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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが流浪の旅を始めるようです
31/53

TASさん、冒険者ギルドにて。

 冒険者ギルド、機関長室(マスタールーム)内にて。


「テメー、いい加減にしろよ!”一般人に勝負を吹っかけるな”って、何回言えば分かるんだ!テメーは”反省”という言葉を知らねーのか!?」


 私の隣で正座をしている黒光りマッチョに、赤い長髪のお姉さんが、そう怒鳴り散らす。


「はっはっはっ!仕方ないだろう!筋肉が私に”戦え!"と語りかけて来るのだから!俺はそれに従っているだけだ!」


 黒光りマッチョは、笑いながらそう言った。


「ざっけんな!毎回毎回テメーを注意する羽目になるアタシの事も考えろや!アタシはテメーと違って忙しいんだよ!」


「はっはっはっ!酷い言い様だな!これでも俺は”機関長(ギルドマスター)”なんだぞ?もう少し敬ってくれても良いんじゃないか?」


「毎日毎日、当たり前のように業務を放り出して、外で訳の分からない勝負を一般人に挑ませ、怪我人を量産させる奴を”機関長ギルドマスター”なんて呼んでたまるか!」


 “機関長(ギルドマスター)?”名称の響きからして、”冒険者ギルド”のトップ?


「ああ、そうだよ。そういやアンタ、コイツと勝負したんだろ?その、怪我とかしてないか?大丈夫なのか?」


「とくに、もんらいはないれす」


「はっはっはっ!この嬢ちゃん、なんと、腕相撲で俺と引き分けやがったんだ!」


「はぁ?!それホントかよ?!」


 土台が壊れたから、一応、引き分けという事になっているが、実際はほぼ負けたようなものだ、と、伝えると、


「それでもスゲーんだが……。えぇ?こんなちっちゃいのに?」


 私はその言葉を聞き、思わず、むっ、とした表情になる。


「ああ、ゴメンゴメン。……てか、この子なんでここにいるんだ?おい、テメーが連れて来たのか?あぁん?」


「ああ、この嬢ちゃん、冒険者登録がしたいらしい。帰って来るついでに連れて来た」


「はぁ……。機関長室(マスタールーム)は関係者以外立ち入り禁止なんだけどなぁ……。テメー、機関長(ギルドマスター)なんだから、規則ぐらい守れよ」


「はっはっは!すまんすまん!」


「あー、ちびすけ、冒険者登録がしたいなら、一階の受付に行ってくれ。登録料には銅貨が五枚必要だからな……。ああ、そうだ。詫びをしないとな」


 そう言って、お姉さんは、手に持った巾着袋を、ゴソゴソ、と、探る。


「ああ!俺の財布!……はぁ、いつの間にスったんだ?いつもの事ながら、全然分からん」


「これだけは得意技なんだ。脳筋なんかにおいそれと見抜かれてたまるかっての」


「脳筋?おいおい、そんなに褒めてくれるな。照れるだろう?」


「褒めてねぇよ」


 お姉さんは、巾着袋から硬貨を取り出し、私に手渡した。


 それは、金貨だった。


「いたらけません」


 この世界では、大陸毎に流通している貨幣が違うのだが、この大陸、”ガイア”では、硬貨が主に流通しており、”金貨”と言うものは、十種類ある硬貨の内、上から三番目に価値がある硬貨である。


 金貨一枚が、一般的な農民が、一生働いても稼げないレベルの額である、と言えば、その重みは理解できるだろう。


「あー、いや、金貨は多過ぎたか?じゃあ……。おい、テメー、今回の勝負に賭けた金、幾らだ?」


「銀貨一枚だな」


「じゃあ、銀貨一枚は貰っといてくれ。詫びはしねーといけねーし、コイツが勝負に賭けた金だから、まぁ、問題ないだろ?」


「それなら」


 うん。金貨は流石に貰えない……というか、持ってたらトラブルの種になりそうだし。しかし、生活費くらいは持っておいていいだろう。うん。


「あぁ、そうだ。ちょっと待っててくれ……ちびすけ、名前、なんて言うんだ?」


 そう聞きながら、お姉さんは、部屋に置いてある机の引き出しから、書類を取り出す。


「TASさん、れす」


「はいはい、"タス"ね……」


「いえ、さんもつけてくらさい」


「んん?いや、タス、じゃな「TASさんれす」……わかった」


 お姉さんは、置いてある羽ペンで、何やら書き込み、


「"タスさん"っと……ほい。持ってけー」


 そう言って、私に手渡した。


「冒険者登録する時、この紙を、受付に渡しな。メリルから貰った、って言えば、通じるから。……ああ、メリルってのは、アタシの名前だ。副機関長(サブマスター)をやってる。あとこの筋肉ダルマがエリックな。一応冒険者ギルドの機関長(ギルドマスター)だ。」


「筋肉ダルマ……。おい、褒めてくれるなと言っているだろう?照れて死ぬ」


「いや、だから、褒めてねぇよ!あと、死んでくれるんだったら是非死ね!はぁ……。んじゃ、良い冒険者生活を」


「よし、それじゃあ俺と一緒に行こうか、嬢ちゃん!」


「何がよし、だ!逃げ出そうとすんな!説教はまだ終わってねぇぞ!」




 ーーー私はこうして、この街の冒険者ギルドのツートップに出会ったのだった。


 私は扉を閉め、一階に向かう。


 冒険者登録もしていないのに、とんでもない人物に出くわしてしまったものだ。


 はぁ。色々と疲れた。


 宿に戻ったら、ぐっすり寝よう。そうしよう。


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