはあたし達だ。それでもあいつの方を気にするのか?」
「う…ん…。だって、ずっと一緒だったから…」
なんて思っていると、彼女からそう言われて、私はハッとさせられる。
それでも、やはりタイガから失望されるのには耐えられないと、私はそう言う。
「だったらよ、そんだけ長い付き合いだってんなら、気にする必要無いんじゃねぇのか?」
「どうしてそう言えるの?」
メリッサは軽い調子でそう言うけど、私の不安は拭えない。
「わざわざこんな遠い所まで、幼馴染を追いかける為だけに来る奴が、そんな簡単に愛想を尽かしたりするのか?」
「それは…」
「それとも、お前の幼馴染はそーゆー薄情な奴なのか?」
「そんな事無い!」
だけど、タイガがメリッサの言うような人では無い事は、はっきりと言える。
なので私は、彼女に少し大きめに反論をする。
「だったら、何も問題ないだろ。お前が気にし過ぎなだけだ」
「うぐ…そうかも知れないけどさ」
それに対し、彼女から逆にそう指摘された事で、私はそれ以上強く言い返す事が出来なくなり
「それでも、怖いものは怖いよ…。人の気持ちがどう変わるかなんて、分からないんだから…」
と、仕方がないだろとでも言うように、私は彼女に対してそう愚痴る。
「…なぁ、あたしとあんたは友達でいいんだよな?」
それからしばらく会話が止まったかと思うと、メリッサが確認するようにそう問い掛けてくる。
「当たり前じゃない。私は…そう思ってるけど…」
それに私は当然だと即答するが、正直なところ、タイガ以外にまともな友人関係を築いて来なかったので、あまり自信は無かった。
「そうか。まぁ…ならよ、たとえ他の奴らからそっぽ向かれたとしても、あたしらは1人にはならない。そうだろ?」
「そう…ね。少なくとも、私とあなたで2人ね」
けれどそれは、無用な心配なのだと悟る。
「それにな、自分にとっては価値のある事が、他の人にとっては、大したことないなんてままあるもんさ」
そして、その心を後押しするようにメリッサが付け加える。
「それって経験談?」
少し前まで、今の私と似たような状況だった彼女に、暗に卒業式の日の事か?と言う意味を込めて聞けば
「あぁ。経験談だ」
と、とても晴れやかな顔で返される。
「まっ、どっかのお節介がケツをひっぱたいて、ようやくそれに気付けたんだけどな」
「何よそれ」
「ふっ」
「ふふっ」
そんな風に軽口をたたき合えば、随分気が楽になったのを感じる。
『はぁ、あんな事言っといて、私も全然幼馴染離れ、出来てなかったんだなぁ』
私は、昨日の事を振り返りながら、改めて『人の気持ちがどう変わるか分からない』というのが、自分にも当てはまるのだと実感する。
『さんざん偉そうに私に頼るな〜なんて説教したくせに、私の方があいつと離れるのを怖がってるなんて、とんだお笑いぐさね』
そして、自嘲気味にそんな事を考えると共に、こんな面倒な話にも、私が納得出来るまで付き合ってくれる友人に、心の中でそっと感謝をする。
「そう言えば、あんたって放課後いつも暇そうにしてるけど、私達以外と遊んだりしないの?」
と、話が一段落したところで、私はふと気になってた事をメリッサに尋ねてみる。
「あー、どうだかな。何で今そんな事聞くんだ?」
「んー、ちょっとね。ほら、私とあなたって、去年同じクラスだったけど、思ってたよりお互いの事知らないなぁって思って」
私達は、4人で集まって遊ぶ事は度々あったけど、Sクラスへ行ってしまったレイナやサヤカと比べて、2人きりで話すことは少なかったように思う。
それに、ここ数日彼女は、元クラスメイト?の事を避けてるせいか、あまりこうして話すタイミングもなかったので、いつもなら自分の中にしまっておく疑問を、私はこの機会にと思い、彼女へ投げかけるのだった。




