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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが流浪の旅を始めるようです
33/53

TASさん、冒険者カードを作る。

前話の"マ◯チコピー機"を"レジスター"に変更させていただきました。


詳しくは前話の前書きをどうぞ。

「……うわぁ」


 私は思わず、そんな声を漏らす。


 木製のカウンターの上に乗せられた”魔導具”らしき物は、前世(?)で、コンビニエンスストアや、スーパーの受付、その他商業施設のほぼ全てに置かれている精算機械、”レジスター”のような見た目をしていた。


 プラスチック製のボディは、石造りの壁に、木製の床といった、冒険者ギルドの内装に全く似合っておらず、異様な存在感を放っている。


「あら?どうかしたのかしら?」


 受付の女性が、不審そうに聞いて来たので、


「いえ、なんれもないれす」


 と、誤魔化す。


 これ程までに露骨な場違い感を発している物を見るのは、人として、この世界に生まれてから初めてだ。声を漏らしてしまうのも、無理はないだろう。


 受付の女性は、暫く私を、じっ、と、見つめた後、


「まあ、いいわ」


 といって、視点を机の上の魔導具(レジスター?)の方に移す。


 そして、説明を始めた。


「使い方は、ほら、この魔導具から延びてる管の先に、小さな四角い箱の形をした道具がくっ付いているでしょう?それに入っている線を境目に、管が繋がってない方を右回りに(ねじ)ると、小さな針が出てくるのよ」


 魔導具(レジスター?)から延びている一本のコード(これまたプラスチック製である)の先に繋がっている、指先ほどの大きさのキューブ。


 私は上下二つのパーツに分けられて組み立てられているそれを手に持ち、くいっ、と、捻る。


 すると、鋭い針が、三本程出てきた。


「それを、指先に刺しちゃって。どの指でもいいわ。ちくっとするけど、あまり痛くはないから、安心して」


 衛生面などに問題は無いのだろうか?とか、魔法などを使えば、人の血を悪用したりできるんじゃないのか?と、暫く考え込む。


 衛生面に関しては、見た目、清潔にされていそうだったし、何より、私は今、色々と疲れているのだ。腕相撲やら、ギルドのツートップとの遭遇やら、まだ、今日は起きてから三時間も過ぎていないと言うのに、色々な事が起こり過ぎだ。登録を早く終わらせて、依頼を受け、それを達成し、宿のお布団ですやすや眠りたい。


 そう考え、私は受付の女性の言う通り、針で指を刺す。


 ぷす、と、針が指に突き刺さる。


 受付の女性の言う通り、痛みはあまり無かった。


「そのまま三十秒くらい、刺し続けてねー」


 そう言われ、三十秒後。


「はい、もう良いわよ。普通に抜いちゃってね」


「あらったりしないんれすか」


「針を戻せば、箱の中で勝手に洗ってくれるらしいわよ?いやぁ、本当に、この魔導具、一体どういう仕組みになってるのかしらね。皆目見当も付かないわぁ」


 構造も分かっていない物を、使って良いのかと、かなりしんぱいになったが、今まで長い間使われ続けている物らしい。


「噂じゃ、この魔導具は、作られてから、もう三百年は経ってるらしいわよ?まぁ、ただの噂だから、信ぴょう性は無いんだけど……。どうにも、この魔導具、それくらいの年月、耐えられるくらいには頑丈みたいなのよねぇ。この前、うっかりコーヒー零しちゃったんだけど、全然問題は出てないし」


「……こーひー、こぼしちゃったんれすか」


「あら。つい口が滑っちゃったわ。この事は内緒にしてね?じゃないと私、クビになっちゃうかも」


「……」


 そんなやり取りをしながら、受付の女性は、カウンターに戻り、何やら魔道具(レジスター?)のボタンを、慣れた手つきで、かちゃかちゃ、と、押し、最後に、ったーん、と、キーを叩いて音を鳴らした。


 すると。


 魔導具(レジスター?)が、おかしな挙動をし始める。


 それは、小刻みに震え始めたと思えば、何やら音を鳴らしながら、カウンターの上を跳ね回り始めた。


 がちゃがちゃがちゃがちゃ。


 ぎぃ、ぎぃ、ぎぃ。


 ごちゃん、ごちゃん、ごちゃん。


 ちちちちちち。


 ぴよ、ぴよ。


 どがぁん!


 そんな、ギャグ漫画のような効果音を大音量で垂れ流した後、魔導具(レジスター?)から、ゔぃー、という音がして、何かが、かちゃり、と、落ちる音がした。


 受付の女性は、その、落ちたらしい物を取り、私に渡した。


 それは、文字が刻まれた、銅色の金属板だった。


 どうやら、これが”冒険者カード”らしい。


 記載されていた情報は、


 ——————————

 名前 タスさん

 職業 ?

 ランク C 実績 なし

 ——————————


 と、いった、シンプルな物だった。


「それが”冒険者カード”よ。書いてある事を簡単に説明するわね。名前はそのまま、あなたの名前の事ね。職業は、主に、自分の戦い方を表す表示ね。これは後から登録申請が出来るわ。ランクはF、F+、E、E+、D、D+、といった感じで続いていって、それがA+まで続いて、そして、最後にSランクで終わるわ。Sランクは、凄く強い人しかなれないランクよ。ちなみに、あなたは”推薦状”を受けていたから、Cランクからのスタートよ。ランクによってギルドカードの色が異なったりするのだけれど、これは実物を見た方が早いだろうから、あっちに置いてある見本カードの色を見て覚えてね。実績っていうのは、あなたが冒険者として成し遂げた事を表す表示。これは、達成したギルドの依頼なら、申請すれば表示させる事が出来るわ。まぁ、これくらいかしら。分かった?」


「はい」



「うん、それならオッケーよ。……はぁ、それにしてもこの魔導具、カードを作っている時は、やけにうるさいのよね……。音に何か秘密があるのかしら。本当に謎が多いわ。けれど、それを解いてこそ……うふふふ」


 何やら、黒い笑みを浮かべて、受付の女性が笑っている。


 それを暫く見つめていると、彼女はこちらを向いた。


「あらら。ごめんなさいね。そうそう。私は今、仕事中だったわね。うふふ、”冒険者カード”を持ったあなたは、これからは”冒険者”として認識されるわ。まぁ、見た目で人を決めつける人もいるから、苦労するでしょうけど、頑張ってね」


「はい」


「じゃあ、あっちの人が集まってる方に、依頼の紙が貼り付けてあるから、それを剥がして、ここに持ってきて頂戴。……あら、他の人が来ちゃったわ。もうちょっと話をしていたいところだけど、私は他の人の応対をしなきゃならないわ。それじゃあ、冒険者生活、頑張って」


「はい。たすかりました」


「いえいえー」


 そうしてようやく、私の冒険者登録は終わった。


 さて、早速、依頼を受けないと。推薦状のお陰で、登録料は支払わずに済んだが、装備なども整えないといけないとなると、銀貨一枚では足りないだろう。お金を稼がねば、そのうち宿にも泊まれなくなる


 私は、暖かいお布団で眠るため、野宿をする羽目にならないために、依頼の貼り付けてある壁に、”冒険者”として向かうのだった。


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