TASさん、逃走する。
グロ注意。
2017/2/16
作者の私生活が少しごたごたしているため暫く不定期連載となります(´・ω・`)ゆるしてね
あと、世界地図云々のくだりを無くしました
私の目の前に置かれたそれは、とても飲料とは思えない様な物だった。
グラスに入った、黒、というより、”どす黒い”と言った方が正しい様な、悍ましい色をした、存在感抜群(悪い意味で)の禍々しい液体が、ぽこ、ぽこり、と、気味の悪い音と共に、大きな泡を立てている。
漂う強烈な異臭。私は堪らず、即座に嗅覚を遮断した。
瓶を遠ざける私を見て、イゴールさんは不思議そうに、聞いてきた。
「おい、飲まないのか?」
「ふじゃけないれくらさいよ……。あんなもの、のめるわけないれしょうに」
すると、イゴールさんは首を傾げる。
「お前、オレンジジュース、嫌いなのか?」
「はぃ?!」
これがオレンジジュース?
こんなものは、私の知っているオレンジジュースじゃない。
オレンジジュースを飲んだ事はないけれども。
しかしーーーーそれでも、目の前のグラスに入った、この液体が、オレンジジュースでない事だけは分かる。
というか、飲み物じゃあないだろう、コレ。
「うん?何をぶつぶつ言ってるんだ?それはオレンジジュースだろう」
「あなたのしっているおれんじゅーすはこんなきもちわるいいろをしているのれすか?」
「気持ち悪い色?一体何を言っているんだ?その飲み物は、しっかりとしたーーーー」
————橙色じゃないか。
イゴールさんがそう言った、次の瞬間。
ぼとり、と。
何かが、落ちた音。
それと同時にーーーー
私の背中に、酷い寒気が走った。
私は、ぶるり、と、身を震わせる暇もなく。
「うらぁ!」
イゴールさんに、腹を殴られ、吹っ飛んだ。
がらがらがら、と、酒場のテーブルを倒しながら、私は後ろに吹っ飛ぶ。
そして、身体が止まった直後、私は、起き上がる間も無く横向きに倒れながら、朝食を嘔吐した。
ーーーー吹っ飛んでいる最中に、見えた光景。
カウンターの上に、酒場の店主の首が乗っていた。
そしてーーーー私を殴った時の姿勢のまま、首を無くし、動かないイゴールさん。
うねうね、と、流動する様に動く、謎液体。
————今、何が起きた?
なにがどれでどれがなにで店主の頭とイゴールさんの頭はどうなっている?
頭がごちゃごちゃだ。パニック状態。
どうしてさっきまで歩いていた宿屋の店主の首が無くなって、そこから血がぶしゃぁと噴き出していてイゴールさんも首が無くなって、血が、血がーーーー。
いや、今はそんな事どうでもいい。
ただ一つ解るのは、ここにいちゃいけないって事だ。
逃げないとーーーー。
私は嘔吐物をバラ撒きながら、”肉体操作”で強引に身体を動かし、立つ。
そして、全速力でその場から走り去った。
◆◆◆◆◆
私は逃げる途中、宿屋に寄った。
二階の物干し場から侵入。
物干し場から宿屋内に入るルートには、途中には鍵が掛かった扉があったが、簡単な構造だった。針金を差し込んんでから零秒二七でピッキング完了。
二階から侵入した後、廊下を走り、自分の借部屋に入る。
そして、部屋の中の自分の荷物を六秒七三で全て回収。
ゲロ塗れになった服を三秒八九で着替え、部屋を出て足で扉を乱暴に閉め、階段を降りる。
私は宿屋の受付の机に、部屋の鍵を、ぐさり、と、突き刺し、今までの宿代、大銅貨三枚を机に叩きつけて、宿屋を出た。
そして、走る。
全速力で、走る。
十二秒三八で町の門に到着。
門番が煩いが、無視して通過。
筋肉はずたずた。
足の骨にはヒビが入った。
鼻血も止まらない。
だが、足を動かす事を止めない。
私は”回復魔法”を損傷部位に掛けながら、走り続ける。
最速で逃げる。死力を尽くして逃げる。
逃げないと、死ぬ。
私の頭はもう、逃げるという事しか考えていなかった。
私は、走り続けた。
血反吐を吐いても走った。
日が暮れても走った。
そして、夜が明ける頃。
私は、体力にも、精神にも、限界を迎えた。
くらり、と、眩暈がした後、私はその場に、ばたりと倒れた。
気絶。




