08 珍しい?
「さて、お前はアルトレアの幼馴染みなんだと?」
ワタリとの一件を片付けると、スイネグ先輩は、さっきまでの事が無かったかのようにタイガへ質問をする。
「はい」
「ならば、こいつと似たような事が出来ると言う認識で良いのか?」
「うーん、せっかく期待してもらってそうなんだけど、おれはアルト程上手には、魔法は使えないかなぁ」
タイガの答えを聞いて、スイネグ先輩はがっかりするだろうかと、私は2人が話す様子を見ているのだけど『まぁ、そうだろうな。』『すみません』『ふん、気にするな。こいつみたいなやつが、ポンポンと出て来た方が困る』なんて、私の想像していない方に話が進んでいる?
あれぇ?先輩の中で、私ってどんな枠組みなんだろう。
そんなことを考えてる間も、2人の会話は続いてく。
「先程のあれは意識的にやったのか?」
「あれ?」
「自覚は無さそうだな。どうやら、お前は魔法も使えるようだな」
「それは、使えますけど…」
「そういう意味じゃないんだが…。面倒だな…アルトレア、後で説明してやれ」
「えっ?あっ、はい!」
突然私に声を掛けるのでびっくりしてしまったけど、話はちゃんと聞いていたので、私は慌てて返事をする。
私は気付かなかったけど、恐らくさっきのワタリとの会話中に、タイガが魔力を放出するようなことをしたのだろう。
なので、この説明と言うのは、魔法と魔術の違いを教えておけと言うことなのだろう。
「いや、そうだな…説明はまだいい。その代わり、お前の事は時間が空いてるときに俺が見てやろう」
「えっ!?」
「えっ!?」
と、そこまでは予測出来ていた流れだったのだけど、その後の言葉にワタリだけでなく、私もびっくりした声を上げてしまう。
「えーと、ありがとうございます?」
「ふっ、幼馴染みだからか知らんが似たような反応をするな。まぁ、お前の方が些か素直なようだがな」
そこまで話したところで、スイネグ先輩は『これでもう用は済んだだろう』と、私達を研究室から追い出すけど、私は頭の中が『何で?』と言う文字で埋め尽くされていて、隣でワタリが騒いでいる声も耳に入らなかった。
「どうしたの?さっきからぼーっとしてるけど」
そして、気が付けばワタリは私達の側から居なくなり、寮へ向かう道をタイガと2人で歩いていた
「あっ、うん。えっと、珍しいと思って」
「珍しい?」
「うん。ほら、スイネグ先輩って、見ての通り気難しい人だから、会ってすぐにあそこまで言ってくれるのって、初めて見たから…」
「うーん。確かにワタリ君は、ボロボロに言われてたね」
タイガは『もしかしたら、アルトと幼馴染みだから、優しくしてくれたのかな?』なんて言ってるけど、先輩がそれぐらいで自分から面倒を見ようとする訳がないのは、私が一番良く知っていた。
つまりは、あの短時間でタイガが、先輩の興味を引く何かを見せたということに他ならない。
と言うか、タイガは私と同じように魔術が使えて、かつ私が練習している魔法も使えるかもしれないとなれば、興味を持たないはずもない。
そこまで考えると、私はタイガに対して『そうね』なんて気の無い返事を返すことぐらいしか出来なかった。
「なんか、考え事してる?」
しかし、そこはさすがの幼馴染み。
私の気が逸れていることを瞬時に看破してくる。
だけどここで、思っていることを正直に話すことも出来ないので『まぁ、ちょっとね』と私は誤魔化す。
「そっか。アルトがそういうなら良いけど。」
タイガも、それ以上は追及してこないので、私達はそのまま別の話をしながら歩き続ける。
その内容は、『それにしても、この学校は本当に広くて迷子になっちゃいそうだ』『学年の外も気を付けないと帰ってこれないかもね』だとか、『そう言えば、ミネガン先生がこの前結婚したよ』『えー!?そうなの?うわー、お相手は誰なんだろう』とか、離れていた間の1年間を埋めるようなものばかりで、お互いに話したいことが尽きることは無かった。
そして、それぞれの部屋への分かれ道に着く頃には、私の気分もすっかり戻り
「改めて、これからまた宜しくね♪」
と、笑うタイガに
「うん!またよろしく」
私もまた、笑顔でそう返すのだった。




