TASさん、ドジる。
2017/2/12
変更
籠の運び方について
背中に背負う→左肩に背負う
五キロの衝撃で変色→五百グラムの衝撃で変色
ぎぃぃ、と、両開きの木製扉の片方を開く。
私は、黒くて大きな籠を左肩で背負っている。
この籠の中には、依頼の納品物である、リストロ草が、大量に詰め込まれている。
ちなみに、籠は、闇魔法で作った謎物体で出来ている。
どうやら、闇魔法では、複雑に細く絡み合っている様な形は、造形出来ないらしいので、手作業で紐を編んで、リストロ草が落ちない程度の目の粗さの籠を作った。
私が、前、森への着陸に使ったパラシュートは、普通に造形出来ていた。
なので、二つの形の特徴を比較して、冒険者ギルドへの帰路に着きながら、パラシュートと籠の形の一部分を作り続け、何が原因で籠を作れなかったのか、検証をしてみた。
そして、分かった。
闇魔法は、謎物体が捻れたり、曲がったりする箇所が一定の数を超える形をした物を、造形出来ない。
私の場合、謎物体を捻る箇所の限界数は五十三ヶ所までだったが、他の闇魔法使いがどうなのか、私は知らない為、”一定の数”という表現にした。
私の作ったパラシュートは、腰に、紐状の謎物体のついたベルトを作り、そして紐のもう片方の先に畳んだ布の様な謎物体を付けただけだ。
捻れたり、曲がったりした部分は、畳んだ状態の布の生成時に、二十ほど生まれただけである。
複雑な物を作ろうとしなくて、本当に良かったと、今更ながらに思う。
そして、簡易パラシュートと違って、籠は、曲がる箇所が非常に多い。なので、作れなかった。
作れなかったのだが、籠は必要だった為、手作業で作ったのだ。
大きな布状に、謎物体を広げ、それでリストロ草を包む事もできたが、それだと薬草に衝撃が入ってしまう。
リストロ草は一定以上の衝撃が加わると、急激に変色し、なんの効果もない、枯葉の様な状態になってしまうらしい。
ギルドで読んだ本に、そう書いてあった。
どれくらいの衝撃だと変色するのか、正確な値が分からなかったので、これも、帰り道で、リストロ草を手で叩いたりして、検証した。
結果、五百グラム以上の衝撃が0.47秒以内に急激に伝わった場合、葉の色が変色する事が分かった。
非常に繊細だった。何処が、"強い衝撃"で変色する、だ。指で弾いただけでも変色するではないか。
袋に入れて引き摺ったりしたら、確実に変色してダメになる。
その為、ある程度、硬い物体で作らねばならなかった。
……まぁ、普通に、謎物体をそのまま変形させて、隙間のない容器を作る事は出来たのだが。
籠が作れないという事実が、何処か、むかっとしたのだ。
ちょっとした、意地の様なものである。
出来なければ、他の事を探す、という事が、一番効率的である事は分かっていたが、たまにはこうやって、遠回りする事もいいだろう、と、思った。
それだけだ。
こういう事を考えられる辺り。
ああ、私は生きているのだ、と、実感できた。
————まぁ、それは置いておいて。
まずは、左肩に背負った籠の中の物を、納品し、金を貰わねば。
私は、冒険者初依頼の達成という、大きな一歩を踏み出しーーーー
————それを、思い切り踏み外した。
がつん、と、背中に響く、衝撃。
私は、リストロ草の入った籠を。
決して、衝撃を加えてはならない籠を。
あろうことか、冒険者ギルドの両開きの扉の、開けていなかった扉に、ぶつけてしまったのだったーーーー




