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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが流浪の旅を始めるようです
51/53

TASさん、再会す。

更新遅れました


最近は色々と忙しいので

不定期更新になってしまいそうです


2017/6/20


一部、加筆修正しました


あと、「ちゃお」の挨拶の下りが、某小説にて既出だったため(?!)

「ぼんじゅーる」に置き換え致しました


まさかここが被るとは……

 ブリッジのような姿勢になっている所為で、上下が逆さまになっている私の視界に入ったのは、一人の女性だった。


 薄い紫にほんの少しだけ赤を混ぜたような、淡い色の髪。

 薄い灰色の瞳。丸みを帯びた童顔。


 背丈は平均的な成人女性のそれよりかなり高めなのだが、仕草の一つ一つが子供っぽい雰囲気が感じ取れる。


「あわわわわ」


 彼女の事は、仮に、女性Aと呼称する事にしよう。


 女性Aは、口に両手の指を入れて、がたがたと歯を鳴らしている。

 この仕草から見て、もう子供っぽいのだが、潤んだ目やら、童顔やら、様々な要素も相まって、非常におどおどとしている事が解る。


 声も、まるで子供のそれだ。

 なんだろう。幼い少女が、時間によって無理矢理大人にされたような、そんな、どこか不安定な印象を私は受けた。


 取り敢えず、挨拶をしよう。


 私は、にんまり、と、笑みを浮かべながら、挨拶をした。


「ぼんじゅーる」


「ひ、ひっ!ひいぃぃぃぃ!」


 すると、女性Aは、此方を向いたまま、物凄い勢いで後退を始めようとする。

 が、背後の既に閉まってしまっていた外開きの扉に背中を思い切りぶつけてしまった。


 扉を沿って、ぺたり、と、床に座り込んでしまった女性Aは、此方を怯えた目で見る。


 ……酷く怯えられてしまった。


 おどおどしているものだから、笑顔を作って、軽い感じの挨拶をしてみたのだが……。

 何か怖がらせるような事があったのだろうか?


 というか、この人誰だ?

 状況的に考えて、この人が私を此処に閉じ込め、ベッドに縛り付けた、という筋が妥当だが……。


 なら、一体何故、こんなにも怯えているのか……って、あ。


 そうだ。


 私は今もベッドに縛り付けられたままで、身動き一つ取れていない、というのが、縛った側からすれば本来の状況であり、こうやって私がベッドから抜け出しているこの状況は、彼女からすれば異常な事態なのだ。


 下手をしなくても身の危険に繋がる、非常事態なのである。


 そして、その危険人物が大きな凶器を握り締めながら、ブリッジをした状態で、笑顔で、ボンジュール、などと挨拶してくるのだ。


 軽くホラーである。


 うん。怖がるワケだ……いや、ここまで怖がっているのは、恐らく、本人の性格なのだろうが。


 そもそも、フランス語でおはようなんて言葉が正しく翻訳されているのか、分かったものでもない。


 この調子だと、まずは警戒を解いてもらう事が必要だろう。


 それから、ゆっくりと話を聞く事にしよう。


 そうでもしないと話が聞けそうにない……というか、怖がられ、逃げられてしまうかもしれない。


 暴力に発展するかもしれない。……この場合は、暴力は建設的な手段とは言えないだろう。


 というか、相手の力量が未知数だ。迂闊に戦闘になっても、どう転ぶか予測できたもんじゃあない。悪手極まれりである。


 兎にも角にも、先ずは情報、だ。


 先程まで、私を縛り付けた犯人に会ったら一発喰らわせてやろう、と、かなり怒っていた私だが、ここまで怖がられてしまっては毒気が抜かれるというものだ。


 初回限定で許してあげようじゃないか。

 その恐怖に満ちた顔に、嘘は見られなかった。


 先ずは、先程も思考したように、警戒を解かねばならない。


 私は”とても大きなハンマー”を消し、ハンマーの柄を握っていた手を地面につく。


 完全にブリッジの姿勢になった。


 そして、その状態で右腕に力を入れ、体を跳ね上げる。


 片腕だけに力を入れたため、私の身体は、くるくる、と、時計回りに回転し、今度は腕立て伏せのような状態に。


 そのまま腕で地面を押して、起き上がる。


 その時。


 ごきり、と、私の手首が嫌な音を立てた。


「っ……」


 あぁ、忘れていた。


 私は先ほど、一度、謎の拘束器具を抜ける為に、手首やら、足首やらの関節を無理に外してしまっていたのだった。

 用を足した後に一度嵌め直したのだが……


 一度外すと、やはり、外れ易くなってくるものだ。


 外れた上に、捻ってしまった。


 結局、腕には力が入り切らずに、起き上がり切れず、バランスの崩してしまい、そのまま私は床に倒れた。


 うーん。

 左手首を捻挫してしまった。かなり痛い。私、ドジである。


 やはり、私は、人間的な思考と機械的な処理の区別がちぐはぐらしい。

 その辺り、訓練して適合させていかねばならないだろう。


 ゆっくりと立ち上がった私は、右手に”闇属性魔法”でナイフを作り出し、服の左袖を、渦を巻くように切り、長い布を作る。その布を服から切り離し、手首を縛るように巻きつけ、端と端を結ぶ。


 因みに、ナイフ構築から処置の終了までに掛かった時間は、二秒三十七秒五十一。

 まぁ、特に時間を気にする訳ではないが、時間の計測をしてしまうのはTASの(さが)というものだ。


「ああ、あ、あの、だ、だだだ、だいじょう、ぶです、か……って、あれ?いつの間に……その手……」


「あのー」


「ひ?!ひ、ひぃぃぃ!ひぃぃぃぃ!」


 ……やはり、落ち着かない人である。

 情緒不安定にも程があるというものだ。


 ……うーん。どうやって落ち着かせようか。


 そんな事を考えていたその時。


 がちゃり、と、ドアの取っ手が捻られる。


 女性Aの背中が当たってしまっているので、開かない様子。

 誰だろうか。もしかして、私を謎の拘束器具に縛り付けた、共犯者?


 まぁ、この目で見れば解る事だ。

 そんなに深く考えることでもないな。考え過ぎるのは、私の性格なのだろうが、気張り過ぎても失敗をする。落ち着かないと。


 さてさて、情緒不安定な女性の次は、一体どんな人が現れるのやら。


 ぎぃぃ、と、音を立てて開く扉。

 ドアに寄りかかって座り込んでしまっていた女性Aは無理やり押し退けられた。


 そして、ドアの向こうから現れたのは。


「おい、ヤブ医者。家のドア空いてんぞ、鍵くらい閉めとけよ……って……あん?」


 謎の生物に首を吹っ飛ばされて死んでしまった筈の、イゴールさんだった。


 ……あれれ?

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